オフィスや学校で、どこからか漂ってくる“ぶっ濃い濃厚ソース”の香り─。誰もが一度は「日清焼そばU.F.O.」の香りを嗅いで「無性に食べたい!」と胃袋をつかまれた経験があるのではないだろうか。
1976年に誕生したカップ焼きそばの代名詞「日清焼そばU.F.O.」が、今年50周年という節目を迎える。発売初年度と翌年度には年間約7000万食を売り上げ、当時の焼きそばジャンルで7割のシェアを占めるなど、驚異的な勢いで市場に革命を起こしたこの商品は、いかにして国民的ブランドとして愛され続けてきたのか。
「エクストリーム」(超越した、行きすぎた)に挑み続けるブランドの歩みについて、日清食品の「U.F.O.」ブランドマネージャー・渡邉真さんにお話を伺った。
焼きそばなのに「未確認飛行物体」
'70年代半ば、カップ焼きそばといえば「弁当型」と呼ばれる四角い容器が主流だった。そんな中、「U.F.O.」は業界初となる「丸い皿型」容器で鮮烈なデビューを飾る。
「当時、さまざまな調査を実施する中で、『焼きそばは皿で食べるもの』という当たり前の結論にたどり着いたそうです。結果として、この新しいスタイルの容器が若者を中心に幅広い層の心を捉えたようです」(渡邉さん、以下同)
さらに特徴的なのが「U.F.O.」という名前だ。一般的には「未確認飛行物体」を指すこの言葉を、なぜ焼きそばにつけたのだろうか。
「ネーミングがなかなか決まらず、会議が行き詰まっていたときに、ある社員が何げなく丸いフタを投げたところ、空中をすべるように飛び、空飛ぶ円盤のように見えたそうです。それを見て『これだ!』とひらめいたといいます」
当時は空前のUFOブーム。テレビや雑誌には日夜目撃情報が寄せられており、誰もが空を見上げていた時代だった。さらに、「(ソースが)うまい(U)、(麺が)太い(F)、(キャベツが)大きい(O)」と、それぞれの頭文字で商品の特徴を表すこともできた。
若者が夢中になっている象徴的なキーワード、目を引く容器の形、そして商品の特徴。そのすべてが結びつき「U.F.O.」が誕生した。
逃れられない香りと味の秘密
「U.F.O.」を語るうえで避けて通れないのが、あの食欲をそそる強烈な香りだ。実はこれこそが、開発当初からの狙いだったという。
「『焼きそばはソースの香りで食べるもの』という考えのもと、鉄板で炒めたときの香ばしさを再現しました。われわれはこれを『ローストフレーバー』と呼んでいます。フタを開けた瞬間に香りがあふれ出し、食欲を刺激する。これこそが『U.F.O.』最大の特徴なのです」
「会社で昼休みに食べるには香りが強すぎる」といった声もあるというが、その唯一無二の香りが、ヤミツキの証しとしてファンに愛され続けている。売上金額は年々拡大し、2024年度には28年ぶりに過去最高を更新。不動の人気を裏づける結果となった。
また、麺へのこだわりもすさまじい。2009年には、それまでのカップ麺の常識だった縮れ麺から「ストレート麺」へと大転換。さらに2012年には、日清食品独自の技術である「3層太ストレート製麺」を採用した。
「麺の外層と内層に異なる配合を用いることで、ソースがしっかりと絡み、コシを感じられるようになりました」
ただ、麺の量がレギュラーサイズの半分の「プチU.F.O.」では、今でも縮れ麺が使われているという。
ヤキソバンに今でも会える!
その躍進を語るうえで、時代を彩ったインパクト抜群のCM群を無視することはできない。発売翌年の'77年には、『UFO』で大ブレイクしたピンク・レディーを起用。その後もサザンオールスターズ、とんねるずなど、常に時代の最先端を走るスターたちが登場し「攻めた」プロモーションを展開し続けた。
中でも30代以上の読者にとって、脳裏に焼きついて離れないのが'90年代の「U.F.O.仮面ヤキソバン」ではないだろうか。
マイケル富岡さん演じるヤキソバンが「ソースビーム」「あげ玉ボンバー」「青のりフラッシュ」といった必殺技を繰り出し、デーブ・スペクターさん演じる宿敵ケトラーを撃退する特撮ストーリー。途中から松雪泰子さん演じるヤキソバニーまで加わり、社会現象にもなった。実は彼らは今でも現役なのだという。
「今でもお客様から『ヤキソバンを復活させてほしい』というお声をいただくことがあります。実は現在も、よみうりランド(東京都稲城市)のアトラクション『スプラッシュU.F.O.』で彼らに会うことができるんです」
40周年を迎えた2016年からは、「エクストリーム」をコンセプトに掲げたプロモーションを展開。
「ブランドの“濃厚”な世界観を全力で、時にはやりすぎといわれるほど尖った表現にも挑戦しています。それが『U.F.O.』らしさだと受け取っていただければと思います」
カスタマイズも!遊び心と挑戦精神
