銀メダルを獲得した坂本花織選手(撮影/JMPA)

 ミラノ・コルティナオリンピックのフィギュアスケート女子フリー。日本からは坂本花織中井亜美千葉百音が出場し、ショートプログラム首位の中井は銅メダル、千葉は4位入賞を果たした。

「チームジャパンは成り立たない」

 今季限りで現役引退を表明している坂本は、銀メダルを獲得。金メダルのアリサ・リュウ選手とはわずか1.89点差だった。前回の北京五輪で銅メダルを獲得してから4年、成長した姿を世界に示したと言えるだろう。また、この日は坂本と中井が表彰台に上がり、女子シングルで日本の複数選手が表彰台に立つという史上初の快挙も成し遂げた。

 しかし、ジャンプでミスが出て得点を伸ばせず、演技後は大粒の涙をこぼす場面も。インタビューでは、「なんでここで出せなかったかなというのがある。だいぶ悔しいです」と声を詰まらせながらも、「奇跡のような銅メダルから、銀メダルで悔しいと思えるくらい成長したのかなと思えるので、この4年間本当に頑張ってきて良かったなと思いました」と前向きに話した。

 惜しくも金メダルには届かなかったものの、現役最後のオリンピックで有終の美を飾った坂本。彼女が今大会で果たした役割は、メダルの色だけでは語り尽くせない。

 団体戦ではハイテンションでチームを盛り上げ、個人戦の会場にも必ず駆けつけ笑顔で応援。木原龍一からは「やかましい太陽」と評されるほど、坂本の存在はチームに光を注ぎ続けた。

銀メダルを獲得した坂本花織選手(撮影/JMPA)

 そして、そんな人柄を象徴するかのように、彼女には数々の温かい言葉が贈られている。

 例えば、金メダルを獲得したりくりゅうペア。ショートでは“リフト”にミスが出て5位に。このときのことについて三浦璃来は、

「大きな失敗があって二人ともトボトボ歩いて帰ってたんですけど、かおちゃん(坂本)がバスを降りたところで待っててくれて“璃来たちなら絶対大丈夫だよ”って声をかけてくれた」

 と坂本から勇気づけられたことを明かした。

 さらに、「本当に素晴らしい人柄。本当に太陽みたいな存在で。かおちゃんがいるから、チームジャパンがすごく明るかったかなって思ってます」とその人柄を高く評価。

 また、「かおちゃんがいなかったらチームジャパンは成り立たないと思う」と語っていた木原が団体戦の滑走前に「頑張ってかおちゃんにいいバトンを渡すから」と伝えた言葉からも、日頃いかに彼女がチームに尽くしてきたかがうかがえる。

「こんどはあなたが―」コーチから受け継がれる思い

 二人はその後のフリーで挽回し、見事金メダルを獲得。有言実行で個人戦でもバトンを繋いだ。

 また、五輪初出場の後輩二人にとっては、頼れるリーダー的存在でもあった。日本代表として行動をともにしてきた坂本、中井、千葉の3人は、一緒に選手村を散歩するなど「どこか行くときは基本3人」と語るほど固い絆で結ばれていた。

 坂本の滑りを目に焼き付けたという千葉はこう語った。

「ずっと感動しながら見てたというか、こういう忘れられないスケーターになりたいなって思いました」

 先輩の背中が、若い選手の心に大きな希望を灯したようだ。

鍵山優真選手、木原龍一選手、三浦璃来選手と一緒に記念撮影をする中井亜美選手と坂本花織選手(撮影/JMPA)

 ともに表彰台に上った中井も「同じ表彰台に乗るっていうのは最初で最後だと思っているので、今回こうやって一緒に表彰台に乗れたことがすごくうれしいです」と、深いリスペクトの念をにじませた。

 そんな坂本と21年間ともに歩み続けてきた中野園子コーチは、フリー演技終了後、悔し涙を流す坂本にこう言葉をかけた。

「あたなが銀になったから、今度はあなたが五輪の金メダリストを育ててあげなさい」

 キャリアを糧にして、次は指導者としても大舞台を目指す。中野コーチから新たな使命が託された瞬間だった。

 仲間から坂本花織に贈られた名言たちは、彼女がこのオリンピックで残した功績の大きさを物語っている。これからも“やかましい太陽”としてフィギュアスケート界を明るく照らし続けてくれるに違いない。