日本の無痛分娩の普及率は6年連続で上昇しており、'24年は16.2%だったが、都道府県別にみると最も高い東京都が35.8%、一方29県では10%未満と地域差が激しいのが実態。'25年10月から東京都が助成金を開始したことを皮切りに同じ動きが一部自治体でも広がっている。さらに普及率が上がりそうな今、無痛分娩を選択した北原里英さんにお産のスタイルをどう決め、経験を踏まえて感じたことを聞いた。
自分で納得いくまで調べてから決めることが大切
「無痛分娩に反対する夫がいるんですか?そのご主人に、だったらあなたのお尻を麻酔なしで裂いてみようか、って言ってやりたいですよ」
そう言って笑うのは、元AKB48のメンバーで、女優として活躍する北原里英さん。無痛分娩で第1子の長女を出産したのは2024年11月のこと。
妊娠がわかってからは、グループの先輩である峯岸みなみさんや、お笑い芸人のバービーさんらがYouTubeで妊娠・出産体験を語る様子に、大いに励まされたという。
「今はネットでなんでも調べられて便利な一方、情報が多すぎて選択が難しい一面もあります。ひとつの意見をうのみにせず、自分で納得いくまで調べてから決めることが大切だと実感しました」(北原さん、以下同)
無痛分娩で出産した友人からも詳しく話を聞き、同じ産院に通院を決めた。陣痛を含め、出産にまつわる痛みをできる限りなくす「完全無痛分娩」に対応した産院だが、北原さんには陣痛を感じたい、という思いもあった。
「麻酔科の先生とのカウンセリングで、麻酔をスタートするタイミングは自分で決められるとわかり安心しました。陣痛をしっかり感じてから麻酔を使う人もいれば、陣痛が怖くて早い段階から麻酔を使う人もいる。希望に応じた対応をしていただけるんです」
楽しいマタニティーライフを思い描いていたが、予想外のことが起こる。妊娠初期の健診で、妊婦のおよそ1割に見られる妊娠糖尿病を発症したことがわかったのだ。
どんなお産も覚悟が必要なことは変わらない
高年齢妊娠や肥満、妊娠中に急激に体重が増加した場合に起こりやすいが、北原さんはどれにも当てはまらなかったため「なぜ自分が」と落ち込んだ。
「赤ちゃんに何かあったら、と不安でしたが、先生や栄養士さんのアドバイスのもと、食生活を徹底的に見直しました。私の場合、妊娠前はダイエットが当たり前の日々で炭水化物が足りていなかったので、1日3食、お米や野菜をバランスよくしっかりとることを意識しました」
幸いにも、妊娠後期には血糖値の数値も安定。ところが、計画無痛分娩の準備を進めていた矢先、予定していた入院日より前に陣痛が来てしまった。
北原さんは陣痛の計測ができるアプリを使って冷静に陣痛間隔を見極め、5分間隔になった時点で産院に連絡、深夜に即入院となった。
「なんとか我慢できる痛みだったんですが、背中にカテーテルを入れ、麻酔を使った瞬間にすっと楽になりました。
でも私の友人には、麻酔が体質に合わず嘔吐してしまった人もいます。お産に“絶対”はなく、本当に人それぞれ。無痛分娩が楽なわけでは決してなく、どんなお産も覚悟が必要なことは変わらないと思います」
翌朝、駆けつけた夫の立ち会いのもと、昼ごろに出産。数回のいきみでスムーズに生まれた。
「超安産で、出産直後は明日にでももう一人産める!と思ったほど(笑)。でも、麻酔が切れたあとは当然痛いし、産後の身体への負担もありました。世のお母さん方はみんなこんな大変な思いをしてきたんだなと、いろんな気持ちが駆けめぐりましたね」
無痛分娩の体験談を自身のYouTubeで公表したところ、同世代の女性ファンから大きな反響が。
「男性や、親世代の中には無痛分娩に対して後ろ向きな意見の人もいるかもしれません。でも無理に痛みを味わわなくても、母親はおなかの中にいる赤ちゃんと十月十日ずっと一緒に過ごして、その間に愛情や覚悟はしっかり育っているはず。周りの家族は、妊婦さんの思いを尊重してあげてほしいです」
北原さんが出産した翌年、2025年には、東京都や岡山県備前市、茨城県取手市、愛知県みよし市などが、無痛分娩費用への助成を相次いで発表した。少しずつではあるが、無痛分娩への理解が広まりつつある。
妊活に前向きになる方が増えれば
「とはいえ地方では、無痛分娩に対応できる産院がまだまだ少ないのが現実。少子化問題が深刻な中、一部の自治体だけでなく、全国の妊婦さんが出産スタイルを選べる世の中になってほしい。その結果、妊活に前向きになる方が増えればいいなと思います」
無痛分娩はもちろんメリットばかりではない。自然分娩に比べ分娩時間が長くなる可能性や、麻酔によるかゆみ、発熱などが起こりやすいリスクもある。
重要なのはどちらを選ぶかではなく、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、“どちらも選べる仕組み”を整えることだ。痛みを耐える時代から、誰もが心から納得して産める時代へ─。少子化対策の一環として、行政の理解と対策が待たれる。
取材・文/植木淳子
きたはら・りえ(34)元AKB48・SKE48・NGT48メンバーで女優。NGT48ではキャプテンを務めた。'21年に俳優の笠原秀幸と結婚、'24年に長女を出産。
