3月29日、三重県・鈴鹿サーキットで開催された「F1日本グランプリ」のスタート前のセレモニーで、ひときわ異彩を放ったのがロックバンドX JAPANのリーダーで、世界的ミュージシャンのYOSHIKIによる『君が代』パフォーマンスだった。
“ロックな君が代”の衝撃
「従来の厳粛な国歌斉唱のイメージとは一線を画す“ロックな君が代”に、会場の空気が一変しました。演奏が始まった瞬間、それまでのざわめきが嘘のように消え、13万人の観客が水を打ったように静まり返ったのです。観客の視線はステージに釘付けとなり、ピアノの一音一音に耳を澄ませるような張り詰めた空気が広がっていました。まさに“音を聴く”というより、“空間ごと体感する”ような特別な時間だったのが印象的です」(スポーツ紙記者、以下同)
ネット上でもこのパフォーマンスは瞬く間に拡散し、YOSHIKIの表現力の高さをあらためて評価する声が広がった。
「とりわけ注目されたのは、“静”と“動”のコントラストです。繊細なピアノの旋律ではじまり、弦楽器が重なり、後半にかけてドラムが加わってドラマチックに展開していく構成は、ロックとクラシックを融合させてきた彼ならではの真骨頂とも言えるでしょう。短い国歌の中に物語性を持たせた演出には、スポーツの祭典にふさわしい高揚感がありました」
一方で、すべての視聴者が手放しで受け入れたわけではなく、ネット上ではとまどいや批判も散見された。
《君が代アレンジってなんか違う》
《YOSHIKIさんなら、国歌の重要性を理解していると思っていたが》
《君が代ってアレンジしちゃいけないんだろ》
こうした声が聞かれる理由を音楽ライターが語る。
「君が代は歴史的背景や象徴性から、より慎重な扱いを求める声が根強いのも事実です。ただ、今回の演出が完全に“逸脱”だったかといえば、そう単純でもありません。旋律の骨格を崩すことなく、演奏表現として新たな解釈を提示した点は、むしろ現代的なアプローチとも言えます。YOSHIKIさんのパフォーマンスは、伝統と革新のバランスを問いかける試みにも見えます」
賛否が分かれた今回のアレンジ。13万人が静寂の中で耳を傾けたあの数分間の体験が、多くの人の心に強く残ったのは間違いなさそうだ。
