京都府南丹市園部町の遺体発見現場前に設けられた献花台は、色とりどりの花だけでなく、オレンジジュースや炭酸飲料、チョコレート菓子やポテトチップス、子どもが喜びそうなキャラクターグッズなどであふれかえっている。近くの住民らが置いたという机の上はすぐに供物でいっぱいになり、机の周囲に裾野が広がって小高い山のようだ。
京都府警の捜査能力
兵庫県から2時間かけ、弟と献花に来た30代の女性は囁くような小声で言う。
「行方不明のニュースを知ったときから、どうか無事に保護されてほしいと祈っていたんです。でも警察が見つけた子どもの遺体が結希くんと確認され、父親が死体遺棄容疑で逮捕されるなんて。
血のつながりはないとはいえ殺害を認める供述をしているといいますから、結希くんは本当にかわいそうですよ。こんなかたちになって悔しいですが、せめてご冥福をお祈りしたくて来ました」
献花に訪れる人は後を絶たず、少なくとも1時間に2組ほどが現場に手を合わせる。そばの電柱まで供物で囲まれていた。
近くに住む90代女性は言う。
「ご遺体の発見現場につながる農道は、周囲に農地を持っている人はみんな通るんです。犬を連れて散歩する人もいますし、発見の前々日も近所の男性が山菜採りに行っています。でも“そのときはなんにもなかった”って。どういう目的でここに遺棄したのかわかりませんが、子どもがこんな目に遭って気の毒でなりません」
京都府警の捜査能力はすさまじい。4月12日に山中で安達結希さんが履いていたと見られる黒いスニーカーを見つけると、翌13日に田んぼの脇の山林で子どもの遺体を発見。身元確認後の同15日には結希さんが家族と暮らしていた戸建て住宅の家宅捜索に踏み切り、親族を個別に聴取して、16日に養父の優季容疑者を死体遺棄容疑で逮捕した。
優季容疑者は「私のやったことに間違いありません」と認めている。
逮捕前に「首を絞めて殺害した」という趣旨の供述を引き出し、優季容疑者のスマホの位置情報や車のドライブレコーダー、カーナビなどの行動履歴を分析して捜索エリアを絞り込んでいるという。逮捕前の優季容疑者はあくまで行方不明児の身内であり、疑わしいだけで安易に犯人扱いできなかったはず。こうしたハードルを越えて逮捕にこぎつけ、府警は裏付け捜査などを進めているようだ。
“使用中の密室”をカムフラージュできるトイレ
4月18日には自宅から約2キロの景勝地「府立るり渓自然公園」の公衆トイレを念入りに現場検証した。行方不明の当日、結希さんを南丹市内のどこかで死に至らしめ、遺体を複数箇所に移動させたあと、発見現場である山林に運んだ可能性があるとみられている。
まずトイレに隠したのだろうか。地元住民によると、平日は利用客が少なく、週末や春秋の観光シーズン、夏のキャンプやバーベキューの時季になると多少は利用客が増える程度という。
やや古びたトイレに入ってみた。男性用トイレは小便器3つと個室1つ。掃除は行き届いており、施錠された掃除道具入れがあった。遺体を隠すならば、まず個室を考えるだろう。個室上部には大きな隙間があり、中から鍵をかけて上部の隙間を乗り越えれば“使用中の密室”をカムフラージュできるつくりだ。
しかし、個室のスライド式のカギは壊れていた。
「女性用トイレも同じです。使用中に外から開けられてしまうため、恥ずかしくて使えないですね」(観光客の女性)
ほかに多目的トイレがあり、中からカギはかかるが、カギをかけたまま外部に脱出する方法はない。仮に遺体や遺留品を隠しても、利用客がいれば目に入る可能性があり、隠し場所になるとは思えなかった。優季容疑者は何の目的でトイレに立ち寄り、どのくらいの時間を過ごしたのか。
府警は4月21、22日には遺体発見現場から南東に約1・8キロの、ため池でボート上から水中スコープで何かを捜していた。周辺の陸地でも捜索活動する様子がうかがえた。
「死体遺棄容疑の事実をはっきりさせるため、遺体をいつ、どこからどこまで、どのように運んだのか、証拠固めを優先しているとみられます。結希さんのご遺体は腐敗もあり、現時点では死因不詳のため、さらに詳しい死因究明も進めているはずです。その先には殺人容疑か傷害致死容疑での再逮捕を見据えているでしょう」(全国紙社会部記者)
行方不明のビラを捨てられず
優季容疑者と結希さんの母親が勤務する会社は、のどかなエリアにある。同社に勤務する友人を持つ女性によると、
「優季容疑者は報道で悪く言われているけれども、そうじゃない。仕事を教えてくれるとてもいい人」との声があるという。
一方で、こんな声も。
「結希さんの母方の祖母は、娘と優季容疑者の結婚に大反対でした。優季容疑者には妻子がおり、妻も同じ勤務先なのに不倫に走ったんです。人目をはばからず、一緒に昼食をとるなど公然といちゃついていたため、職場では結希さんの母親に“あんな、しょうもない男はやめとき”という人もいました。
母方の祖母は、娘が“どうしても”と言うので渋々結婚を認めたようですが、朝、起きてきても挨拶すらしない優季容疑者が自宅をウロウロしているのが気に入らなかったんです」(安達家の知人女性)
結希さんも、優季容疑者を「嫌い」と言っていたという。
もうすぐゴールデンウイークというのに、事件のショックは町全体を覆ったまま。捜索ビラはほとんど剥がされているが、そのビラを「捨てられらずにファイルに保管しています」(商店の女性店員)と見せてくれる人もいた。
結希さんの同級生の父親はこう話す。
「遺体が見つかったとき、息子はテレビのニュースを一緒に見ていて、“ユキじゃない!”“信用できへん!”って次々とチャンネルを替えては確かめ、見入っていました。次の日は“うーん”と何度もつぶやいていました。結希くんの死を受け入れるかどうか、子どもながらに葛藤していたんです」
犯行動機の解明や偽装工作の全貌など、まだ見えてこない事実がある。結希さんを無事に保護するため協力した住民らの傷が癒えるのにも、まだまだ時間を要するだろう。
悔しさや、やりきれなさを胸に、それぞれのペースで、ゆっくりと乗り越えていくしかないのかもしれない。悲しみの壁はあまりにも高い。
