渡辺満里奈さん 撮影/矢島泰輔

 バラエティー番組などで人気を博したアイドル時代を経て、多彩な趣味やセンスのいい暮らしが注目される大人の女性になった渡辺満里奈さん。この3月には、大好きな音楽への思いを込めたアルバムが未発表曲を加えて30年ぶりにリリースされる。40年間の芸能生活を振り返ってもらうと、ビッグネームたちとの知られざるエピソードも飛び出して─。

ソロデビューは「こんなに早くてちょっと怖いな」

 渡辺満里奈がおニャン子クラブ会員番号36番でデビューし、今年で40周年を迎えた。大瀧詠一(大滝詠一の裏方名義)プロデュースによる名盤『Ring-a-Bell』30周年盤も発売。バラエティー、ドラマ、番組MCやエッセイ執筆など幅広い活躍をしてきた40年間を振り返った。

私はもともと人見知りな性格。ずっと黙っていても平気な子でしたが、14歳のとき、姉に『シブがき隊に会えるかもね!?』とミス・セブンティーン・コンテストをすすめられて、応募しました

 地区予選では渡辺典子の『晴れ、ときどき殺人』を歌った。結果は落選だったが、ソニー・ミュージックから育成の声をかけられた。

 そこから『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系)の番組内オーディションを受けて合格。オーディションからは国生さゆり、城之内早苗、河合その子、渡辺美奈代らが輩出した。

私は流れに身を任せるタイプなんですよ。何も心の準備がないまま、'86年4月におニャン子で芸能活動を始めて、その年の夏にはソロデビューが決まり、10月に『深呼吸して』がリリースされました。こんなに早くてちょっと怖いなと思いながらも、ただただなんか楽しいなあ、という感じでした

 そんな、毎日が文化祭のような中、メンバーとの交流はどうだったのか。

年上が多かったしコミュニケーションが得意ではないので、一緒に遊んだりとかはなかったですね。渡辺美奈代さんとは『W渡辺』と呼ばれていましたが、私とはタイプが違い、バリバリのアイドルとして活動されてすごいなーと見ていました。

 国生さんが取材で『いろいろなことを初体験されたときの感想は?』と聞かれたとき、『初体験って言葉は使わないでください!』とバシッと言ったのを見て「すごいな」と驚きました。国生さんなりにおニャン子のことを守ってくれていたんですね。

 富川春美さんや高井麻巳子さんとは仲が良かったです。高井さんとはとんねるずさんの日本武道館公演も一緒に見に行きました。彼女とは、面白いと思うことやその面白がり方が似ているんです

 鈴木蘭々とも仲が良く、デュエットシングル『太陽とハナウタ』を出したほど。

バラエティーに慣れていなくて泣かされたことも

蘭々は少し年下で妹のような存在。最近、25年ぶりくらいに再会したんですよ。元気な不思議ちゃんだったのに大人になったねって話したら、『私も満里奈ちゃんと普通にしゃべれるようになって、大人になったなー』って(笑)

渡辺満里奈さん 撮影/矢島泰輔

 高視聴率番組『とんねるずのみなさんのおかげです』(フジテレビ系)にレギュラー出演。「モジモジくん」と「仮面ノリダー」のコーナーによって、渡辺の人気は全世代に浸透した。

『夕ニャン』のころは、とんねるずのおふたりともスタジオで暴れていたので、あのエネルギーがこちらに向かなければいいなと心配でした。バラエティーに慣れていなくて泣かされたこともありましたが、いつも気にかけてくれて面白いと思えることをいろいろやらせてもらえました。

 田中美佐子さんとドラマで共演させていただいたとき、大女優なのに、ノリダーの言い方(ドスを利かせた低い声)をまねして、『マリナさん!』って、いつもふざけて呼ばれました(笑)」

 ソロデビュー後、さまざまな制約もあり『ザ・ベストテン』(TBS系)に出演したのは、一度だけ。

あの回転扉から登場したとき、これがベストテンか!と興奮しました。そのときに第1位だったのが、産後復帰されたばかりの松田聖子さん。ピンクの衣装で階段を下りてきたのを見て、『うわー!妖精だ!』と感動しました

