染色体の末梢部分で“寿命の物差し”である「テロメア」。細胞分裂で短くなるこの部分を、伸ばすことに成功した「ストレスフリー療法」とは? 血流をよくして若返りホルモンを増加させることで見えてきた若返り&長寿の可能性─。
ストレスこそ病気の根源
不老不死。それは太古の昔から先人たちが追い求めてきた人類の夢。古代中国でも秦の時代、始皇帝に命じられた徐福が不老不死の薬を求めて日本にやって来たといわれている。
そんな人類の見果てぬ夢を探求し、今もなお研究を積み重ねているのが「一般財団法人 了徳寺医学研究財団」の理事長、了徳寺健二さん(78)である。
「今から42年前、アメリカの生物学者エリザベス・ブラックバーンさんが、川や海辺に生息する繊毛虫テトラヒメナという生き物に注目しました。この生物が細胞分裂の寿命を決めている遺伝子の末梢部分『テロメア』を、テロメラーゼという酵素によって修復し、永遠の命を得ていることを発見。ノーベル賞を受賞しています。この世紀の大発見に世界中が沸き立ちました」
“細胞の寿命の物差し”と呼ばれる「テロメア」は、染色体の末端に存在するキャップのような構造で、靴ひもの先端にあるプラスチックのチップにもたとえられる。
だが細胞が分裂するたびに、テロメアは少しずつ短くなる。つまりテロメアは、年齢とともに確実に短くなってしまうもの。
しかも短くなるに従って生命体の老化は進み、病気にもかかりやすくなることがこれまでの研究でわかっている。
逆説的にいうならテロメアの長さを保つことこそ、永遠の命を手に入れる“最善の策”というわけだ。ところが世界中の研究者が、不老不死を夢見て研究に打ち込んではみたもののこれまで誰一人として成功した者はいなかった。
そんな中、まったく違ったアプローチの仕方で「テロメアの長さを保つ」どころか「伸ばす」ことに成功。注目を集めたのが了徳寺さんが考案した「ストレスフリー療法」だという。
この療法をひと言でいうなら、了徳寺さんたちが発見した未知の身体の体表点と東洋医学でいう“ツボ”に48度未満のレーザー光(遠赤外線)による温熱刺激を与える。そうすることで、身体的なさまざまな問題を解決することができるというもの。
「ストレスこそ病気の根源である」
そうした信念から了徳寺さんは、この治療法を「ストレスフリー療法」と名づけた。
ではいったい、了徳寺さんたちは「ストレスフリー療法」をいかにして開発したのか。その開発秘話について触れてみたい。
老眼や白内障が治るといった事例も
「20年ほど前、アメリカの医師B・O・バーンズ博士の著作で、甲状腺が多くの病気にいかに関わっていたのか、数千人の事例をもとに報告されていました。甲状腺は喉仏の下の部分の皮膚直下に位置する、蝶のような形をしたもの。わずか1オンス(約28グラム)の非常に小さな器官から分泌されるホルモンはなんと、年間スプーン大さじ1杯分とごくわずか。
しかし、血糖やコレステロール、成長ホルモンといったさまざまなものに深く関わっています。もしこれが欠如するようなことがあったら、多くの疾病が待ち構えているんです。そこで私が当時、理事長兼学長を務めていた了徳寺大学で研究を重ね、甲状腺の体表部に48度未満の温熱刺激を与えることで、さまざまな効果が得られることを知りました」
しかし甲状腺の体表部に長期的に直接、温熱刺激を与えるのはよくないため、甲状腺ホルモンの分泌が促進される体表点を模索。その結果、7か所に及ぶ「未知の体表点」を見つけることができたという。
「未知の体表点は、身体の中心部から最も遠いところにあるはずだ。そうした仮説を立てて、私たちは足の裏を徹底的に調べていきました。そこで見つけたのが、長生きするためのスイッチともいえる未知の体表点でした」
足の裏にある7か所に及ぶ「未知の体表点」は、それぞれの症状や患者の悩みによって使い分けるが、いずれを選んでもストレスホルモンである副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)やコルチゾールを、有意に低下させることができる。
しかもこれら「未知の体表点」は左右の足の同じ位置にあるため、両足の同じポイントに同時に刺激を与えることができた。
さらに東洋医学でいうところのツボのうち、腹部腸管の司令塔の役割を果たす「中かん」。そして慢性疾患、特に消化器疾患を好転させるといわれる左足の「三里」のツボを同時に刺激することで「ハーモニー効果」と呼ばれる相乗効果が生まれた。
では「ストレスフリー療法」を行うことで、どんな効果が得られるのか?
