左から朝ドラヒロインの黒島結菜、橋本環奈、松下奈緒

 朝ドラ『ばけばけ』のバトンを受け、この春スタートした『風、薫る』。明治の看護師を異例のW主人公(見上愛、上坂樹里)で描き話題を集めるも、視聴率は低空飛行が続く。放送は半年間の長丁場で、最後まで視聴者を惹きつけることができるのか─。

「そもそも朝ドラは離脱するのが当たり前。それが朝ドラというもの」

 と話すのは、漫画家でテレビウォッチャーのカトリーヌあやこさん。そこで、朝ドラを途中で見るのをやめたことがある30代~60代の男女各250人にアンケート。

好き嫌いがはっきり分かれるドラマ

2013年『あまちゃん』

 4位は『あまちゃん』

 アンケートには、「話が進むにつれ想像と反対の方向に行った」(愛知県・57歳・女性)、「評判を聞き見始めたものの、好みに合わなかった」(千葉県・62歳・女性)、「最初は面白かったが、アイドルになるところで面白さを感じなくなった」(滋賀県・60歳・女性)との声が集まった。

 宮藤官九郎脚本によるオリジナルストーリーで、ヒロインの口癖「じぇじぇじぇ」が新語・流行語大賞年間大賞を受賞するなど注目を集めたが。

「クドカンドラマはハマれば盛り上がれるし、一つひとつの小ネタも楽しいのだけれど、そうでないとどこが面白いのかわからない。さらに、ハマって熱狂している人を見て冷める人もいる。好き嫌いがはっきり分かれるのがクドカンドラマの特徴の一つ」(カトリーヌさん、以下同)。

 オリジナル作品ならではの落とし穴もあった、と指摘する。

「タイトルと岩手で始まるエピソードから、海女さんになる物語だと思った方は多いはず。ところがヒロインは途中で上京してアイドルを目指す。東京編で離脱した人が多くいた。どこに連れていかれるのかわからない不安があった。それはオリジナルの恐ろしさ」

同票で4位は『あんぱん』

2025年度前期放送のNHK連続テレビ小説『あんぱん』に出演した今田美桜、北村匠海

「RADWIMPSの主題歌がイメージに合わず見る気がしなくなった」(愛知県・47歳・女性)、「少し見逃したら話がわからなくなり、見るのを諦めた」(愛知県・52歳・男性)、「創作部分がひどい」(東京都・56歳・男性)と、トップ5入り。

 やなせたかしの妻・小松暢がモデルで、今田美桜がヒロインを演じた。

「著名人の妻がヒロインのケースでよくあるけれど、みんなヒロインの話より、夫の話が見たいと思ってしまう。アンパンマンがどうやって誕生したのかが知りたいのに、ヒロインの姉妹の恋愛を描いていたりして不満が募った」

 著名人の妻がヒロインの朝ドラは多く、夫の夢の達成が物語のヤマ場に。

「『マッサン』では早くウイスキーをつくれと言われたし、『ばけばけ』も早く怪談を書けと言われました。『あんぱん』もアンパンマンの話になるのを待ちきれない人がいた。だけど、アンパンマンがアニメ化されるのはやなせさんが69歳のとき。さっさと出すわけにはいかないけれど、その過程を見守る我慢ができない。視聴者にいかにストレスを与えず夢の達成まで引っ張れるか、そのバランスが難しい」

朝ドラのモデルケースがつくられた3位は『ゲゲゲの女房』

『ウェルかめ』からバトンを受けた次作の『ゲゲゲの女房』は平均視聴率で18・6%まで盛り上げた

「時間が合わなくなった」(神奈川県・63歳・女性)、「まじめすぎた」(栃木県・68歳・男性)と、トップ3に。

 水木しげるの妻・武良布枝がモデルで、ヒロインを松下奈緒、その夫を向井理が演じた。平均視聴率は18・6%。

「『ゲゲゲの女房』の前が当時朝ドラ史上最低視聴率13・5%を記録した『ウェルかめ』で、朝ドラ低迷をNHKが立て直そうとしていました。ずっとオリジナル作品が続いていたけれど、久々にモデルを置いたのが『ゲゲゲの女房』で、ここからモデルを据えることが多くなりました。主題歌はいきものがかりで、以降人気アーティストが起用されるように。今に続く朝ドラのモデルケースがつくられました」

