3月8日、大相撲春場所がエディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)で初日を迎える。今場所は大関・安青錦の綱取り挑戦を筆頭に、新三役・熱海富士の躍進、元大関・霧島の復帰への足固め、3場所ぶりの優勝を目指す横綱・大の里、そして復調を目指す尊富士と、見どころが目白押しである。ここでは、注目すべき5人の力士について、その魅力と応援ポイントを掘り下げる─。
ウクライナから来た「綱取り」大関・安青錦
春場所最大の注目は、間違いなく大関・安青錦(21=安治川部屋)の横綱昇進挑戦だ。
ウクライナ出身で2022年のロシア侵攻後まもなくして来日した安青錦は、初土俵から所要14場所という史上最速のスピードで大関にのぼりつめた。昨年11月の九州場所では新関脇で初優勝を果たし、続く今年1月の初場所では新大関として連続優勝を達成。新関脇と新大関での連覇は、69連勝を誇った双葉山以来89年ぶり、年6場所制となってからは史上初の快挙となった。
2月24日の番付発表後、大阪府松原市の安治川部屋宿舎で行われた記者会見で、安青錦は「プレッシャーは当たり前だと思う。注目されることはありがたい。いい状態で場所に臨みたい」と意気込みを語った。また、母国ウクライナへの侵攻から4年の節目に際し、「しっかり結果を出して、いい報告ができたらいい」と述べている。
「安青錦が今場所で横綱に昇進すれば、史上最速記録となります。安青錦は勝っても負けても気持ちに浮き沈みがなく、安定感のある取り組みで安心して見れますね。4日の出稽古でも7連勝で『自分としてはいい稽古ができた』と仕上がりは順調のようです」(相撲ライター)
安青錦の綱取りについて、元大関・琴奨菊の秀ノ山親方も「朝青龍関の時のような勢いを感じる。一発で綱取りに成功する可能性も十分にある」を期待を寄せた。過去4戦全敗している横綱・大の里との対戦も見どころだ。
静岡から96年ぶりの三役誕生・熱海富士
新小結に昇進した熱海富士(23=伊勢ヶ濱部屋)も今場所の注目株だ。
2月24日の番付発表で、熱海富士は静岡県出身力士として天竜関以来、実に96年ぶりとなる三役の誕生を果たした。戦後では初の快挙であり、地元・熱海市は歓喜に包まれた。
1月の初場所では大関・安青錦と並ぶ12勝3敗の好成績を挙げ、優勝決定戦に進出。初優勝こそ逃したものの、横綱・豊昇龍と大の里の両横綱を2日連続で破って初金星を獲得し、3度目となる敢闘賞も手にした。熱海富士は番付発表会見で「師匠からは『これからが大事だ』と伝えられている。新入幕した頃から三役を目標に言ってきた。それが達成できたことがすごいうれしい。優勝、さらに上を目指したい」と決意を示した。
静岡新聞でも大きく取り上げられ、静岡県民のみならず多くの相撲ファンが躍進を期待している。
元大関、復帰への足固めの霧島
関脇・霧島(29=音羽山部屋)は、大関復帰を目指す力士として今場所に臨む。
「霧島の大関陥落となったキッカケは春場所前の稽古で負った首のケガです。出場可能な程度の故障からどんどん歯車が狂っていき、首に不安を抱えながらもトレーニングで進化を求めたことが凶と出たと音羽山親方が分析していました」(前出・相撲ライター)
2日、元大関として安青錦との連合稽古に参加した霧島は、関取最多の17番を取り、「最後の大関との三番稽古は良い稽古だった」と汗をぬぐった。
師匠の音羽山親方(元横綱・鶴竜)は「本人はポイントがはっきり見えていた」と評価。霧島自身は「前の地位は関係ない。お互いに力を合わせて稽古したい」と語り、大関復帰への決意を新たにしている。先場所は関脇で11勝を挙げており、大関昇進の目安とされる「三役で直近3場所合計33勝」に向けた足がかりを作ったと言えるだろう。今場所は復帰へ向けて2ケタ勝利を目指したい。
大の里、横綱として春連覇へ
横綱・大の里(25=二所ノ関部屋)は、昨年3月の春場所で優勝を果たしており、今場所は大阪での連覇を狙う。2月25日には大阪府庁を訪問し、吉村洋文知事を表敬。「優勝を目指したい」と春連覇への意欲を語った。吉村知事からは「今年も優勝を。千秋楽はうかがいますので」と激励を受け、「また稽古のギアを上げて、初日に間に合うよう頑張りたい」と応じた。
大の里は今年の抱負について「横綱として新年を迎えたのが初めて。まだ分からないこともいっぱいあるが、年6場所けがなく皆勤することが大事。優勝も目標にしっかりとやっていきたい」と語っている。
「終盤では、全勝している安青錦との対戦が大の里にとっても山場になるのではないでしょうか。綱取りがかかる安青錦も大の里への対策も少なからずしているでしょうし、優勝争いともなれば白熱した取り組みが見れること間違いなしです」(前出・相撲ライター)
復調なるか、注目の十両力士・尊富士
尊富士(伊勢ヶ濱部屋)は、2024年春場所で新入幕優勝という快挙を成し遂げた力士である。しかし、その後は度重なる怪我に苦しみ、十両に番付を落としている。
1月場所では8勝7敗と勝ち越し、復調の兆しを見せた。かつての勢いを取り戻し、再び幕内の土俵で躍動する姿をファンは待ち望んでいるはずだ。
日本相撲協会の公式YouTubeチャンネルでは、時津風一門連合稽古の様子を収めた動画が公開され、連合稽古に参加した関取9名が春場所の抱負を述べた。大関・安青錦、関脇・霧島、小結・若元春、幕内の藤ノ川・大栄翔・正代・狼雅・翔猿、十両の錦木らが登場し、関取昇進を目指す未来の横綱候補としても注目だ。
安青錦の綱取り、熱海富士の新三役としての奮闘、霧島の大関復帰への道のり、大の里の春場所連覇、そして尊富士の復調…それぞれの力士が描く物語に注目したい─。