 さらに『ザ・トップテン』(日本テレビ系)出演時には、40年間で最も忘れ難い驚きのエピソードがあるといい、これを聞いた取材陣も爆笑して盛り上がった。

南野陽子さんと、あのエレベーターで一緒に登場するときに裏でスタンバイしていたら、『私ね、今アルバイトしてるの』と話してくれたんです。スーパーアイドルなのに! 『でもね、勉強になるわよ』とおっしゃっていました(笑)」

 さまざまなことに挑戦してきた渡辺だが、歌は続けたいと思っていた。以前から大好きな大江千里に曲を書いてほしいとスタッフに言い続け、おニャン子解散後の初シングル『ちいさなBreakin' my heart』で、夢が叶った。

 そんな渡辺が音楽に開眼したのが、大滝詠一・佐野元春・杉真理による『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』との出会い。

 このことを公言してきたことが『ちびまる子ちゃん』の主題歌『うれしい予感』を制作中だった大滝さんの耳に入り、ボーカルに抜擢。それを知らされたときは耳を疑った。

アルバイトや海外留学をしてみたかった

「『これはドッキリ!?』と思いました(笑)。生きているといいことあるんだなー、と夢見心地でした。初めてお会いしたときは、『本物だー!』って感情しかない(笑)。

 レコーディングが終わって、アルバムも作りましょうよと軽く言ったらホントに作ってくれることになりました。レコーディングは細かい歌唱指導もなく、今日はこんなことをやりましょう的な日々の記録をとっていくという感じでした。まあ、私の実力だとこのくらいまでかなと読んでいたんじゃないですかね(笑)

渡辺満里奈『Ring-a-Bell 30th Anniversary Deluxe Edition』3月21日発売。ボーナスディスク付き2枚組通常盤CD(税込み3960円)、完全生産限定盤アナログレコード(税込み4950円)の2形態。'26年最新マスタリング音源使用。『高い空遠い街』(大貫妙子作詞・作曲)と『冬の星座(Duet with 大滝詠一)』の未発表音源2曲を収録。

 当時、大滝さんは新しいレーベルを立ち上げたばかりで、ナイアガラトライアングルの集大成的なアーティストプロデュース作品を企画していたという。トータス松本をコーラスに呼び、渡辺のために佐野に作詞・作曲、杉に編曲を依頼。30周年盤には大滝さんとのデュエットも収録される。

「佐野さんとは、和食屋さんでお食事をさせていただいたのですが、もう緊張しっぱなしでひと言もしゃべれず、ずっと佐野さんのお好きな音楽などのお話を聞いていましたね。

 当時はミニアルバムにすることでお蔵入りになった、大好きな大貫妙子さんが書いてくださった未発表曲が今回収録されるのでうれしいです。シングルのカップリングだったご縁で植木等さんともお会いしました。昔の音楽や映画のお話をいっぱい聞かせてくださった、優しくて楽しい方でした

 渡辺は台湾紀行やピラティスなどにもいち早く興味を持ち、発信してきた。今で言うところのインフルエンサーだ。最近は家庭と仕事の両立や、更年期の悩みや不満を、誠実でまっすぐな言葉で綴ったエッセイ本も話題に。

振り返ればアルバイトや海外留学をしてみたかったとかありますが、自分で選んだ道だし、家族やスタッフに恵まれて好きなことばかりやれた楽しい40年でした。

 子どもたちも自分の人生は好きなことを選んで進めばいいと思っています。これからも好きなことをやって、新しい発見ができればいいなと思います」

 落ち着いたトークの中で、コロコロ笑いながら場を和ませる。'70年代洋楽の話題には、キラキラと目を輝かせた。彼女は、人をほっこりと笑顔にさせる稀有な才能の持ち主。これからも自分が楽しみながら、その楽しさをたくさんの人と共有していくのだろう。

取材・文/山本 航