オランウータンのぬいぐるみと、いつも一緒のニホンザル・パンチくんが愛らしい。SNSで「#がんばれパンチ」と、全世界から応援を受けている生後6か月の子ザルだ。
母ザルが育児せず人間の手で
昨年7月26日に市川市動植物園で生まれたが、夏の酷暑での初産だったためか、母ザルが育児をせずに、生まれた翌日から人間の手で育てられることに。母親代わりに与えられたのが、オランウータンのぬいぐるみだった。
人工哺育が一段落した、今年の1月19日に仲間のサルたちが暮らすサル山に戻されたが、まだまだ母親離れできない子ザル。ほかのサルたちともすぐに馴染むことがむずかしく、母なるオランウータンのぬいぐるみといつも一緒。
その姿がSNSで拡散されて、いまや日本だけではなく全世界から《かわいい》《見ていると胸が締めつけられる》《パンチががんばっているから私もがんばる》などの投稿が続いている。
そのパンチくんを哺育期間から現在も世話をしているのが、宮腰峻平さん(34)と鹿野紘佑さん(24)。オランウータンのぬいぐるみと同様、パンチくんの“母親代わり”の二人だ。ルパン三世の作者・モンキーパンチからとられた「パンチ」の名づけ親でもある。
パンチくんが二人を見つけるや、すぐに飛びつき抱っこをせがむ姿が「かわいすぎる」と、いつのまにか宮腰さん、鹿野さんもSNSで人気者に。
今回、鹿野さんにパンチくんの現況について詳しく聞いてみた。
「1月にサル山に戻した当初は、仲間に怒られて逃げだしたり、周りに騒ぐサルがいると不安を感じたりして落ち着かない様子でした。何かあるたびにぬいぐるみのもとに逃げ帰ってきて、抱きついていました。私と宮腰さんも2人で、いつでも対応できるように近くで見守っていましたね」
まさに“母親”の心境だが、1月までの隔離時期もつきっきりで面倒をみていたのだろうか。
「一日中一緒というわけではありませんが、朝7時と夕7時の2回にミルクをあげ、休園日も交代で休みをとって育てていたので、たしかに私たちのことも“母親”と勘違いしているのかもしれません(笑)。一番苦労したのはやはり、サル山に戻すとき。完全に戻した1月19日までは、短時間だけサル山で過ごさせたり、タオルをしいて少し暖かくしたりと、少しずつ環境変化への練習をしていきました」
市川市動植物園のサル山には現在、56頭のサルが暮らしている。同じ子ザルからいたずらされたり、ほかの母親に無視されても、たくましく仲良くしようとチャレンジしているように見える。
「けっこう社交的で、メンタル強めの性格だと思います。いまは徐々に仲間との生活にも慣れて、みんなと打ち解けている途中。今いちばん仲のいいのはモエちゃんというメスザル。もう一匹仲のいいサルもいるのですが、その子の名前と個体を特定しているところです」
人気飼育員さんが家で飼っているもの
ニホンザルは0から1歳までが「アカンボウ期」、1〜4歳が「コドモ期」、4〜5歳以降がいわゆる成人といわれており、1歳を超えたら徐々に母親離れを始める。いつかは“ぬいぐるみの母”を必要としない日がやってくる。そして、サル山の仲間の一員になる日を動植物園の職員、SNSで応援している人は待っている。しかし、心配は尽きない。
「どうしても群れに馴染めない、最悪の事態も想定しておく必要はあります。そうなると仲間から危害を受けたりする場合もあるので、パンチだけを隔離するなども考えねばなりません。でも、パンチのたくましさがそれを跳ね返してくれることを願っています。パンチは大丈夫」
最後に、パンチくんに負けないくらい、SNSのコメントで話題になっている鹿野さんの情報を少しだけご紹介。
「いまは入園3年で、4月から4年目。小さい頃から動物園が好きでそのまま飼育員の職業につきました。市川市動植物園が初勤務地になります。趣味は、ほかの動物園、水族館巡り。休みの日は近郊の施設を見て回ったりしています。家ではモルモットを飼っています」
根っからの動物好きの鹿野さん。パンチくんへのメッセージは、「一生懸命頑張っているので、いまのまま育ってほしい」とのことだ。