 このときから放送時間も変わり、朝8時15分から8時に繰り上がっている。

「途中でやめる人が多かったのは、時間の問題もあったと思います。朝ドラの見方自体も変わって、それまでは習慣のようにただ見ていたけれど、SNSで発信したり、感想を言い合うようになった。そこで従来の視聴者が離れ、視聴者層が変化した。いろいろな意味で転換期でした」

2位は『ちむどんどん』

『ちむどんどん』でヒロインを務めた黒島結菜

「登場人物の勝手さにあきれ返るばかりで見ていて腹立たしかった」(埼玉県・62歳・男性)、「長男の悪事を隠して関わりのない妹に謝罪させる母親とか、エピソードの一つひとつがあり得ない」(東京都・69歳・女性)、「物語に面白みがなく主演女優がだんだん嫌いになった」(北海道・53歳・女性)と辛辣な声が。

「朝ドラにはよくSNS上でツッコミを入れる反省会タグがあるけれど、それを世に知らしめたのが『ちむどんどん』。登場人物全員トラブルメーカーで、ダメ長男はどんどん借金をふくらませるし、甘い母親はそれを許してしまう。ツッコミがいのある朝ドラでした」

 羽原大介のオリジナル脚本で、ヒロインは黒島結菜。「#ちむどんどん反省会」が新語・流行語大賞にノミネートされた。

「なんといってもヒロインに共感できない。ヒロインの恋愛と結婚は、やきもきしたり応援したりする朝ドラの重要なパート。でもこのヒロインは友達の婚約者を略奪してしまう。朝ドラ史上、最も祝福されないカップルといわれました。

 ヒロインの一家に巻き込まれると、ブラックホールのようにみんな大変なことになっていく。主演の黒島さん、兄役の竜星涼さんはじめ、役者さんも大やけどでした」

ヒロインが2週間不在の異例の朝ドラ?1位は『おむすび』

NHK連続テレビ小説『おむすび』の主演を務めた橋本環奈

 1位は『おむすび』

「ひたすらつまらなかった。耐えながら見るのがばかばかしくなった」(大阪府・37歳・女性)、「大震災を軽んじているように思えた」(宮城県・61歳・男性)、「橋本環奈のギャルが受けつけなかった」(東京都・52歳・女性)と、堂々のトップに輝いた。

「『おむすび』は阪神・淡路大震災30年を節目に作られた作品ですが、そのヒロインをなぜギャルにしたのか。朝ドラと、橋本さんがギャルという設定の組み合わせがひどかった」とカトリーヌさんは話す。

 根本ノンジのオリジナル脚本で、主演は橋本環奈、主題歌をB'zが歌った。平均視聴率は13・1%で、『ウェルかめ』を抜き歴代ワースト1位に。

「主演の橋本さんが『千と千尋の神隠し』のロンドン公演に行っていた時期があり、2週間にわたりヒロインが出てこないという異例の事態に。その間に東日本大震災が起こり、ヒロインの友人が避難所でおむすびを振る舞ったりしている。

 阪神・淡路大震災を経験したヒロインが、東日本大震災でタイトルでもあるおむすびを握らない、そこにびっくり。朝ドラはヒロインの夢を応援したくなるものだけど、肝心なところでヒロインはいないし、大きな困難もなく栄養士になってしまう。唯一よかったのは、このおかげでB'zが紅白で見られたこと

 上位5作品をはじめ、途中で離脱する朝ドラには共通点がある、とカトリーヌさん。

「ヒロインの夢が迷走すると視聴者は離れていきます。『半分、青い。』(7位)、『舞いあがれ!』『まれ』(9位)もそう。あとオリジナル作品は先の見えない不安がつきまといがち。代表的なのは『純と愛』(6位)。

 ヒロインが次々不幸に巻き込まれ、朝から何を見せられているんだと……。私たちはいろいろ朝ドラに求めてしまうけど、やっぱり普通の朝ドラでいい。マンネリと言われても、ヒロインには夢を実現し、ちゃんと幸せになってほしい。結局はそういうことですよね」

『風、薫る』のヒロインたちの、幸せな結末を願いたい。

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など