50周年を前にして、「U.F.O.」はさらなる進化を遂げている。そのひとつが、豊富なフレーバー展開だ。梅やわさび、イカスミやカレーなど、何度も再販される人気フレーバーもあれば、一度きりで消えていくものもあるという。
「タイの焼きそば『パッタイ』をイメージした甘辛い『熱帯U.F.O.』を2002年に発売しましたが、当時はエスニックな味わいが受け入れられませんでした。2017年に『今なら売れるだろう』と再販したものの、またもヒットとはならず……黒歴史を繰り返してしまいました」
あれから9年、三度目の正直に期待したいもの。なお、近年の大ヒット作は、2023年に登場した、「U.F.O.」史上最重量となる180gもの麺が入った「爆盛バーレル」だという。
また、ソースの濃厚な味を活(い)かしたアレンジレシピもおすすめだそうだ。
「社内でさまざまなトッピングを試し、その中からおいしかったものを公式サイトで紹介しています」と渡邉さん。卵やソーセージ、もやし、ポテトサラダのほか、豚の角煮というガッツリ系のトッピングも意外に合うという。
最近では食品の枠を超え、人気Vチューバーとのコラボや、有名アパレルブランドとのグッズ展開にも力を入れている。
そして、50周年イヤーとなる本年は、さらにユニークな企画を用意しているという。
「詳細はまだお伝えできませんが、『U.F.O.』ファンの皆さまに50年間の感謝を込めて、かつてない“ぶっ濃い”驚きをお届けしていきます。これまでの50年を超えるような、まさに“エクストリーム”な一年にしたいですね」
50年前、“空飛ぶ円盤”を思わせる丸い皿型容器から始まった物語。進化を止めないその姿勢は、これからも私たちに「エクストリーム」な驚きを届け続けてくれるに違いない。
歴代の「日清焼そばU.F.O.」たち
時代を「飛んだ」!
'76年/発売当時のパッケージ
「日清焼そばU.F.O.」デビュー。発売当時、カップ焼きそばジャンルで後発ではあったが、容器での差別化を目的に採用した業界初の円盤型のカップと、「U.F.O.」というネーミングが若者を中心に広い層を捉えた。
'80年/リニューアル
商品名が「日清焼そばU.F.O.」から「日清ソース焼そばU.F.O.」に変更。
'91年/「日清焼そばU.F.O. ビッグ」が登場
「U.F.O.」のロゴと「大盛り」の文字を立体的に隆起させて強調した前面印刷の上ブタ。角型容器になり、縦置きも可能に。
'99年/ターボ湯切りを採用
素早く確実にお湯を湯切る“ターボ湯切り”を採用。これまでは20〜30秒かかっていた湯切り時間が約半分の10〜15秒に短縮。キャベツの大きさを1.8倍にして、50%増量。
'07年/稲妻が入る
「U.F.O.」のブランドカラーである黒・赤・黄色を基調に、稲妻マークをあしらったパッケージが初めて登場。
'07年/電子レンジ対応「日清焼そばU.F.O. NEXT GENERATION ミックス焼そば」
電子レンジ調理専用の「U.F.O.」が誕生。「U.F.O.」ならではの酸味、うまみ、スパイシーさに、ローストオニオンフレーバーを加えた濃厚ソースが特徴。
'07年/準レギュラー商品「日清焼そばU.F.O. シーフード焼そば」
「U.F.O.」ブランドの準レギュラー商品として「日清焼そばU.F.O. シーフード焼そば」が全国発売。
'17年/黒歴史の「日清焼そば熱帯U.F.O.」
2002年に発売したものの、売れなかった黒歴史商品の復刻版。タイの屋台で食べるパッタイをイメージした甘辛ソース焼きそば。本商品も販売がふるわず、再び黒歴史を作ってしまう。
'19年/「日清焼そばU.F.O. 濃い濃い男梅焼そば」
ノーベル製菓の「男梅」とのコラボレーション商品。シソの香りと濃縮梅果汁の酸味がきいた梅塩ソースと、梅干しフレークと梅顆粒を使用した“梅ふりかけ”で、突き抜ける酸味と梅干しのうまみが際立つ「男梅」ならではの“濃厚な梅干しの味わい”を表現。
'23年/「日清焼そばU.F.O.爆盛バーレル」
「U.F.O.」史上最重量となる麺2玉(180g)で、コクとうまみと香りを閉じ込めた「ぶっ濃い濃厚ソース」を心ゆくまで味わえる。あげ玉のカリッと食感がアクセント。
'24年/「日清焼そばU.F.O.」「日清焼そばU.F.O.大盛」最新パッケージ
濃くてうまい「U.F.O.」ならではのソースを「ぶっ濃い濃厚ソース」と命名。パッケージに「すすれ!うまさ直撃!」のコピーを追加するとともに、麺をすするときのような躍動感のあるシズル写真をあしらった。
答えてくれたのは……渡邉 真さん●日清食品株式会社マーケティング部 第4グループ ブランドマネージャー。今回、「U.F.O.」への愛が伝わる話を聞かせてくれた渡邉さん。おすすめの食べ方は「溶いた生卵をかける」「目玉焼きをのせる」だそう。
取材・文/高松孟晋
