木南晴夏

 モラハラ夫(中村俊介)に冷たく当たられている主婦(木南晴夏)が、夜のキッチンに現れたシェフ(高杉真宙)の幽霊(実際には死んでいないことが後に判明)と恋に落ちていく『今夜、秘密のキッチンで』(フジテレビ系)。

 そのあらすじだけ聞くと、一昔前のファンタジーみたいで敬遠してしまう人もいそうだが、一度見始めると予想以上にはまる人が多いようで、筆者(50代男性)もその一人だ。

『今夜、秘密のキッチンで』にハマる人が多い理由

2023年4月、夫婦そろって第1子の送迎をしていた木南晴夏と玉木宏

 その1つ目の理由は、本作のミステリアスな構造。

 序盤では料理研究家の瀧本美織が、中村や木南にやたら接近し、家の中を探ろうとしたり、怪しさ満点だったが、中盤で高杉の婚約者で、高杉の転落事故の真相を調べていたとわかり、一気に怪しさは薄れた。

 一方で、木南の親友でテレビ局記者の月城かなとは木南に親身に寄り添うように見せて、木南と別れた直後に誰かに報告の電話をしていたりと怪しい描写がある。単に記者としてスクープをあげたいだけなのかが気になる。

 もう一人の友人・佐津川愛美にいたっては、木南の夫・中村と不倫関係にあることが判明。

佐津川「あゆみって目の前のことに必死で周りの人の気持ちわからないとこあるからね」

中村「そうなんだよ。さすが舞ちゃん、よくわかってる」

 …って、どの口が言うという感じだ。

 3人でランチする友人の2人ともが自分を裏切っているのだから、木南の友人選びにもちょっと問題があるといえるかも…。

 そして何より怪しいのが中村。昏睡状態にある高杉のレシピノートを持っていたり、高杉の転落事故に関係がありそうだ。そして5話ではついに、中村の秘書・森優作が、病院のベッドにいる高杉のチューブを外そうとする描写も見られた。

 素直に考えれば中村が高杉を新規店舗のシェフから解雇して、レシピだけを奪うために、森に高杉を突き落とさせたということになりそうだが、レシピのためだけにそこまでするだろうか? 前半で事件の真相がそこまでわかってしまうとも思えないので、後半ではさらに驚愕の展開が待っているかもしれない。(例えば森がつながっているのは中村ではない…なんてことはあるだろうか?)

2つめの理由

 2つめの理由は、徐々に強くなっていく主人公・木南の反撃。最初は夫に「力強い煮干しのダシに繊細な白みそを合わせるなんて、本当にセンスがないな、君は」などと言われても、ただ夜のキッチンでアルコールに逃げることしかできなかった。

 それが、高杉との出会いできちんと自分の意見が言えるようになり、最近では何か嫌味をいわれても聞き流すようになっている。逆にモラハラ夫だった中村がうろたえて、夫婦2人での食事に誘って大量のバラをプレゼントしたり、木南のご機嫌を取るようになってきた。

 さらに不妊治療に非協力的だったのが、自分から「一応俺も検査しておいた方がいいと思ってさ」と言い出す始末。しかし木南はそれを断り、友人たちにはもう不妊治療はやめたいという発言している。中村は全く形無しだ。さらに愛人の佐津川に妻のことを「何か分かったらすぐに知らせてくれ」と頼むなど、不倫相手に対してもかなり格好悪い。この立場逆転が痛快だし、今後も中村の権威失墜ぶりは楽しめそうだ。

 そして3つ目の理由は木南と高杉の恋の行方。

 木南は自分を犠牲にしても、高杉に意識を取り戻して瀧本のもとに戻るようにと告げる。ただし高杉の意識が戻れば、木南との記憶はなくなってしまうかもしれない。

 この木南の決意が切ないし、木南と高杉が非常に好人物だけに、視聴者もふたりには幸せになってほしいと自然に願い、ヤキモキしてしまうのだ。

 第5話ではついに、高杉が意識を取り戻し、キッチンから姿を消す場面で終わった。第6話からは第2章が始まるが、果たして高杉は木南の記憶を忘れてしまっているのか? 

 意識が戻った高杉の口から語られる事件の真相とは?

 前半は食わず嫌いだった人も、ぜひ一度見てみてほしい。個人的には、もし高杉が木南を忘れていても、味の記憶が2人を結びつけるカギになりそうな気がするが……?

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。