「まず脳はもちろんのこと、末梢に至るまで血流が2倍から10倍に増えることがわかりました。この効果によって、私たちの身体を構成する37兆個以上の細胞に栄養と酸素をくまなく送り届け、外敵から身を守る免疫細胞を養い、身体のすみずみまで送り届けることができます。
しかも血流が増えたことで、ストレスなどが原因で低体温症に悩んでいた人たちの問題も解決することができました。驚くべきことに血流を上げ、体温をわずか1度上げるだけで免疫力は5~6倍に跳ね上がることも明らかになりました。そして頭部への血流増進から目の水晶体の代謝も促進。老眼や白内障が治るといった事例も報告されています」
さらに研究を進めるうちに、20歳をピークに分泌が減少する「若返りホルモン」のひとつ、成長ホルモンの分泌も上昇することがわかってきた。
細胞分裂可能な寿命が延びている証拠
「成長ホルモンが肝臓に働きかけて、古くなった細胞をまったく新しい2つの細胞にする細胞分裂を誘導。その結果、老化に伴って発症する全疾病の予防・改善にも役に立つとみられます」
そしてもうひとつ、更年期に入ると急激に減少する女性ホルモン・エストロゲンの活動が、活発になることも注目されている。
「地球上の生物のほとんどは、オスよりメスのほうが長命。その理由のひとつがエストロゲンにあると考えられています。エストロゲンには骨を強くするほか、コレステロールを減らし、血管壁を温め動脈硬化を抑制するといった効果もあります」
こうしたさまざまな効果が得られる「ストレスフリー療法」を15年以上、毎日続けてきた了徳寺さんは、血液検査は常に良好。虫歯はひとつもない。20年ぶりに会った友人から、
「まったく変わらないね」
と言われる理由は、こういった秘密があったのだ。
「ストレスフリー療法」は身体の未知の体表点と、東洋医学のツボに温熱刺激を与えて自律神経のバランスを整え、血中のストレスホルモンを下げ、血流の増幅を実現した。
さらに成長ホルモンやエストロゲンなどの分泌を促すだけでなく、慢性的な炎症や酸化ストレスを軽減。細胞の修復力が高まり、DNAの機能性の若返りやテロメアの維持、延長が期待できるといわれている。こうした効果は今、アスリートの世界でも注目されている。
「東京オリンピックの柔道で金メダルを獲得し、現在、新日本プロレスで活躍するウルフアロン選手や、パリオリンピックの柔道で金メダルに輝いた角田夏実さんも取り入れています。『ストレスフリー療法』を導入して血流がアップすることで筋肉も柔らかくなり、関節の可動域も広がる。ケガの防止にもなるので、ルーティンに取り入れているアスリートも増える傾向にあります」
さらに研究を重ねた結果、「テロメア効果」について新たな事実も明らかになった。
「順天堂大学医学部の堀江重郎教授との共同研究の結果、『ストレスフリー療法』を約1か月行うと、テロメアが平均で2~3歳分伸びていることも証明されました。これは細胞分裂可能な寿命が延びている証拠です」
ドバイワールドカップを制した競走馬で、ウシュバテソーロなどの馬主としても知られる了徳寺さんにはもうひとつ、大きな夢がある。
「競走馬はとてもストレスフル。レース前になると入れ込み、胃腸障害のある馬も多い。ところが『ストレスフリー療法』を試すとそれがなくなり、食欲も旺盛。毛ヅヤも良くなりました。さらに研究を重ね、馬が健康で長く走れるようお役に立てれば」
78歳とは思えない若々しい了徳寺健二さん。その秘訣を書いた著書を上梓し、先を見つめるその目は、少年のように輝いていた。
取材・文/島崎哲平

