反町隆史、大森南朋、津田健次郎という人気俳優3人がトリプル主演で放送中の『ラムネモンキー』。だが初回4.8%でスタートした視聴率は苦戦し、5話では2.8%にまで下がっている(6話は3.3%)。正直、プライムタイムの連ドラで2%台は危険水域だが、観ているとハッとさせられ、思わず聞き入ってしまう名ゼリフがたくさん盛り込まれており、ネット上には「よく言ってくれた」との声も見られるのだ。
散りばめられた名ゼリフたち
例えば3話は、大森が中学時代、よく体罰を振るわれた暴力教師(石倉三郎)と再会。病院のベッドで死期が近い教師は「やっぱりろくな大人にならなかったな、お前ら」と相変わらず酷い言葉を投げつけてくる。そんな教師に向かって大森は「暴力をやめられなくて教師クビになったんだろうが。本当は後悔してるんだろう? 誰もお前を相手にしない。誰も見舞いにもこない。惨めな人生だったな!」と言い捨てる。
4話は津田がよくいじめられた元不良(東根作寿英)と再会。元不良はすっかり改心し、地域でも評判の介護施設の経営者になっていて、津田にも心からの謝罪を口にする。
だがそんな元不良に対して津田は、「さぞ気持ちいいでしょうね。勝手に更生して、昔の悪事をヤンチャと言い換えて、セピア色の思い出にするのは。許すかどうかはいじめられた人が決める。僕は君を許さない。昔も今もこれからも、ずーっと絶対にだ!」と言い放つのだ。
要は中学時代に言いたくて言えなかった言葉を、30年越しにようやく言えたカタルシスがあり、視聴者も自分の気持ちを代弁してくれたように感じるのだろう。主人公たちは51歳の設定で、脚本の古沢良太は1973年生まれ。筆者(54歳・男性)を含め、この世代なら多かれ少なかれ、同じような体罰やいじめを体験しているはずだ。
そして名ゼリフは、彼らが所属していた映画研究部の顧問・マチルダ(木竜麻生)にも多い。
反町、大森、津田はそれぞれ商社マン、映画監督、理容師をしているが、現在岐路に立たされている。だが30年以上前、マチルダが告げた言葉が、彼らの心の支えになる。
「バカにされても恥かいても、傷ついて泥だらけになっても平気な顔をして前を向いて生きる。そういう人がかっこいいんじゃない?」
「創作をするってことは批判も批評もされるってことだよ。それでも作らずにいられない人が創作者になる。君は批評する側になりたい?される側になりたい?」
「あなたの人生はあなたのものだから。本当にやりたいことをやった方が良い」
50代に刺さる理由
恐らく40代までは流れに乗って進んで来た仕事人生に、病気やら外的要因やらでブレーキがかかるのが50代なのだろう。気づいてみれば、社会人として働ける期間はあと10年ほどしかない。それとともに、本当に自分がやりたかった仕事はこれで良かったんだろうかと、従来は思ってもみなかった疑問が湧いてくる。
かくいう私も、40代まではひたすら「今の仕事がナントカ60歳くらいまでもってくれれば…」と願い、早期退職して別の仕事を始める人の気持ちが全く理解できなかったが、今はよくわかる。ただし実行に移す勇気があるかどうかは、また別問題なのだけれど。
中学時代のいじめも思い当たる節がある。私の場合、中学入学と同時にPとQという2人の同級生に目の敵にされたが、3週間ほどしたある日、2人が作り笑顔で「仲直りしようぜ。お前は本当は明るくて面白いやつなんだってな!」と台本のセリフのようなことを言い、歩み寄ってきたのだ。たぶんクラスの誰かが担任に言いつけてくれたのだと思うが、漫画みたいな展開ではあった。
PとQも仲間外れにされる時期があったし、後にQとはそこそこ仲良くなったが、いじめられたことに関して「絶対に許せない」のは、ドラマの津田と同じだ。
ただ自分は恨みをぶつけたいというよりは、担任に告げ口してくれたのは誰だったのかを聞き出して、お礼を言いたい気持ちの方が強い。果たし方はそれぞれだが、かつてやり残したことを一つずつ果たしていきたいと感じている50代に刺さる、隠れた名作といえよう。
さてドラマでは、3人のマドンナであったマチルダは謎の失踪を遂げ、造成地では人骨が発見される。マチルダは殺されたのか? もし殺されたのなら犯人は誰なのか、という謎が物語を引っ張り、後半戦に進んでいく。
3人が映画と現実を混同して記憶していたり、36年経った大人の視点で見直すと全然違った景色が見えてきたり、キーワードは「思い違い」のようだ。
低視聴率だからと食わず嫌いをせずに、一度視聴してみてはどうだろう?
