高市早苗首相が2月27日の衆院予算委員会で、皇位継承をめぐって“皇室典範改正”の答弁を行った。しかし、その内容に対し、多くの批判が集まっている。
高市氏の皇室典範議論への知識不足が露呈
「高市氏は '21年の有識者会議を引き合いに出し、皇位継承について“男系男子に限ることが適切とされている。私としても尊重している”と述べました。
しかし、そもそも当該の有識者会議は“皇族数の確保”を議題にしたもので、皇位継承の資格については議論の対象外。この混同から、高市氏の皇室典範や、これまでの議論への知識不足が露呈する結果となりました」(全国紙記者)
この発言を受け、木原稔官房長官は記者会見で、旧宮家の養子縁組を念頭に置いた発言だったと主張。この“勘違い”の背景には別の要因があるとも見られている。
「首相の発言には齟齬があるものの、方向性は基本的に有識者会議の報告書と同様です。ただ、より詳細に読み込み、準備をする必要があったといえます。自民党には保守派と呼ばれる陣営によるレクチャーがかなり行われているので、その意見に引っ張られた、もしくは思い込みで発言した可能性があります」(皇室ジャーナリスト)
しかし、'21年の有識者会議自体も疑問が残る側面があったという。
「当時、有識者会議を主催していた政府内には“皇室の知識がない人のほうが、むしろありがたい”といった声すら出ていたといいます。結局、議論を行ったという“アリバイづくり”に利用された側面があったのでしょう」(前出・全国紙記者)
歴史を鑑みれば、男系男子に固執する必要はない
実際に同会議でヒアリングを受けたという、駒澤大学の君塚直隆教授は「愛子さまこそ天皇にふさわしい」と断言する。その理由は3つあるという。
「まず、今回の高市氏の発言は間違っているといっても過言ではありません。そもそも男系男子に限定されたのは、明治22年に制定された旧皇室典範が最初です。歴史をさかのぼれば、飛鳥・奈良時代の女性天皇である元明天皇の娘が元正天皇となっており、女系継承の例といえます。ちなみに女性天皇はこれまでに8人います。
歴史を鑑みれば、男系男子に固執する必要はありません。となると、愛子さまの即位はなんら問題ないのです。これが1つ目の理由です」(君塚教授、以下同)
さらに欧州の王室における継承の現状も無視することはできない。
「2つ目は、欧州の王室では当たり前となっている、王女などの女性の王位継承権です。20世紀に入ると民衆の間に男女同権という思想が広まり、第2次世界大戦後には“王位継承が男子に限定されるのはおかしい”という考え方に発展しました。
その後、'53年にデンマークが憲法を改正し、女性に継承権が付与されるように。さらに'80年のスウェーデンを筆頭にオランダ、ノルウェー、ベルギー、ルクセンブルク、イギリスが次々と“男女問わず第1子が優先される長子継承制”に舵を切ったのです。スペインはいまだに絶対的長子継承制は採用していませんが、女性にも継承権はあります。
現在、欧州の主要国で女性に継承権がない国はひとつもありません。これが世界の趨勢なのです」
そして3つ目の理由は、圧倒的な“民意”だ。
「愛子さまは国民から非常に信頼され、愛されているお人柄です。その場合、選択肢は1つしかありません。天皇陛下や女王という重責を担うには大変な覚悟が必要ですが、海外の王女たちもその覚悟を持ち、王位継承権を受け入れています。愛子さまからその覚悟を感じ取ることができれば、国民も納得するのではないでしょうか」
秋篠宮さまも“当事者の意見を聞いてほしい”と会見で述べた
慎重派だった中道改革連合の力が弱まった現在、皇室典範改正が加速する可能性は高い。君塚教授は、具体的な改正案をこう提言する。
「第一条の“皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する”という文言については“直系の長子が継承する”と改めるべきです。
もちろん直系の中で男子を優先するという条項を入れる選択肢もありますが、今上天皇のお子さまは女性のみ。そうなれば、継承順位の第1位は愛子さまになります。併せて、第十二条の“女性皇族は、婚姻後に皇室を離脱する”という部分も改正の必要があります」
旧宮家の男性を養子に迎える案には、懸念を示す。
「80年前に皇籍を離脱し、顔も名前もまったく存じ上げないような方を“男系男子だから”という理由で戻すことは極めてハイリスクと言わざるを得ません。それよりも、婚姻により皇室を離れられた高円宮家の三女である絢子さんのように公務に精通し、すでにお子さんもいらっしゃる女性皇族の復帰を優先すべきではないでしょうか」
皇室典範の改正は国会に委ねられるが、当事者である皇族の方々はどうお考えなのか。秋篠宮さまは、'09年のお誕生日の会見でこう述べられている。
《皇位継承の制度というもの自体に関しましては、これは陛下も述べられているように、国会の論議に委ねるべきものであるというふうに、私も考えます。しかし、その過程において今後の皇室の在り方ということも当然議論されることになるわけですけれども、その将来的な在り方ということについては、やはり将来その当事者になる皇太子ほかの意見を聞くという過程も私は必要なのではないかと思っております》
さらに'24年のお誕生日の会見では“皇族の考えを理解して、もしくは知っておく必要があるのではないか”という旨を言及された。
「秋篠宮さまが会見で何度も“当事者たちの意見を聞いてほしい”と発信され続けています。この言葉の重みを、政府や宮内庁はどこまで真摯に受け止めているのでしょうか。政治的思惑だけで議論を進めることは、あまりに不誠実だと言えます」(前出・皇室ジャーナリスト)
時代の変化の波の中で“皇室とは何か”ということを改めて問われる節目が来ている。
君塚直隆 駒澤大学法学部教授。イギリス政治外交史などを専門とし、著書は『エリザベス女王 増補版 史上最長・最強のイギリス君主』ほか多数
