東京都清瀬市長選で初当選した元共産党市議の原田博美氏(日本共産党東京都委員会の公式YouTubeチャンネルより)

 3月29日に投開票された東京都清瀬市長選で、共産・社民が推薦する新人の原田博美氏が、自公推薦の現職・渋谷桂司氏を破り初当選を果たしたのだが、じつは今回の選挙には“珍しい争点”があったという。

30年ぶりの「共産市長」誕生

 今回の結果は、専門家の間でも「大番狂わせ」と受け止められている。というのも、原田氏は共産党籍を持つのだが、都内の市長選で共産党籍の候補が当選するのは、1996年の狛江市長選以来、実に30年ぶりのことなのだ。現在、全国でも共産党籍を持つ首長は4人のみというきわめて珍しい事態なのだが、そんな選挙結果に対してSNS上ではある小説を連想する声が上がった。

《図書館戦争ならぬ図書館選挙だった清瀬市長選。図書館陣営が勝った!》
《これはまさに図書館戦争 地方には地方の問題があってそれの民意が反映された選挙結果って気持ちいい》

 有川浩氏のベストセラー小説『図書館戦争』になぞらえ、行政から図書館を守ろうとした市民の勝利を祝う書き込みが相次いでいる。

 今回の選挙の最大の争点の一つが市立図書館の閉鎖問題だった。清瀬市は2024年、6つある図書館のうち4つを一気に閉鎖する方針を決定したが、その手続きが「汚い」と市民の反発を招いていた。

「2024年、市は事前に図書館運営の方針案を公表し、パブリックコメント(市民の意見)を募りました。しかし、その中に『4館閉鎖』という重要な予定が明記されていなかったのです。閉鎖を知らされないまま意見公募が終わっていたという事実に、市民からは『だまし討ちだ』との声が当時、噴出しました」(全国紙政治部記者、以下同)

 存続を求める市民が住民投票の実施請求に必要な“有権者の50分の1”を大きく上回る7674筆の署名を集め、住民投票を求めたものの、議会側がこれを否決。2025年3月末、図書館は閉館に追い込まれた。今回の選挙結果は、その際に溜まった市民の“怒り”が、一年越しに現職へのNOとなって突き付けられた格好だ。

「もちろん、現在のイラン情勢への対応など、高市政権に対する批判が追い風になった面もありますが、今回、市民が一番の判断材料としたのは、図書館閉鎖という身近な行政の在り方だと思います。説明不足のまま公共施設を削減したことへの反発は、それほどまでに強かったといえます」

 当選後の会見で原田氏は、「市民の声を聞かない現職に対する怒りがマグマのように溜まっていた」と語った。さらに、「立派な図書館が1カ所あればいいというものではなく、歩いて行ける場所にあることが大事だと痛感した」と述べ、閉鎖された図書館の再開に向けて意欲を示している。

 清瀬の“図書館戦争”の結末は、全国の自治体が進める公共施設再編のあり方に一石を投じたと言っていいだろう。