「今BS朝日で『あなたの知らない京都旅』という番組をやってるんです。寺院や湧き水など、テーマを絞っていろんな角度から。山崎の合戦とか(奈良の)大和郡山とかが出てくると“あ、秀長だ!”って。“俺も大河でやってたな”って思い出す」
元祖秀長役・中村雅俊
1981年放送の『おんな太閤記』は秀吉(西田敏行)の妻・ねね(佐久間良子)が主人公。中村雅俊は秀吉の弟・秀長を演じたが、大河ドラマで秀長が主要人物として描かれたのは初めてだった。
「そうですよね。緒形拳さんがずいぶん昔にやられて(1965年の『太閤記』)俺も見ていたんですけど、秀長の存在って記憶にない……。今回大河の主役になるって聞いて、すごくうれしいですね」
─秀長の魅力って何でしょうか?
「ふたつ要素があって、まずは政治を行う才能。もうひとつは戦上手。両方兼ね備えていて、弟でありながらすごいなと『おんな太閤記』をやった40年以上前から思っていました。秀長というパートナーがいたから、秀吉が天下を取れた。やっぱり秀長がいなきゃ!みたいな。
あと、のちのち秀吉がおかしくなる前に“お目付け役”の命が尽きるっていうところもドラマチックでしょ。やっぱり(大河の)ヒーローになる要素はあるのかなって」
─主演の仲野太賀さんとは2010年のドラマ『特上カバチ!!』で共演しています。雅俊さん演じる行政書士事務所所長の娘のボーイフレンドという役どころで。
「あったあった! 5話だったかな? 俺らの職業って、演技力だけではなく、それ以外の能力も要求されますけど、親父(中野英雄)もよく知ってるんで頑張ってほしいですね。
『豊臣兄弟!』の桶狭間の回も見ましたけど、やっぱり秀長が主役ならではの展開がありましたよね。秀長が信長に“今トンビが空低く飛んでるから雨になりそうです”みたいに言うとか(笑)。これからも楽しみです」
─ここからは『おんな太閤記』の思い出を聞かせてください。脚本の橋田壽賀子さんはホームドラマの名手ですよね。のちに『渡る世間は鬼ばかり』シリーズが大当たりしますが。
「橋田さんは本当に豊臣家の話、家族の話として作っているんですよ。秀長についても愛情ある書き方をしてくれて、本当にやってよかったと思います。時代劇ではありますけど、根っこの部分はあの人がずっとホームドラマで書いてたテーマと変わらない。現場でも家族みんなで仲良くやっていましたよ。
いつも月曜リハーサルで、火水木で本番やって、金土日が休みっていうスケジュールだったんですけど、木曜の夜はみんなで(座長の)佐久間さんのなじみの飲み屋に行くのが通例で……。俺は結構つらかったんですよ。木曜まで撮影したら、金土日は地方でコンサートだったから」
豊臣一族でサイパン旅行に
─雅俊さんは『ふれあい』『俺たちの旅』などがヒットして、ずっと歌手と俳優の二本柱ですよね。
「スケジュールを考えると寝不足になるからと思うんだけど、ついみんなで飲みに行ってしまって。楽しさを優先してた感じです。まだ29歳、体力もあったし元気でした。
あと、本当に当時ならではの話ですが、よくNHKの小道具室に行ってましたね。食べ物とかの用意があって、撮影終わりに余ったイカを小道具さんからいただいて焼いて食べたり、ビール飲んだりしていましたね(笑)」
─放送終了後も交流が?
「次の年にみんなでサイパン旅行に行きましたからね。橋田さんも旦那さんを連れてきて、まさに豊臣家で行きました。そういうとき中心になるのは(泉)ピン子さん。役者って段取りするとか、みんな集めて幹事やるとか得意じゃないじゃないですか。いつも人(マネージャー)にまかせてるから。でも、ピン子さんは仕切れる人なんです。
俺と西田さんと2人で初めてウインドサーフィンやったときは、流されて岸に戻れなくなっちゃって“レスキューーーー!”ってのもありました(笑)」
─西田さんとは同じ東北出身。気が合うんでしょうね。
「そうですね。ええっ!? と驚かれるかもしれませんが、俺らスタジオの中でよく歌を歌ってました。セットが広くて部屋がいっぱいあるんで、歌っててもあんまり迷惑じゃないんですよ。
だいたいザ・スパイダースの『ノー・ノー・ボーイ』とかハモリの歌ばかりを選曲して(笑)。“ノノ、ノノ、ボーイ、行ってもいいかい〜”とかってあるじゃないですか。俺がメロディーを歌って西田さんが3度上をハモってとか。で、出番で呼ばれたら撮影に戻る(笑)」
─年齢は3歳違いで。
「俺はデビューが青春ドラマ(1974年の『われら青春!』)で、その後も青春ドラマが続いて、出演者がだいたい一緒だったんです。年上の役者さんっていうと穂積隆信さん、柳生博さん、名古屋章さんとか。だから、この人ともあの人とも共演したっていう幅の広さがなくて……。
時代の風潮としても一匹狼的な生き方っていうのがあったんで、無意識のうちに人と違う格好して、人と違う生き方しなきゃみたいな。それで下駄履いてたわけじゃないんだけど(笑)。そういう意味では、同年代の役者仲間とは、そんなに仲良くなってないんですよね。
でも、西田さんは特別な人。スーッとね、誰の懐にも入ってくる。何やっても受け入れてくれるし、芝居も上手で一緒にやっててすごく楽しい」
『紅白歌合戦』でもヒット曲共演
─翌1982年の『紅白』には2人とも出演されて。
「西田さんが『もしもピアノが弾けたなら』で、俺も『心の色』って歌で。2012年の紅白では、東日本大震災チャリティーソングの『花は咲く』を一緒に歌いました」
─やっぱり大河ドラマって、お母さまやご家族が喜ばれるものですか?
「そうなんですよ。やっぱり歌手なら紅白、役者なら大河みたいなね。出演すると家族が本当に喜んでくれますね」
歴代「秀長」は個性派ぞろい
『おんな太閤記』の中村雅俊以降、大河ドラマでは秀吉のそばに秀長あり! が定番に。竹中直人主演の『秀吉』では高嶋政伸が秀長を演じ、兄とは父親が違うという説にもとづき、家族間の葛藤も丁寧に描かれた。
『江〜姫たちの戦国〜』の袴田吉彦は、いかにも欲望に忠実な秀吉(岸谷五朗)に比べて実直な印象。『どうする家康』の佐藤隆太も冷静沈着に秀吉(ムロツヨシ)を補佐するが、あご髭をたくわえた野性味も。
いずれも個性あふれる実力派だが、『豊臣兄弟!』の仲野太賀・池松壮亮までは、あまり兄と似ていないのが面白い。
取材・文/川合文哉
