令和7年九州場所で初優勝を果たし、大関に昇進した安青錦関(写真/共同通信社)

 11日、エディオンアリーナ大阪で行われた大相撲春場所4日目は、まさに「荒れる春場所」の異名にふさわしい波乱の展開となった。横綱・大の里(25=二所ノ関)が4日目から休場を発表し、もう一人の横綱・豊昇龍(26=立浪)は平幕の藤ノ川(21=伊勢ノ海)にはたき込まれて今場所初黒星。

 さらに、綱取りに挑む大関・安青錦(21=安治川)も美ノ海(32=木瀬)に寄り倒されて2敗目を喫し、横綱・大関陣が総崩れとなる異例の事態で館内がざわついた。

横綱・大の里が3連敗からの休場、先場所から実質4連敗

横綱・大の里

 大の里は、波瑠似の一般人女性と熱愛報道のあった直後で3連敗という不振を受け、4日目から休場に踏み切った。《恋煩い?》《熱愛の影響?》などの声もあがったが…。

「大の里関の休場は昨年九州場所千秋楽以来2度目となり、九州場所で負傷した左肩の状態が完全には回復しておらず、立ち合いの衝撃に耐えられない状況が続いていたそうです。

 師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)は『これ以上情けない相撲を取るわけにはいかない』と休場の理由を明かしていましたが、まだまだ若いので怪我を完治させてから復帰してほしいと願うばかりです」(相撲ライター)

 大の里の休場により「ひとり横綱」となった豊昇龍だが、東前頭2枚目の藤ノ川との一戦で、今場所初黒星。藤ノ川は3日目に大の里から金星を奪っており、これで2日連続の金星獲得という快挙を達成し館内は拍手が鳴りやまなかった。

綱取りの安青錦、序盤で痛恨の2敗も期待が集まる理由

安青錦(安治川部屋)

 今場所で初の「綱取り」に挑んでいた大関・安青錦は、西前頭2枚目の美ノ海に寄り倒されて2勝2敗に。安青錦は立ち合いから突いて出て一度は土俵際まで押し込んだものの、相手に右に回り込まれていなされると流れが一変、もろ差しを許し体を預けられて倒れ込んだ。

 取組後、安青錦は「また切り替えて、明日から頑張りたいです。ありがとうございました」とだけ話し、それ以上の質問には答えず。これまでは負けた後でも淡々と対応していただけに、悔しさを隠せない様子がうかがえた。

「綱取り?それは厳しいでしょうね」と語ったのは昇進に関わる審判部の粂川副部長(元小結琴稲妻)。

 年6場所制となった以降、誕生した横綱は31人だが、昇進直前に5日目までに2敗した力士は朝汐1人ということもあり、早くも正念場というわけだ。

 東スポWEB・秀ノ山親方(元大関・琴奨菊)の評論によると、「慌てて攻め急いでしまっている印象がある。これも試練。綱取りの場所では心技体、あらゆるものが問われる。特に大事な部分は精神面。いったん綱取りへの思いは胸の奥にしまって、勝っても負けてもクールな安青錦本来の姿を取り戻してほしい」と評し、エールを送った。

 ファンからも《一気に駆け上がるのもいいけど、苦しい時期を乗り越えて昇進する方が大横綱になれそう》《勢いだけで上ることは考えないで挑んで欲しい》《あきらめず残りすべて勝つつもりで頑張ってほしい》と期待の声が相次いだ。

 日本の相撲ファンは長年、日本人横綱の誕生を待ち望んできた。しかし、ウクライナ出身で2022年のロシア侵攻後まもなくして来日し、異国の地で奮闘する安青錦に対しては「横綱になってほしい」という声が国籍を超えて多く寄せられている。

「安青錦関の話し方は、師匠の安治川親方にそっくりとも言われて人柄の良さや勤勉な姿が話題になりましたよね。ポカリスエットの新CMでも起用され、ファンの間で『可愛い』『癒される』など好評でしたよね」(前出・相撲ライター)

 綱取りは厳しいと言われる現状だが一部では、失敗がむしろ本人のためになるという見方もある。横綱は「負けてはいけない存在」であり、一度その地位に就き、負けが続けば引退という厳しい立場となる。挫折を知らずに一気に駆け上がるよりも、負ける悔しさやスランプを経験し、精神面でより強くなってから昇進する方が息の長い大横綱になれるという考え方である。

 春場所はまだ序盤。勝敗の行方だけでなく、若き大関の成長の過程そのものに、多くのファンが注目している─。