NHK朝ドラ『風、薫る』でダブル主演を務める見上愛(右)と上坂樹里(左)

 いよいよ3月30日から放送が始まったNHK連続テレビ小説『風、薫る』。幕末から明治へと激動する時代を背景に、日本初の本格的な「看護婦」という専門職の確立に人生を捧げた女性たちの物語だ。

 物語の前半、ヒロインたちが共同生活を送りながら切磋琢磨する舞台となるのが「梅岡看護婦養成所」。実はこの学校、現代の受験界で知らない者はいない、“女子御三家”の一角を占めるあの超名門校の前身なのだという。

東京でも屈指の難関校

 ドラマは、見上愛が演じる一ノ瀬りんと、上坂樹里が演じる大家直美のWヒロインが、周囲の偏見を跳ね除け、プロの看護婦を目指す姿を描く。

「今回のドラマは、それまで『下働き』と見なされていた看病や看護を、医学的知識に基づく高度な専門職へと引き上げた女性たちの群像劇。ヒロインの見上さんと上坂さんのほかに、看護婦養成所の同級生として生田絵梨花さんや菊池亜希子さん、中井友望さんといった旬の女優さんたちが出演します」(テレビ誌ライター)

 さらに、彼女たちを導く“謎の貴婦人”として、多部未華子も16年ぶりに朝ドラに出演予定。かなり華やかな物語になりそうだ。

「じつはこの看護婦養成所、実際の名前は桜井女学校付属看護婦養成所というのですが、現在の超名門女子校である『女子学院』の前身の学校のひとつなのです」

 女子学院といえば、桜蔭、雙葉と並び“女子御三家”と称される、東京でも屈指の難関校。全国に「〇〇女子学院」という校名は数多く存在するが、単体で「女子学院」という固有名詞を校名としているのはここだけだ。

「都内の中高一貫校として、東大をはじめとする難関大学に毎年数多くの合格者を出す、まさに名門中の名門。昔から人気が高く、いまも女子学院を第一志望にする受験生は多いです。ただ、ちょっと変わった学校でして、教育方針は他の進学校と一線を画しています」(学習塾経営者)

 受験界のある意味“頂点”に君臨しながら、女子学院が特徴的だと言われるのは、その「校則」にあるという。

多士済々の卒業生たち

 多くの名門校が厳格な校則や制服を維持するなか、女子学院には制服が存在しない。1972年から私服登校が認められており、生徒たちの装いは驚くほど個性的だという。

「自由を重んじる校風は徹底されており、細かい校則は一切なく、『校章をつける』『上履きをはく』『学校にきたら外に出ない』『校外活動は届け出る』という、たった4つの校則しかありません。これ以外のルールは、基本的に生徒の自主性に任されています」(前出・学習塾経営者)

 驚くべきことに、ピアスや髪の毛の色についても校則による禁止はなく、自分をどう表現するかは本人に委ねられている。この「自己責任」と「自由」のバランスこそが、JG生(女子学院の生徒は母校のことを『JG』と呼ぶ)の知性を育む土壌となっているのだ。

東京都千代田区にある女子学院中・高の校舎

 そんな自由な彼女たちが、JG生としてのアイデンティティを形成した場として決まって挙げるのが、中2と高3で行われる伝統行事「修養会」だ。

「泊まりがけで行われるこの会では、静寂の中で自分自身や社会のあり方について生徒同士で深く議論します。“自分はどう生きるべきか”という問いに向き合うこの体験が、卒業後も揺らぐことのない芯を作っているのだと思います」

 JG卒業生には作家の幸田文さんや女優の吉行和子さん、NHKの和久田麻由子アナウンサーをはじめ、漫画家の辛酸なめ子さん、料理研究家の有元葉子さん、『全裸監督』で森田望智さんが演じて話題になったセクシー女優の黒木香さんなど、自立したプロとして活躍する女性が非常に多い。まさに多士済々の顔ぶれだ。

 ちなみに、『風、薫る』のヒロインのモデルである大関和(ちか)さんと鈴木雅(まさ)さんは、女子学院の前身である桜井女学校付属看護婦養成所での学びを経て東大病院に勤務、大関さんは自らも看護婦養成所の講師になり著書も出版して後進の育成に励み、鈴木さんは日本で初めて派出看護婦会を創設し、貧困の人に無料で看護婦を派遣して看護婦の存在を広く認知させることに貢献。2人とも“プロ看護師”の先駆者として日本の近代看護史に名を刻んだ。

 150年以上の歴史を持つ名門・女子学院、きっと多くの“JG卒業生”が30日からスタートした朝ドラ『風、薫る』を見るに違いない。