布袋寅泰

 ギタリスト・布袋寅泰の発言が、思わぬ波紋を広げている。

“ロックと権力”の距離感

 発端は4月11日に布袋が自身のXに投稿した一文だ。

《未だかつて日本の首相がロックンロールと交わったことがあったか? 素晴らしいことなんだよ》

 ロックと首相の接点を称賛する内容だった。

「この投稿はすでに削除されていますが、背景にあったのは、前日10日に行われた高市早苗首相と、イングランドのロックバンド『ディープ・パープル』メンバーとの官邸での面会です。来日ツアーに合わせて対面が実現したのですが、ファンを公言する首相は『ロックの歴史をつくり続けていることに深く敬意を表する』と大興奮でした」(芸能ジャーナリスト、以下同)

 だが、この発言に真っ向から異を唱えた人物が現れる。音楽ユニット『LOVE PSYCHEDELICO』(ラブサイケデリコ)のギター・ベース担当、NAOKIだ。

「NAOKIさんは13日、布袋さんの発言をまとめた記事を引用リポストしたうえで、こう断じました。《ハッキリ言っておきたい。全く素晴らしいと思わない。芸術に政府のお墨付きなんていらない》つまり、“ロックと権力の接近”そのものを真っ向から否定したのです」

 さらにNAOKIの怒りはおさまらず、《ディープパープルをダシにすり寄って来る総理も、政府にすり寄ってくロックミュージシャンも好かん》と猛批判していたのだ。

 1997年に結成されたラブサイケデリコ。ボーカルKUMIの日本語と英語が入り混じる独特な歌詞と骨太なロックサウンドで人気を博し、『Last Smile』『Your Song』などのヒット曲でも知られる。

 そんなユニットのギタリストによる突然の“異議申し立て”にSNSでは、《お墨付きでもなければ、ただの文化交流でしょ》《今こうしてロックを聴ける平和は政治の結果》といった反発もあれば、《布袋って権威に寄りすぎててカッコ悪い》《政権に迎合した時点でロッカー失格》など、布袋の姿勢をとがめる声も噴出。意見は割れている。

 これについて音楽雑誌編集者はこう分析する。

「今回のディープ・パープルとの対面は、彼ら側の要望で実現したもので、政治的な意図があったわけではありません。首相も純粋にロック好きとして会ったのでしょう。布袋さんも、ギターを始めた頃は彼らをコピーして育ち、代表曲『Highway Star』をカバーするほどのファン。首相と憧れのバンドが交わった瞬間を素直に祝福したと見るべきです。これに対しNAOKIさんはロックを“反体制の象徴”と捉える価値観が強く、権力との接近自体に違和感を持ったのだと思います」

 そもそもロックと権力の距離感に“正解”があるわけではない。距離を取ることに価値を見出す考え方もあれば、社会や権力と接点を持つことも一つの表現だとする見方もある。

 そんな両者の融合は珍しいものではないという。

「2006年、U2のボノは安倍晋三元首相を表敬訪問し、日本の発展途上国支援を評価していました。また小泉純一郎元首相はX JAPAN好きで、YOSHIKIと対談するなど両者の接点はこれまでも存在しています」

 価値観の違いが浮き彫りになった今回の一件。ロックと権力の距離をどう捉えるかは、受け手に委ねられているようだ。