写真右から柚木麻子著『BUTTER』、王谷晶著『ババヤガの夜』

 全世界で150万部超えと大ベストセラーになっている、柚木麻子さんの『BUTTER』。男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子の独占インタビューを狙う週刊誌記者の町田里佳が梶井の言動に翻弄され、里佳の内面も外面も変わっていく、社会派長編小説だ。同作は日本人作家初の、イギリスで文学賞など3冠を受賞。

出版社が積極的に外国で売ろうという流れに

 '25年には英国推理作家協会主催で、世界最高峰のミステリー文学賞であるダガー賞(翻訳部門)を、王谷晶さんの『ババヤガの夜』が日本人で初めて受賞する快挙を成し遂げた。

「'00年代以前はイギリスやアメリカで、翻訳小説を読むということは一般的ではありませんでした。イギリスでいうと'14年に著名文芸誌『GRANTA』が日本文学特集を組んだことも大きなきっかけになりました。

 また、文化庁が'10年から翻訳コンクールを開催し、優れた翻訳者の発掘・育成を支援しています。日本国内で出版市場が縮小していく中で出版社が積極的に外国で売ろうという流れになったことなど複合的な要因が重なって、日本の小説が賞を相次いで受賞しているのだと思います

 と話すのは、文芸評論家の円堂都司昭さん。実際に『ババヤガの夜』を英訳したサム・ベッドさんは文化庁の翻訳コンクールで最優秀賞を受賞している。

 世界での日本文学ブームの火つけ役となったともいわれるのが、'16年に芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの『コンビニ人間』で、イギリスで50万部超え

 川上未映子さんの『黄色い家』は現在20か国以上での翻訳が進んでおり、この3月には英米で翻訳発売予定と近年、特に女性作家の活躍が目立つ。

長らく男性社会だった文芸界に、この十数年で多様化やフェミニズムの意識が広まりました。海外で日本の女性作家の作品が人気を集めているのは、女性という、国境を超えた共通性はありながらも、日本の女性の生きづらさや生活は自国とどう違うのかなどという異文化への興味もあるのでは」(円堂さん、以下同)

 イギリスでは'24年、翻訳小説の売り上げ上位40作のうち、日本の作品が43%を占めた。韓国でも、若者層を中心に日本の小説の人気は根強いそう。

「韓国や台湾で日本の小説が売れることは過去にもありましたし、同じアジア人で生活のスタイルも近いから受け入れられるということは想像できます。驚いたのは、英米といったアジア圏から離れたところで日本の小説が売れたこと。喫茶店や猫などの話で、読むと心が癒される『ヒーリング小説』が世界各国でトレンドになっています

 八木沢里志さんの『森崎書店の日々』、全世界でシリーズ850万部超えの川口俊和さん著『コーヒーが冷めないうちに』など、仕事や人間関係に疲れた現代人の悩みや孤独に寄り添ってくれる癒しの小説も、世界で注目度の高い一大小説ジャンルだそうだ。

この勢いで日本の文芸界が世界中で盛り上がってほしいです。男性作家も、より海外で読まれる作品を出していくことを期待したいですね