4月13日に遺体で発見された、京都府南丹市園部町に住んでいた安達結希さん(11)。当初は行方不明事件として捜査が進んでいたが、15日、事態は急展開を迎えた。
義父・安達容疑者の「偽装工作」
「結希さんの義理の父にあたる安達優季容疑者(37)が、死体遺棄の容疑で逮捕されました。遺棄に加えて“衝動的に首を絞めて殺した”と殺害を認める供述もしており、京都地検にて事情聴取を受けています。事件の全容が徐々に明らかになってきていますが、まだ解明されていない点は多くあります。ランリュックや靴がまったく別の場所で見つかった理由についても、詳細はわかっていません」(全国紙社会部記者)
刑事事件に詳しい、元大阪府警刑事で現在は犯罪ジャーナリストを務める中島正純さんに、今回の事件を改めて解説してもらった。
「取調べの中でわかってきているのは、結希さんが3月23日の午前中まで生きていたということ。日ごろはスクールバスで通学していましたが、その日はなぜか車でした。そして、小学校には車で通学する人のための降車所が決まっているのですが、父親はその日、学校の隣にある学童クラブの駐車場まで行っています。
普段、保護者が行かない場所ですが、その駐車場はかろうじて小学校につけてある防犯カメラに映る。わざと映して、“送ったんだけど”という偽装工作をしたと考えられます。ただ、小学校に入る場合、完全にそこに結希さんの姿が映るのですが、まったく映っていなかった。そういう点では詰めの甘さが垣間見えます」
23日に110番通報をしたのは優季容疑者だった。警察はいつから父親を疑っていたのだろうか。
「警察は早い段階で父親への疑いを持ち始めて、誘拐の可能性を排除し、3月25日の公開捜査へと切り替えたのでしょう。そうした場合、捜査が進むにつれて父親は徐々に動きにくくなるので、遺体を移動させたのはかなり早い段階だったと考えられます。
遺体は最初、自宅裏の別荘地、そして靴の発見現場、最終的な発見場所へ移されたというのが私の見立てです。最近の警察は優秀ですから、ピンポイントに捜査している場所は犯人が訪れた場所として位置情報などを用いて割り出されたと考えるのが妥当です」(中島さん、以下同)
2つの落とし物の“異なる性格”
今回の事件が人々の注目を集めたきっかけは、結希さんが使っていたランリュックが行方不明になってから6日後に発見されたことだろう。そして、その2週間後には本人のものと見られる靴が見つかっている。中島さんは、この2つの遺留物には異なる性格があると話す。
「ランリュックについては、いつ警察に見つかるかわからない状態で自分が持っていることが苦しくなったのではないかと思います。証拠となるランリュックを早く手放したかった。処分に困って、遺棄したのかなと。
または、投棄されていた場所は京丹波につながる道なので、家出や誘拐だと思わせたかった可能性もあります。数日間捜索して出てこなかったものが、その捜索の翌日に突然発見されるのは不自然としか言いようがありません。現在、“被疑者ではない親族”が発見したという報道ですが、身内が見つけるのも違和感がありますよね」
一方、靴の発見の背景には犯人の焦る心情が垣間見えるという。
「靴については捜査の攪乱だと思います。わざと警察に見つけてもらうために、遺体を移動する際に靴だけそこにおいて、そちらに注目が集まるようにしたのでは。子どもの靴のような小さい品は、少し地面を掘って埋めればすぐにはわかりません。それをわざわざ靴2足を地面に置いておくというのは、要は見つけてほしかったと。靴が発見された場所は死体を遺棄した場所からもかなり離れていました。警察が靴を見つけたら、その周辺を血眼になって捜索するだろうと推測したんでしょうね」
ただし、警察の目はそこまで甘くないと中島さんは指摘する。
「私はこの靴が2足見つかった瞬間に、ここの周辺には遺体はないなと思いました。なぜかと言うと、遺体を埋めたのであれば、わざわざあの靴を地面に置く必要はないじゃないですか。例えば“遺体を運んでいたときにポロっと靴が脱げた”という状況を想定したとしても、2足同時にきれいに脱げることはありえないですから」
死因が公表されない背景事情
こうした捜査の攪乱行動から優季容疑者の人物像が見えてくる。
「もしかしたら非常に神経質な人間かもしれませんね。ここに置いておいたらまずいかも、警察に見つかるかもと危険を冒してまで遺体の場所を変えたわけじゃないですか。また、遺体は発見時、土や落ち葉など、何もかかっていない状態で発見されました。車を止めて死体を埋めに行こうとすれば、スコップを使って土を掘ったりした場合、数十分はかかるでしょう。すぐ横は田んぼだったので、長い間車を止めていたら誰かに見つかる可能性があります。焦った結果、埋めずに遺棄した、そんなところじゃないかなと」
結希さんの死因は未だに「不詳」で、府警も詳細の発表を控えている。公表に踏み切らないのは何か理由があるのだろうか。
「暖かくなってきた最近の気候や時間が経過していることもあり、遺体が相当傷んでしまっていることが推測されます。その場合、死因の特定は困難になるケースも多いです。ただ、今回、骨折については回答を差し控えますとありましたよね。ほかにもいくつかの項目は回答を控えていますが、これは、犯人しか知りえない秘密の暴露を保全するためだと思います。
例えば、首を絞めた場合、首の骨や舌骨が折れている場合もあります。事情聴取の中で、容疑者が“首を絞めて殺しました”と証言し、解剖の結果も供述通り首の骨が折れていた場合、それが決定的な証拠の1つになります」
親が子どもを殺害するケースの多くは、双方の関係性が悪化していることが多いという。
「動機としては、子どもが再婚相手に懐かなかったということが一番考えられます。犯行は突発的なものではなく、計画的だったのではないでしょうか。というのも、当日、スクールバスではなく車で登校していることや、新婚旅行の予定も犯行日と近いことから、父親があらかじめ計画していた可能性があります。そして、犯行当日は会社を休み、防犯カメラに映るために学校へ送るという偽装工作をした。ただし、これらはあくまで現在の情報から導き出した予想です」
長い間、ボランティアで結希さんの捜索をしていた南丹市消防団の団長・野中大樹さんは、遺体発見の一報を受けて、
「消防団としても結希くんが必ず生きていると信じて頑張って参りましたが、そういう思いとは違う一番最悪な結果を招いてしまって大変悲しい思いであり、また憤りも感じております」
と、やるせない思いを打ち明けた。
結希さんの捜索ビラを渡すために近所を回っていたという優季容疑者だが、必死になって探す人たちをいったいどんな思いで見つめていたのか。その胸中は未だに不透明なままだ。
