東京都清瀬市長選で初当選した元共産党市議の原田博美氏(日本共産党東京都委員会の公式YouTubeチャンネルより)

 30年ぶりに誕生した共産党籍の市長による「図書館戦争の勝利」は、一週間あまりでもろくも瓦解した――。3月29日に投開票された東京都清瀬市長選で初当選した原田博美氏が、4月6日の記者会見で最大の公約であった「旧中央図書館の再開」を断念。期待を寄せていた市民の間に、深い失望と怒りが広がっている。

事の発端は「だまし討ち」の閉鎖

 今回の騒動の発端は2024年、当時の清瀬市長である渋谷桂司氏が、市内6つある図書館のうち4つを一挙に閉鎖する方針を決定したことに遡る。

「この際、市側が取った手法が市民の激しい反発を招きました。市は事前に図書館運営のパブリックコメント(意見公募)を募りましたが、その資料には『4館閉鎖』という大事な部分が明記されていなかったのです。閉鎖を知らされないまま意見公募が終わっていたという事実に、市民からは『だまし討ちだ』との批判が噴出しました」(全国紙政治部記者、以下同)

 その後、図書館存続を求める市民らは有権者の50分の1を大きく上回る署名を集め、住民投票の実施を求めた。しかし、市長を中心とした市議会はこれを否決。2025年3月、図書館は強行的に閉鎖されたのだ。2026年3月に行われた今回の市長選では、その「市民の積み重なった怒り」が爆発した形だ。

 原田氏は選挙戦で「市民の声を聞かない現職」を痛烈に批判し、図書館再開を“旗印”に見事当選。4月1日には図書館の解体工事の中断も決まり、支持者の熱狂は最高潮に達していたが、就任直後に突きつけられた“再開断念”という現実はあまりに非情だった。

「原田市長が断念の理由に挙げたのは、法的な壁と金銭的な問題です。旧中央図書館が立つ公園内には建築面積の制限があり、前市政が建てた新施設がすでにその枠を占有しているため、旧館を残せば即『違法状態』になることが判明しました。さらに、工事を止めている間は業者に1日100万円の違約金が発生し、すでに建物内部の破壊も進んでいた。市長は『就任後に初めて知った』と釈明しましたが、一部の市民からすれば『今さら何を』という話です」

 前市政の“だまし討ち”を批判していた新市長が、今度は結果的に“実現不可能な公約”を掲げていたという事実。この皮肉な状況に、ネット上では過激な声も相次いでいる。

《6期24年も市議をやっていた人間が、公園の建築制限を知らなかったなんて通じない。守れないと分かっていて公約にしたのなら、それこそ市民へのだまし討ちだ》
《1日100万円の違約金が発生することも、現場がどこまで壊されているかも、選挙前に調べれば分かったはず。あまりに無責任すぎる》
《前市長のやり方も汚かったが、新市長のこの手のひら返しは絶望。清瀬市民は一体誰を信じればいいのか》

 さらに、新市長と同じ共産党の山添拓参院議員がSNSで「前市長の悪質さが白日の下に」と責任転嫁とも取れる投稿をしたことで、《他責がひどい。ひどすぎる》など、火に油を注ぐ事態となっている。

清瀬市の図書館に関する山添拓日本共産党政策委員長の投稿

「前市長は引き継ぎ不透明なまま工事を止めて“爆弾”を新市長に渡し、新市長はそれを精査せず公約に掲げて“自爆”。結局、政治的な駆け引きのツケを払わされるのは、いつも市民なのです」

 “歩いて行ける図書館”を取り戻すために立ち上がった市民の熱意は、政治家たちの泥沼の責任転嫁によって、虚しくも踏みにじられようとしている。期待が大きかった分、清瀬市民が受けた傷はあまりに深いだろう。