“りくりゅう”こと三浦璃来と木原龍一

《これからもペアを、日本の皆様にもっと知っていただけるよう、新しいことに2人で挑戦していきます》

 2月に開催されたミラノ・コルティナ五輪。フィギュアスケートのペアで日本初となる金メダルを獲得した“りくりゅう”こと三浦璃来と木原龍一が現役を引退することを、4月17日に発表した。ふたりは、28日にそろって記者会見を行う。

「五輪の閉幕から2か月が過ぎても、まだまだりくりゅうフィーバーが続いています。テレビ番組やCMに出演したり、日本スケート連盟の優秀選手表彰式では“スケーター・オブ・ザ・イヤー”を受賞しました。25日には、ミラノ・コルティナ五輪の応援感謝パレードにも登場して、集まったファンからの歓声に笑顔で応じていました」(スポーツ紙記者)

 2019年からりくりゅうの身体のコンディションを支えてきたマッサージセラピストの青嶋正さんは、ふたりとの出会いをこう振り返る。

「木原くんが初めて僕のところに来たとき“引退を覚悟していましたし、ケガもあるのですが、なんとか力を貸してください”と言われたのを覚えています。

 僕がしっかりやらせてもらうのは当然ですが、選手のほうから弱い部分を正直に伝えて“力を貸してください”と言える人はなかなかいないと思います。うわべの言葉ではなく、こうした姿勢が人間的にも裏付けされているから、響くものがあったんだと思います」

璃来が自分で気がつくまで待つことに

 ペアを組んだ当時の三浦は、10代だった。

「まだ若いし大きなケガもしていなかったので、その恐ろしさやコンディショニングの必要性をあまり感じていない様子でした。

 どうにか強引に説き伏せるという手もありましたが、木原くんとも相談して、璃来ちゃんが自分で気がつくまで待つことにしたんです。アスリートに痛みやケガはつきものなので、何かが起こったときに教えよう、と……」(青嶋さん、以下同)

引退を発表した2026年4月17日の午後、春の園遊会に出席して天皇、皇后両陛下らと言葉を交わした三浦璃来と木原龍一

 少したつと、実際にそのタイミングが来たという。

「僕と3人でコンディショニングをうまくやって、それをりくりゅうの一番のストロングポイントにしていこうという方針が定まりました。璃来ちゃんはストレートな性格なので、方向さえ決まれば一気に進むタイプで、すごく一生懸命になってくれて。

 その歯車がうまく回り出したのが、北京五輪に出場した2022年から、初めて世界選手権で優勝した2023年くらいの時期でしたね」

 こうして、世界で活躍する機会が増えていったりくりゅう。しかし、その道のりは平たんではなかった。

 2019年8月にペアを結成する直前まで、木原は引退を考えながら、名古屋市にあるスポーツ施設「邦和みなと スポーツ&カルチャー」でアルバイトをしていた。

 当時、木原と一緒に働いていた、同スポーツ施設を運営する東邦ガス不動産開発の飯岡裕輔さんによると、悩みを口にすることもあったという。

僕はスケートしかやってきてない

木原選手は当時20代後半でしたが、同世代が社会に出て経験を積んでいる中で“僕はスケートしかやってきてないや……”と話していたことがありました。弊社の施設でアルバイトをしていたのは、進退に悩んでいた時期で、三浦選手と出会うまで将来への不安があったのかもしれません」

 引退後は指導者の道に進むことを表明しているりくりゅう。飯岡さんは、木原が子どもたちにスケートを教える姿を見たことがあるという。

「以前、古巣のスケートクラブで子どもたちがジャンプの練習をするお手伝いをしていました。ペアについて“リフトとかスローはこんなふうだよ”と見せてあげていたことも。子どもたちの中には、今も競技を続けている子もいます。“あのときのお兄さんって木原選手だったんだ”と知って、練習の励みになると言っていました。こうした姿を見ていますし、優しくまじめな指導者になると思います」(飯岡さん、以下同)

《早くも新しいプロジェクトが進行している》として、「りくりゅう」こと三浦璃来と木原龍一との写真をした衣装デザイナーのマシュー・キャロン氏(本人のインスタグラムより)

 これからの木原の活動を、必要があれば支援したいともいう。

「今後、木原選手が歩む道がどういった形であっても、応援したいと思っています。ペアの競技者として、このうえない実績を収めていますしスケート業界全体を盛り上げる力を持っていると思います。

 私自身もスケート業界に携わっている身として、業界を盛り上げるというところに尽力いただけたらすごくうれしいです。その際に、弊社施設でも協力できることがあれば一緒にやらせていただきたいです」

 前出の青嶋さんも、りくりゅうの新たな道を楽しみにしている一人だ。

「これまで、選手としてつらいことをたくさん経験してきたと思いますし、練習環境などの難しさも知っていると思います。そのノウハウを活用して、悪いところはできるだけなくして、いいところを伝えてあげられる人になってほしいです」(青嶋さん、以下同)

りくりゅうが築いた“ストロングポイント”

 ふたりの強みを生かした“ネオ指導法”にも期待を寄せる。

ふたりが助け合って身体のコンディションを見極めて、セルフケアができるということが、僕のもとでりくりゅうが築き上げてきたストロングポイントだと思います。

 教える際にもそれを発揮して、身体の不調がテクニックエラーにつながるということを伝えながら、新しいタイプの指導者を目指してほしいです。身体のことを見ないで、練習だけを推し進めてしまうと、才能ある選手がケガをして将来の道が閉ざされてしまうこともありますし……」

 どういうことか。

「例えば、ジャンプを練習するときに、単に“もっと高く”とか“肩の位置に気をつけて”といった技術面の指導だけでは、うまくいかないことがあります。そういうときに、足首の動きや腰の柔らかさまで見て、それをケアできると結果が出ることがあるのです。こうした指導が実現すれば、第2のりくりゅうが生まれるかもしれませんね」

 ふたりが育てる選手の活躍ぶりが今から楽しみ!