仲野太賀主演のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』。豊臣秀吉の弟・秀長の視点から「豊臣の絆」を描く本作だが、3月29日に放送された第12回「小谷城の再会」は“絶望のカウントダウン”が始まった回として、SNS上で悲鳴にも似た反響を呼んでいる。 ※以下、第12回のネタバレを含みます。
安藤サクラの“語り”が話題に
この日の放送は、一見すると和気あいあいとした“家族の再会”がテーマだった。織田信長(小栗旬)に伴われ、小谷城を訪れた小一郎(仲野太賀)と藤吉郎(池松壮亮)。そこには、浅井長政に嫁いだ妹・市(宮崎あおい)が、生まれたばかりの長女・茶々を抱いて幸せそうに暮らす姿があった。
「劇中では、浅井家の世継ぎである万福丸が登場したり、藤吉郎の姉・ともの息子たち、万丸や小吉が披露されたりと、豊臣・浅井両家の“次世代たち”が勢揃いしました。しかし、歴史を知る視聴者にとっては、これほど残酷なシーンはありません。画面に映る子どもたちが、のちにどのような最期を遂げるかを突きつけられる構成になっていたからです」(テレビ誌ライター、以下同)
まず視聴者の度肝を抜いたのが、赤子の茶々を抱いた藤吉郎のシーンだ。信長が「わしが触れるとけがれてしまう」と抱くのを拒み、代わりに武威の象徴である「守り刀」を授けたのに対し、藤吉郎は顔を輝かせて茶々を抱き上げ、「なんと軽いのじゃ〜」と満面の笑みを浮かべた。
その直後、語りの安藤サクラによる、あまりにも冷徹なナレーションが響き渡る。
「これが、のちの世に豊臣家をつくった者と、終わらせた者の出会いでございました」
「この一言に、SNSでは《やめてくれ!》《ナレーションが容赦なさすぎる》と悲鳴が上がりました。秀吉が愛おしそうに抱いたこの赤ん坊こそが、のちに秀吉の側室・淀殿となり、最終的に徳川家康に敗れて豊臣家を滅亡へと導く張本人。『出会い=滅びの始まり』というあまりに残酷な対比が描かれたのです」
その茶々の登場とリンクするように描かれたのが、藤吉郎の正妻である寧々(浜辺美波)のあまりに健気な決意だ。信長の命令により京都奉行を仰せつかった藤吉郎が京都で浮気したことを知った寧々は藤吉郎にこう告げる。
「もし本当に良きおなごが現れたら、その時は致し方ありません。私には、子はできぬやもしれませんから……」
歴史に詳しくない人のために補足すると、この寧々の懸念は現実のものとなる。
「寧々には実子が授からず、のちに秀吉は茶々を側室に迎え、待望の跡継ぎ・秀頼が誕生します。しかしこれがきっかけで、豊臣家は『寧々を支持する古参の武将派』と『茶々を支持する官僚派』に真っ二つに割れ、のちの天下分け目の決戦『関ヶ原の戦い』へと繋がっていくのです。寧々の深い愛情が、豊臣家崩壊の火種になるという皮肉が早くも描かれたことで史実を知る視聴者が《エグすぎる…》などと投稿しました」
凄惨な未来を予感させる演出
さらに、この日登場した他の子どもたちにも、血塗られた未来が待っている。
市(宮崎あおい)が「殿に似て優しい子」と紹介した浅井家の嫡男・万福丸。彼は数年後、小谷城が陥落した際に信長の命を受けた秀吉によって捕らえられ、わずか10歳前後で「串刺しの刑」という、戦国時代でも稀に見る残虐な方法で処刑される。
また、秀吉が「わしの甥っ子じゃ!」と溺愛した万丸(のちの豊臣秀次)も同様だ。
「秀次はのちに秀吉の養子として関白の座を継ぎますが、秀吉に実子・秀頼が生まれると邪魔者扱いされ、謀反の疑いをかけられて切腹。それだけでなく、彼の妻や幼い子どもたちなど一族数十人が三条河原で公開処刑されるという、豊臣史上最大の悲劇の当事者となります」
幸せそうな赤子や少年たちが、数年後には「抱き上げたその手」によって命を奪われ、あるいは滅ぼされていく。この凄惨な未来を予感させる演出に、ネット上では《脚本家はサディストか!》《幸せなシーンなのにホラー映画より怖い》といった声が溢れた。
「脚本を手掛けるのは、大ヒットドラマ『半沢直樹』や朝ドラ『おちょやん』も担当したヒットメーカーの八津弘幸氏。どん底から這い上がる物語を得意とする一方、落とす前の“溜め”の演出には定評があります。29日の放送で、“最高の幸せから地獄へ突き落とす準備”が完了したとも言えますので、主人公の小一郎が願う“兄弟の絆”や“家族の幸せ”が兄・秀吉のエゴによって少しずつ歪んでいく……その幕開けといえるのかもしれません」
このあといよいよ本格的な戦乱と権力闘争の渦に突き進んでいく『豊臣兄弟!』。フラグが一本ずつ回収されていくたびに、日本中がさらなる“悲鳴”に包まれることになりそうだ。
