『風、薫る』毎週月〜土曜、朝8時〜(NHK総合)ほか放送中

 とにかく波瀾万丈! 超・スピード展開から目が離せない『風、薫る』。一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)は看護婦養成所へ。いよいよ“トレインドナース”への道を歩み始める。

りんと直美が歩む看護の道はとんでもない逆風だった

 制作統括の松園武大さんに、知っていたら“へぇ”なトリビアから今後の見どころまで、教えてもらった。

ツボ1・レアなダブル主人公、かつバディもの

 ダブル主人公の“朝ドラ”は『だんだん』('08年、三倉茉奈・三倉佳奈)や『ふたりっ子』('96年、岩崎ひろみ・菊池麻衣子)、『おんなは度胸』('92年、泉ピン子・桜井幸子)、『京、ふたり』('90年、山本陽子さん・畠田理恵)、『青春家族』('89年、いしだあゆみさん・清水美砂)などが思い浮かぶが、いずれも家族関係だった。縁もゆかりもない女性がバディを組むのは非常に珍しいが?

「本作は大関和さんと鈴木雅さんのふたりをモチーフにしています。例えば、りんが主人公で、その親友として直美がいる形も考えられました。しかし、ふたりであることの意味合いはすごく大きい気がしたんです。あの困難な時代に、ひとりでは成し遂げられなくても、ふたりだから乗り越えられた何かはあったんじゃないか。抱えきれないものがあったとき、そっと差し出される手の温かさ、尊さ。そういったことを主軸にしたいと思ったので、おのずと女性ふたりの主人公になりました。幼少期を描かなかったのは、りんと直美が出会い、看護の世界に入ってからをしっかりと描きたいと考えたからです」(松園さん、以下同)

ツボ2・他人を看護することは、卑しいと見なされていた

 りんが暮らす那須の村でコロリ(コレラ)が流行した際、看病する下男に“お金のためによくやるわ”といった心ない言葉が投げかけられた。さらに、りんがトレインドナースになることを、母・美津(水野美紀)は大反対した。今の感覚では信じがたいが、当時、他人の看護をしてお金を得るのは卑しいことと見られていたよう。

「実際、大関和さんが牧師から“トレインドナースにならないか”と持ちかけられたとき、“当初は病人の世話をすることは卑しいと思っていた”と書き残しています。すぐには決心できず、何度か断ったそうです。でもその後、看護の道で生きていく決意をされた。そんな看護師の歴史自体、とても驚きましたし、意外でした。りんと直美が歩むのは、そんなとんでもない逆風の中なんです」

ツボ3・直美のお給金って、今のいくら?

 直美のマッチ工場での日給は4銭、コロリの看病をする下男は1日10銭、瑞穂屋で働くりんの月給は3円、トレインドナースになれば月に30円稼げるようになるかもしれない……。それって今だといくらなの? 調べてみると明治10年代、あんぱん1個は1銭程度。1円(=100銭)は、現代の2万円程度のよう。

「ただ、物の価値が違うので“現代だといくら”と言い切るのはなかなか難しいんです」。

 例えば、チョコレートが希少だった明治時代とコンビニで気軽に買える現代では、その価値&値付けが大きく異なる。ゆえに、一概には言えないそう。

ツボ4・大山捨松は実在する

《どうして看病する人たちが蔑まれなくてはいけないのですか? 私は、そんな私たちの社会を変えたいのです》と、りんと直美にトレインドナースになることを提案したのは“鹿鳴館の華”大山捨松(多部未華子)。歴史上、実在した人物で、会津藩の家老の娘。会津戦争後、明治4(1871)年に日本初の女子留学生として津田梅子らと渡米した。

史実では大関和さんとの接点は示す資料はないが…

「彼女は留学中、看護学校でも学んでいて。当時の日本にはいなかった、西洋看護学に触れて帰ってきた人なんです。彼女は看護の必要性をわかっていたからこそ、バザーなどで集めたお金を“有志共立東京病院看護婦教育所(現在の慈恵看護専門学校)”の設立資金として寄付しています。また、夫・大山巌(髙嶋政宏)は後に那須に牧場を拓き、別荘を建てます。史実では大関和さんとの接点を示す資料はありませんが、視察に来た大山夫妻とりんに接点があってもおかしくないと考え、(那須で)初対面するシーンを作りました」

ツボ5・清水卯三郎も実在する

 上京後、路頭に迷ったりんに救いの手を差し伸べたのは、“瑞穂屋”店主・清水卯三郎(坂東彌十郎)。オリジナルキャラかと思いきや、歴史上の実在人物だ。

“瑞穂屋”も実在したお店で、“丸善”のライバルだった

「菅原文太さんと加藤剛さん主演の大河ドラマ『獅子の時代』('80年)にも登場しているんですよ。演じたのは、児玉清さんでした。卯三郎は商人でありながら、福澤諭吉や西周など、当時の知識人たちが結成した“明六社”の一員でもあったようです」。

 1867年の“パリ万博”にも民間人として参加している。

「調べるほどに面白い人物で。“瑞穂屋”も実在したお店です。“丸善”のライバルだったといわれますが、店舗の写真は1枚も残っていません。時代に縛られず、その先を見る卯三郎のロマンが、りんたちに響いていくと面白いなと思ったので登場させています」

ツボ6・今後の見どころは?

 りんと直美は梅岡女学校付属看護婦養成所に入所。ふたりや玉田多江(生田絵梨花)など、第一期生は全7名。

「フレッシュでありながら、全員が個性的。そんな7人が時にぶつかり合い、時に手を携えながら、すごいグルーブを生んでいく……という感じですね。何より、彼女たちは四面楚歌。まだ医師も、看病婦も、患者も、患者の家族も、看護に対して理解がない中で、実習は始まっていくんです。簡単にいかないことばかりなんですが、仲間たちとともに歩くことで、ようやく道は拓けていく。その奮闘に注目してほしいですね」