3月31日、NHK総合でドラマ『魯山人のかまど』が放送開始された。大正から戦後にかけて活躍した芸術家・北大路魯山人を描く地味なテーマの作品なのだが、放送開始直後からSNS上で話題を呼んでいる。
異例の主演交代劇と制作の遅れ
『魯山人のかまど』は、3月6日からBSで先行放送が始まり、総合では31日から毎週火曜22時枠で放送がスタートしたのだが、実は制作段階では放送延期を危ぶむ声も少なくなかったという。
「昨年7月に制作が発表された後、9月に突然、『すでに制作開始をお知らせしておりました特集ドラマ『魯山人のかまど』は、諸般の事情により、制作が延期となりましたことをお知らせします』と制作の延期が発表されました。そしてその2か月後、今度は突然の主演交代。当初は北大路魯山人役に小林薫さんがキャスティングされていましたが、またも『諸般の事情により』として、小林さんの降板と、藤竜也さんへの交代がNHKから発表されたのです」(テレビ局関係者、以下同)
制作発表時は「2026年春放送予定」とされていたが、そのタイミングでの体制変更に、関係者の間ではスケジュール通りに放送できるのかと不安視する向きもあった。
「というのも、このドラマの脚本と演出を担当している中江裕司さんは作品作りに強いこだわりがある人なのです。作品の中に登場する料理を単なる“消えもの”として扱わず、その季節に最も適した本物の食材を追求するのが中江さんのスタイル。沢田研二さんが主演して食の本質を描いて高い評価を得た映画『土を喰らう十二ヵ月』では、旬が短いタケノコの撮影タイミングを逃した際に、『じゃあ来年だね』と撮影を1年延ばしたエピソードは有名です」
小林薫の降板も、もしかしたらそのあたりのこだわりぶりが関係しているのではという噂もあったくらいだが、中江氏のそうした妥協なき姿勢はドラマの質を高めてもいる。
「本作にはハリウッド俳優のサイモン・ペッグ氏がキャストに名を連ね、魯山人の国際的な交流を重厚に再現し、また、鎌倉や茨城県笠間市のロケ地選定や、劇中に登場する陶芸作品の多くに魯山人が実際に制作した本物を使用するなど、美術面でも徹底した作り込みがなされています。こうした細部へのこだわりが、結果としてドラマ全体のクオリティを底上げしているのは間違いありません」
『美味しんぼ』ファンが反応
この重厚なドラマに意外な角度から反応したのが、累計発行部数1億部を超える人気料理漫画『美味しんぼ』のファンたちだ。
『美味しんぼ』に登場する美食家で、主人公・山岡士郎の父である海原雄山は、魯山人がモデルと言われている。ドラマで藤竜也が演じる、妥協を許さず時に周囲を厳しく叱責する魯山人の姿は、『美味しんぼ』読者がイメージする“リアルな海原雄山”だったのだろう。SNS上で《魯山人のかまど見てるけど、どうしても海原雄山がよぎるw》といった声が多く聞かれた。
また、《うちの美味しんぼマニアが「山岡のいない美味しんぼじゃん!!! 栗田と海原雄山じゃん!!!」と騒いでいる》《古川琴音の栗田さん(美味しんぼ)感たるや!》といった投稿も。
『魯山人のかまど』は、晩年の北大路魯山人のもとに、回顧録を書くために女性記者が訪れるという設定なのだが、古川琴音演じる記者のヨネ子が『美味しんぼ』のヒロイン・栗田ゆう子を彷彿とさせたのだろう。
さらに、《ロケ地、料理、うつわ、衣装。ものすごくお金と手間のかかったドラマだ。近年の民放のドラマでは無理かもしれない。内容は色んな人がおっしゃっている通り「山岡のいない美味しんぼ」だった。山岡がいない分、話が早い》といった“山岡不在”をポジティブに受け止める意見も。
主演の降板や制作の延期など紆余曲折を経たが、結果的に予定どおりのスケジュールで放送された『魯山人のかまど』。全4回のドラマなので放送は残り3回。『美味しんぼ』ファンをはじめ多くの視聴者を惹きつける作品の展開に、今後も注目が集まりそうだ。
