異なる人生を歩んできた女性2人の成長が描かれている今期の朝ドラ。主演の2人も、ドラマさながら対照的な青春を送りながら“朝の顔”へとつながる輝きを、早くから宿していたようで―。
見上愛は綾瀬はるかに近いポテンシャル
放送中のNHK連続テレビ小説『風、薫る』が、早くも序盤のヤマ場を迎えている。
「4月9日の第9話で、ダブル主演を務める見上愛さんと上坂樹里さんが劇中で初めて出会うシーンが放送されました」(スポーツ紙記者、以下同)
このドラマは、明治期に看護婦の社会的地位向上に貢献した先駆者である実在の女性、大関和さんと鈴木雅さんをモチーフにした物語。
「見上さんが演じる『りん』は、元武家という由緒ある家で育ったお嬢様。しかし、乱暴な夫に愛想を尽かして、子どもを連れて嫁ぎ先を飛び出したシングルマザーでもあります。上坂さんが演じるもう一人の主人公・直美は幼いころ、親に捨てられ教会で育ったという生い立ちのため、他人に心を開けない女性という役どころです」
史実をなぞれば、今後2人は看護学校に入り、共に医療に携わっていくことになる。
「多くの朝ドラは、序盤は主人公の幼少期を丁寧に描くという構成になりますが、今回は主人公が2人という“バディ”もの。生まれも育ちも異なる2人が出会ったことで、どのように歩んでいくのか、朝ドラ好きな人たちの間で期待が高まっています」
主人公たちと同様に、見上と上坂も対照的なキャリアを積んできているようだ。
「見上さんは東京育ち。高校時代に演劇部に所属するなど表現することに打ち込み、日本大学芸術学部へ進学。学業の傍ら俳優業を始め、'25年に公開され大ヒットした映画『国宝』などで好演して、実績を重ねてきました。今回、朝ドラの主演に選ばれたのも、制作サイドからのオファーだったそうです」(テレビ誌ライター、以下同)
一方の上坂は、神奈川県出身。中学時代からキッズモデルとして活動し、16歳で「ミスセブンティーン」に選ばれたのをきっかけに注目を集めた。
「その後は俳優業に注力するようになり、かねて目標にしていた朝ドラのオーディションにも挑戦してきました。2度の落選を経て、今回は3度目となるオーディションで応募者2410人の中から選ばれ、主人公の座を射止めたとされています」
2人の魅力は何なのか。それぞれにインタビューをしたことがあり、俳優の分析を手がける女優評論家の高倉文紀氏に聞いてみた。
「見上さんは、大人っぽく洗練された都会的な雰囲気を持っています。ミステリアスな役柄が多いですが、素顔は非常に明るく元気で、話も弾む知的な人物です。その気品ゆえに、劇中の“元家老の娘”というお嬢様役が非常にハマっています。唯一無二の不思議な空気感と柔らかさがあり、綾瀬はるかさんに近いポテンシャルを感じさせます」
上坂についても、新垣結衣のような伸びしろを秘めていると語る。
「フレッシュで透明感があり、いわゆる“正統派”の魅力を持っています。インタビューで見せる素直な印象とは裏腹に、芝居に入ると非常に深く、力強い表現を見せる。そのギャップが印象的です。特に内に秘めた芯の太さを感じさせる演技には特徴があります」(高倉氏、以下同)
演劇を学ぼうという強い姿勢も持っていた
2人とも国民的女優レベルに成長するポテンシャルを持っていると太鼓判を押す。
「どちらも朝ドラの主人公に求められる“好感度”や“親しみやすさ”を兼ね備えた逸材です。『風、薫る』は医療を題材にし、世界中に混乱を与えたコロナ禍を思わせる描写もあるなど、難しい背景を持つ物語。だからこそ、見る人に癒しを与えられる魅力を持った見上さんや上坂さんのような俳優が起用されたのではないでしょうか」
将来が期待される若手2人は、どのような道のりを歩んできたのか。見上が当時、所属していた私立桐朋女子高校の演劇部で顧問を務めていた櫟木祥子さんに話を聞くと、当時から表現への意欲は際立っていたという。
「中学まではスポーツに没頭していましたが、高校1年の途中から演劇部に入部したんです。当時の見上さんは、文化祭でバンド演奏を披露するなど、演劇に限らず表現することに精力的で、自分をしっかり持っている生徒という印象でした」
演劇部に入ってからは、ますます演じることの魅力に惹かれていった。
「入部してまもなく、寺山修司の作品である『犬神』の舞台に出演したり、『高校生劇評グランプリ』というコンテストには応募して入賞し、オリジナルの脚本を書いたりと精力的でした。観劇しながら、その感想をノートに書き留めるなど、演劇を学ぼうという強い姿勢も持っていましたね」(櫟木さん)
同じく演劇部の顧問を務める同校教員の天野彩さんは、次のように語る。
「卒業生、それも演劇部OGの活躍をこうして見られて、とてもうれしく感じています。桐朋女子高校の演劇部には俳優を目指す生徒も多数おりますが、多くの生徒が見上さんのご活躍を知り、憧れて研鑽を重ねているようです。在校生一同、見上さんの活躍を応援しています」
恩師から応援されるのは、上坂も同じようだ。彼女が通っていた座間市立栗原中学校で、当時校長を務めていた椚弘之さんは、上坂について“とても目立つ子”だったと振り返る。
小学校のころから児童会長を務めていた上坂樹里
「彼女は小学校のころから児童会長を務めていたこともあって、中学の入学式で新入生代表として挨拶をしたんです。そのとき、大勢の前にもかかわらず、原稿を見ずに自分の言葉で堂々とスピーチしていたと記憶しています。当時から表現力や舞台度胸のようなものがあったのでしょう」
学校外で芸能活動をしていたものの、教師側としては安心して見守ることができたという。
「教師からすれば、芸能活動で学校生活によくない影響が出てほしくないというのが本音です。しかし、上坂さんはとても控えめな性格で、周りの生徒とも普通に接するいい子でした。ご両親がしっかりした方で、活動の報告も学校側にしてくださっていましたから、多くの教師が彼女の芸能活動を応援していました。3年生のころ、彼女が火災予防運動ポスターのモデルに選ばれて、学校に貼り出したのですが、直筆サインを書いてもらったのはいい思い出です」(椚さん、以下同)
そんな上坂は、周囲の後押しもあって生徒会長にも抜擢され、そこでもリーダーシップを発揮したという。
「上坂さんの在学中にコロナ禍に入ってしまい、学校内では常にマスクを着用するなど、あらゆる感染症対策が取られる不安定な時期でしたが、上坂さんは生徒たちをまとめてくれましたね。
この期間に開かれた体育祭は、保護者を入れずに開催することになったのですが、上坂さんが教師やPTAとの橋渡し役になってくれたおかげで、無事に学校行事として成功しました。そんな優等生でしたから、今回の朝ドラで主演すると聞いても納得でしたし、うれしかったですよ」
異なる道を歩みながら朝ドラで重なった2人。ここから、どんな新風を巻き起こしてくれるのか─。
高倉文紀 女優・男優評論家。『日経エンタテインメント!』『日刊ゲンダイ』などで俳優・アイドルの取材・分析を手がけるほか、テレビ番組や週刊誌などにもコメントを多数提供
