WBC2026に出場した伊藤大海投手

「優勝以外は失敗」

 WBC連覇が期待されながらもベネズエラに負けて、決勝トーナメント初戦で敗退した野球日本代表チーム「侍ジャパン」。大谷翔平選手(31、ロサンゼルス・ドジャース)にして「失敗」といわしめた今大会だが、敗因は何だったのかーー。

 WBC史上におけるワースト記録「ベスト8」で終わった侍ジャパン。「結果が全て」と代表監督の退任意向を示した井端弘和監督(50)だが、責任ある監督以上に“戦犯”として槍玉に挙げられたのが伊藤大海投手(28、北海道日本ハムファイターズ)。

 3月15日(日本時間)のベネズエラ戦、5対4と日本の1点リードで迎えた6回表にリリーフでマウンドに送られた伊藤だったが、ノーアウト一塁三塁のピンチを招くと7番のウィルヤー・アブレイユ選手(26、ボストン・レッドソックス)に逆転3ランを叩き込まれる。日本はその後も、種市篤暉投手(27、千葉ロッテマリーンズ)が1点を許して5対8で逆転負けを喫した。

 1次ラウンドの韓国戦でも“第2先発”として登板し、3回を投げて2失点と本調子には見えなかった伊藤。その悪い流れを断ち切れないまま決勝トーナメントに臨み、“負け投手”になってしまったことで、SNSやネット上では批判の度を超える誹謗中傷も。

沢村賞投手を悩ませた新ルール

 すると伊藤は16日、自身のインスタグラムを更新して《ファンの皆さんの期待に応えられず申し訳ありませんでした》と謝罪こそしつつも、《その言葉に叱咤があるのかどうかは、選手自身が一番分かります》と、自身に寄せられているネット上の声に対して自重を呼びかけたのだった。

 2023年大会では3試合に登板して無失点と、侍ジャパンの3度目の世界一に大いに貢献した伊藤。その経験とマウンド度胸を買われて井端ジャパンでもリリーフを任されたわけだが、悩まされたのが新ルール「ピッチクロック」だった。

伊藤大海選手に寄せられた誹謗中傷と励ましのコメント(本人インスタグラムより)

「ベネズエラ戦でも被弾する直前、先頭打者と対峙した際にピッチクロック違反を取られたことでリズムが狂ったのでしょう。伊藤投手といえば、リリース時に粉が飛び交うほどにロジンバックをつける“追いロジン”が代名詞ですが、その自身のルーティンも“封印”せざるを得ませんでした。

 大会直前合宿ではピッチクロックに“工夫できそう”と話していましたが、やはり適応には時間が足りなかったのか、本番では対応に苦心している様子でしたね」

 普段はパ・リーグ球団を取材するスポーツライターが擁護するように、海外の“プロ”の目にも“失点はやむなし”と映っているようだ。WBC各国の総括記事を配信した、アメリカのスポーツ専門ウェブメディア『ジ・アスレチック』も、

【伊藤大海投手は非常に優れた投手だ。しかし、サムライジャパン監督による起用法によって、その実力を発揮することができなかった】

 WBCで4イニングを投げて5失点した伊藤だが、2025年の沢村賞投手を得意とする先発ではなく、リリーフ専門で起用したことを疑問視している。そして敗因の一つとして【ブルペン編成と管理の不備】を挙げている。

メジャーリーガーへの過度な依存

 本大会前にリリーフを専門とする松井裕樹投手(30、サンディエゴ・パドレス)、平良海馬投手(26、埼玉西ライオンズ、今シーズンは先発に再転向)、石井大智投手(28、阪神タイガース)が怪我やコンディション不調で相次いで離脱。

 そのため伊藤、種市、隅田知一郎投手(26、西武)ら、普段は先発ローテーションを担う投手たちが、起用も調整も異なるリリーフに回されることに。この“手薄”になったブルペン陣の編成、そして正しい起用ができなかった采配を指摘する。

 そしてジ・アスレチックが分析した、もう一つの敗因が【メジャーリーガーへの過度な依存】。大谷をはじめ、過去最多となる8人の日本人メジャーリーガーをロースター(登録選手)に加えた井端監督ら首脳陣、そして招集に関わったであろうNPBや関係各所。大谷ら現役メジャーリーガーは興行面でも欠かせない戦力でもあった。

鈴木誠也が公開した大谷翔平の変顔(鈴木のインスタグラムより)

【井端監督はその考え(メジャーリーガーを優先して出場させる)を打線に反映させたが、一部選手のポジションにおける制約から、守備を犠牲にしてでもスター選手を優先する傾向があった】

 なんでもMLB各チームから派遣されたメジャーリーガーには、代表チームでのプレーを許す条件としての“ポジションの制約”もあり、結果として日本の守備が手薄になった指摘する。逆にベネズエラを世界一に導いたオマール・ロペス監督(49)は、投手力が劣るデータを認識していて、当初より守備力重視のチームづくりをしていたことを紹介。

 正反対の攻撃力重視のロースターで臨んだ日本は、【守備の弱さを補うリードを余儀なくされ、投手も自身の投球内容を変えざるを得なかった。結果は惨敗だった。】と、敗因を総括するのだった。

常日頃から使ってなさそうだな

 大谷もまた同様の苦言を“日本”に呈している。試合後、対戦相手のデータを集めた裏方スタッフには少ない資料をうまくまとめてはくれていた」と感謝しつつも、

「必ずしもすごく遅れていたかと言ったらそうではないですけど、現場として(NPBの)各球団が、常日頃から使ってはなさそうだなという雰囲気があった」

 海外では当たり前とする対戦相手のデータ活用を、井端監督ら首脳陣、そして日本球界が使いこなせていいないとする“時代遅れ”感を指摘したのだ。

 ちなみにジ・アスレチックでは2029年に開催が予想される次回WBCでは、伊藤、そしてメジャー勢とポジションが被ったことでフル出場とはいかなかった佐藤輝明選手(26、阪神タイガース)がメジャーリーガーとして出場する可能性も示唆している。

 伊藤には侍ジャパンのエースとして、そして佐藤も4番として、頼れる監督のもとでリベンジを果たしてほしい。