おじさん同士のピュアな恋模様を描いたドラマ『おっさんずラブ』の社会現象から約9年。今やBLは一過性の流行を超え、映像、コミック、小説と、あらゆるジャンルで良質な物語を生み出し、ファンの裾野を広げ続けている。最近も、竹内涼真と町田啓太出演の有料配信映画『10DANCE』が話題に。昨年12月には『ニューズウィーク日本版』で「教養としてのBL入門」として大々的な特集が組まれたほどだ。
価値観と作品の多様化で沼落ちする女性が急増
いまや「隠れて楽しむ趣味」という枠を飛び出し、新たな教養として確固たる市民権を得たといっても過言ではない。では、なぜこれほどまでに普及したのだろうか。
「きっかけの一つは、タイのBLドラマの世界的な大ヒットといわれています」
そう教えてくれたのは、BL専門情報サイト「ちるちる」のOさん。
「さらに、コロナ禍の“おうち時間”で電子書籍が普及したことも大きいです。それまでの紙書籍から電子へと一気に舵(かじ)を切り、手軽に作品を楽しめる環境が整いました」(Oさん、以下同)
ここ数年の社会的価値観の変化も追い風になった。
「多様な愛の形への理解が広まった社会的な流れがBLを受け入れやすい風潮をつくったのでは。さらに昨今の推し活ブームも相まって、関連グッズやイベントも急増。BLのキャラクターのグッズを身につけて持ち歩く、SNSにアップするなど、楽しみ方の幅も格段に広がっています」
そもそもBLの潮流が鮮明になったのは1970年代。
「少女漫画で描かれた“少年愛”に始まり、専門誌『JUNE』の創刊が大きな流れになりました。やがて1991年に創刊された雑誌『イマージュ』が“ボーイズラブ”と銘打ったことからBLという名称が定着しました。近年は刊行数も増え、王道のラブコメから、ミステリーやファンタジー要素のあるものなど設定やストーリーも多様化しています」
それに伴い、読者層も幅広い年代に拡大している。
「作品のレビューから伝わる熱量の高さは、40代や50代が圧倒的ですね」
男性同士の性描写に抵抗感を感じる“食わず嫌い”層も一定数いそうだが……。
「プラトニックな名作も数多くあります。BL作品とひと口に言ってもその内容は多種多様。まずは先入観を捨てて触れてみてほしいです」
そこで、ちるちる編集部に聞いた、初心者向けにオススメのコミックを厳選紹介。ぜひ禁断の扉を開いてみて!
『能美先輩の弁明』
哲学×BLのケミが斬新!知的好奇心も刺激する一冊
「BLアワード2025」総合コミック部門1位に選出された今いちばんホットな昨品。
「話題の哲学科BL!優秀なのに、だらしのない生活を送る能美先輩と、哲学に愛を注ぎ勉学に励む瑛人。正反対の2人ですが、哲学を通して惹かれ合う姿が斬新かつ熱い!学問への純粋な愛情が互いの恋心にリンクする、ロマンチックな一冊」
『能美先輩の弁明』大麦こあら=著、2024年10月発売/光文社
『40までにしたい10のこと』
ドラマ化で話題! アラフォーの恋に共感必至
イケメン部下と枯れた上司のリーマンラブストーリー。
「昨年放送された実写ドラマも話題沸騰!40歳を目前にしたサラリーマン・雀は『40までにしたいことリスト』を後輩の慶司と一緒にこなすうち、彼の魅力に惹かれていきます。サラリーマン同士ながらも、丁寧でピュアな恋模様にキュンが止まりません!」
『40までにしたい10のこと』マミタ=著、2023年2月発売/リブレ
『夜明けの唄』
没入感がすごい! 壮大なファンタジー
「海の怪物と戦う美しき巫子・エルヴァに恋心を抱き、彼を支え続けるアルト。次第にエルヴァの抱える謎が明らかになっていき……。張り巡らされた伏線と残酷な真実に震撼不可避!ファンタジーBLの傑作」
美しい絵とストーリーの面白さで、熱烈な支持を得る。
『夜明けの唄』ユノイチカ=著、2021年8月発売/シュークリーム
『リバース』
謎が謎を呼ぶ、スリリングな展開も魅力!
「美麗な作画と謎の多いストーリーに引き込まれる、『ミステリーBL』の傑作。小説家の円を支えるために奮闘する刑事の幸村ですが、円にはとある秘密があって……。明らかになる謎の先にある2人の深い愛に胸を打たれます」
男女とは別に、「α・β・Ω」という3つの性別が存在する、特殊な設定の世界観にも注目。
『リバース』麻生ミツ晃=著、2020年3月発売/海王社
『太郎 DON'T ESCAPE!』
「ちるちる」評価ランキング上位! 注目の新作
内気な高校生・太郎はSNSで知り合った「アイ」と会う約束をするが、現れたのは着ぐるみの男で……。
「各電子書籍ストアや『ちるちる』内でのレビューランキング急上昇中! レトロでキュートな絵柄と、思わず『えっ?』と声が出る予想外の展開に、とりこになる読者が続出。男子高校生2人の甘くてピュアな恋模様にも心を洗われます」
『太郎 DON'T ESCAPE!』mememe=著、2025年12月発売/大洋図書
『ワンルームエンジェル』
数々の受賞歴や実写ドラマ化を誇る名作
「BL界の鬼才・はらだ先生が描く涙なしには読めない名作。生きる意欲をなくしていたコンビニ店員・幸紀の前に、天使が現れたことから人生が変わっていきます。天使との交流を通して『愛』に気づく幸紀ですが……。涙腺崩壊なので、ぜひバスタオルを用意して結末を見届けてください」
人間と天使の、BLの枠を超えた愛の物語。
『ワンルームエンジェル』はらだ=著、2019年3月発売/祥伝社
『ちょっと待とうよ、春虎くん』
ピュアでいちずな青春男子にキュンが止まらない♪
「シリアスな恋愛模様が胸を打つ学生BL。同性愛者であることをからかわれ、傷つきながらも無理に笑顔を浮かべるスイ先輩、そんな先輩を真っすぐに救う後輩の春虎くんに涙が止まりません。ありのままの自分を肯定してくれるような一冊」
高校生の切ないラブストーリーに、ときめきが蘇る!
『ちょっと待とうよ、春虎くん』あめきり=著、2022年10月発売/新書館
教えてくれたのは……ちるちる編集部(Oさん)●(株)サンディアスが運営する、商業BL漫画や小説、ゲームなどのレビュー・情報サイト、「ちるちる」の営業担当。前年に最も愛された作品をファン投票で選出する「BLアワード」のイベント運営などにも携わる。BLファン歴10年。
取材・文/荒木睦美




