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「身体にいい」とされる健康法を知ると、すぐに実践したくなってしまうもの。

「気持ちはわかりますが、気をつけてください。中には科学的根拠が乏しく、効果がみられないものも。それどころか、健康を損なうおそれがある情報も少なくありません」

 そう教えてくれるのは、米国マウントサイナイ医科大学の老年医学専門医・山田悠史先生。あふれる情報の中から、「正しい選択」をするにはどうすればいい?

科学的根拠のあるもののみに注目すべし

「医師からすると、特にSNSに流れている健康情報は、8~9割は科学的根拠もなく信頼性に欠けます。そもそもSNSで健康情報を得ようとしないほうがいいですし、見たとしても、鵜呑みにしないのが最善です」(山田先生、以下同)

 気になる場合は、山田先生が情報を見分けるチェックリスト“お・か・し・い”(3ページ目参照)を紹介してくれたので参考に。“有名人がすすめてたから”“推しが実践してる”という理由だけで選ばないこと。あわせて、みんなが勘違いしやすい健康情報について、科学的根拠のある正解は何か教えてもらった。

生活習慣編

 日常の「当たり前」を最新医学でアップデート

Q1 長時間のデスクワーク生活は

A、がんの危険性が高まる

B、がんとの関連はない

正解は「A」

 長時間にわたって座り続けることは、体内の炎症を引き起こす引き金になる。

「ずっと立ち仕事や座り仕事をしていると、うっ滞性皮膚炎になる人がいます。同じようなことが体内で起きていると考えてください」

 座りっぱなしでいると体内に炎症が起きて、身体は修復しようとする。

「それを繰り返すうちに細胞のコピーミスが起き、それががん化のリスクを高めると考えられています」

 いくつかの大規模研究では、特に大腸がんや乳がんのリスクが高まると指摘されている。日本人を対象とした研究では、座り仕事が長いと、膵臓がんや肺がんのリスクが高まることが示された。がんだけでなく、心臓病や脳卒中のリスクを高めるという指摘も。

「座りすぎは肥満を招くことにも注意が必要です。肥満はそれ自体が10種以上のがんのリスク因子となります」

 座り仕事が多い人は、あいまにストレッチをするのがおすすめ。意識的に身体を動かすことを心がけよう。

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Q2 ぐっすり眠るためにより避けるべきは

A、アルコール

B、カフェイン

正解は「A」

「寝つきをよくしたい」と寝酒を習慣にしている人がいるが、実は逆効果。

「アルコールは少量でも眠りを浅くして、睡眠を細切れにしてしまいます。頻尿の原因にもなり、それも眠りを妨げます。寝酒はやめましょう」

 一方、カフェインは入眠を遅らせるだけで、眠りそのものの質に悪影響はないことがわかっている。そのため、寝る3時間前からだけ避ければOK。睡眠の質そのものを悪化させる点で、アルコールの悪影響のほうが深刻なのだ。

Q3 コーヒーを飲むと病気のリスクが

A、減る傾向

B、高まる

正解は「A」

「コーヒーは、カフェイン中毒になるほどの一気飲みをしない限り、大きなリスクはありません。むしろ健康への利点が多い飲み物なのです」

 1日3~5杯飲むと、さまざまな疾患のリスクを低下させ、死亡率を下げる……、そんな作用が多くの研究で報告されている。具体的には、心臓病や糖尿病、パーキンソン病、子宮体がんや皮膚がんなどのリスクが下がる可能性があるとされている。

「ドリップかインスタントか、など淹れ方による違いについての研究も進んでいます」

サウナ、グルテンフリーの常識は

Q4 身体を芯から温めるのに有効なのは

A、入浴

B、サウナ

正解は「A」

「効率よく身体を芯から温めたいなら、サウナより入浴のほうがおすすめです。入浴はサウナより2倍くらい早く体温を上げる効果があります」

 これは、身体に熱を伝える効果が空気よりお湯のほうが圧倒的に高いから。また、入浴は水圧により血行が良くなる効果もある。

「サウナ後の『整う』という感覚や、温活そのものについては、そもそも医学的な効果は解明されていません。ほどほどに楽しんでくださいね」

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Q5 グルテンフリー食は

A、健康効果がある

B、あまり意味がない

正解は「B」

「身体に良さそう」と流行中のグルテンフリー食。スーパーの棚や飲食店のメニューで見かけることも増えてきた。だが、健康な人への効果はさほど立証されていない。

「グルテンに身体が病的な反応をしてしまうセリアック病患者であれば、治療のためのグルテンフリー食は必要です。ただし、この病気は日本人には極めて少ないんです」

 若く、健康な人がグルテンフリー食を追求しすぎると、穀物から摂取できるはずの鉄分やビタミンB群が不足しがちになる可能性が。

Q6 脂肪を燃焼させるための運動は

A、20分以上必要

B、短い時間でも効果あり

正解は「B」

 ダイエット界隈では「20分以上走らないと脂肪が燃焼しない」というのが定説であったが、実はBが正解。

「確かに、脂肪が本格的に燃焼しはじめるのは運動開始から20分たってからです。ただ、短時間でも糖質と一緒に脂肪も燃焼しているんです」

 たとえ数分の運動でも、積み重ねれば脂肪燃焼や体質改善の効果が確実にあることを専門機関の研究は示している。「20分も続けて運動できない」なんて諦めないこと。「ゼロより1でも効果があればOK!」の精神で、ちょこちょこ運動に取り組んで。

Q7 睡眠のゴールデンタイム(22時~2時)の睡眠は

A、美容にいい

B、医学的根拠はない

正解は「B」

「22時から2時の間に寝ていると成長ホルモンが十分に分泌され、美肌になる」という説に、実は明確な根拠はないとのこと。これは驚き!

「成長ホルモンの分泌で大切なのは、布団に入る時間帯ではなく、寝入ったあと数時間の眠りの深さです。自分の体内時計に合った時間帯で、深く眠ることができていればそれでいいのです」

 ただし、就寝時間が習慣的に0時を超えていると、心臓病などのリスクが高まる傾向にあることが複数の研究で示されている。夜更かしはしすぎないように気をつけつつ、自分に合う時間で規則正しい睡眠ライフを心がけよう。

山田悠史先生 米国マウントサイナイ医科大学米国老年医学・内科専門医。医学博士。2015年に渡米し、高齢者医療を専門に診療や研究に従事している。著書に『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』(サンクチュアリ出版)などがある。
教えてくれたのは…山田悠史先生 米国マウントサイナイ医科大学米国老年医学・内科専門医。医学博士。2015年に渡米し、高齢者医療を専門に診療や研究に従事している。著書に『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』(サンクチュアリ出版)などがある。
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取材・文/鷺島鈴香