朝ドラ「ヒロインのモデル」になってほしい女性は?(写真は共同通信)

2026年後期の朝ドラ『ブラッサム』は作家・宇野千代をモデルにした女性の物語で、『あんぱん』『ばけばけ』に続き、実在した人物がヒロインのモデルに。そこで「この人をフィーチャーした朝ドラを見たい!」と思える、歴史に名を残した女性についてアンケートをとったところ、1位は誰もが名前を知る歌姫に!

 小泉八雲の妻・セツをモデルにした『ばけばけ』に、日本初の職業看護師・大関和と鈴木雅がモデルの『風、薫る』、作家・宇野千代をモデルに描く次の朝ドラ『ブラッサム』と、3作続けて実在の女性が朝ドラヒロインのモデルに。

「本来、朝ドラはオリジナルストーリーが基本でしたが、近年はモデルのいるヒロインが増えてきた。オリジナル脚本は視聴者がどこに連れていかれるのだろうと不安に思うことが多々あるけれど、史実に基づいたモデルありきの朝ドラは安心ですよね。これからもヒロインにモデルを据えることが多くなるのでは」

 と話すのは、漫画家でテレビウォッチャーのカトリーヌあやこさん。そこで、「この女性がモデルの朝ドラを見てみたい」人物をアンケート。上位5位を発表しよう。

情熱的でドラマチックな人生を送った女性

 5位は与謝野晶子(歌人・作家)。

「波瀾万丈なイメージ」(愛知県・65歳・女性)、「有名だけど実はそんなに知らないので」(埼玉県・50歳・女性)、「情熱的な人生が魅力的だから」(奈良県・42歳・女性)との回答が寄せられランクイン。

「非常に情熱的でドラマチックな人生。自作の詩を鉄幹にバンバン送ってアタックして、歌人の山川登美子さん(20位)と争うなど、とても気性の激しい女性だった。朝ドラらしからぬエピソードが見られそう」(カトリーヌさん、以下同)

 明治から昭和初期に活躍した歌人で、代表作に『みだれ髪』『君死にたまふことなかれ』。歌人・与謝野鉄幹との不倫・略奪婚でも知られる。

「『君死にたまふことなかれ』は日露戦争に弟さんが出征するときに書いた詩で、今の時代だからこそ、再び注目される作品だと思う。そういう意味では、令和でも受け入れられるドラマになりそうです」

 3位は同数で2人がランクイン。1人目は荻野吟子(日本で初めての女性医師)。

「女性初ということで、偏見や困難があったと思うのでそのあたりの葛藤を見てみたい」(東京都・61歳・女性)、「どんなきっかけで医師を目指そうと思ったのか、どのように医療と向き合ったのか、いろいろなことを知りたい」(愛知県・60歳・女性)、「男尊女卑の時代にどのように女性が医師として奮闘したのか見てみたい」(大阪府・48歳・女性)と、トップ3に。

「夫から性病をうつされ、男性医師に下半身をさらすつらさ、恥ずかしさから医学部を目指す。きっと差別を受けたりもしたでしょう。そういう意味では、『虎に翼』の医師版といった感じ」とカトリーヌさん。

 日本で初の女性医師となったパイオニア。時は明治時代で、数々の苦難が予想される。

「彼女は40歳のときに16歳年下の学生と再婚し、キリスト教の理想の国をつくろうと2人で北海道へ移住する。なかなか波瀾万丈な人生でした。まだあまり知られていない方でもあり、朝ドラでじっくり見てみたい」

人気集めるも思わぬハードル

 同数3位は金子みすゞ(童謡詩人)。

金子みすゞは夫に淋病をうつされ、離婚による娘の親権争いと苦労の末、服毒自殺でこの世を去った (写真は共同通信)

「作品が大好きだから」(京都府・61歳・女性)、「詩がどのようにして生まれたのか知りたい」(兵庫県・47歳・女性)、「“みんな違ってみんないい”という詩が好きだから」(愛知県・59歳・女性)、「学校の授業でも取り上げられている人だから」(秋田県・42歳・女性)と、作品を支持するコメントが目立った。

「若くして童謡詩人会に参加していて、島崎藤村や泉鏡花など、名だたる文豪がそこに勢ぞろいしていた。みすゞさんの弟が文藝春秋の編集者で、後に劇団若草を創設したりと、周囲のキャラクターも濃く面白そう」

『私と小鳥と鈴と』で知られる詩人で、教科書に作品が掲載されるなど知名度も高い。ドラマや映画など映像化もされてきたが、朝ドラで取り上げるには大きなハードルが。

「夫がひどい男で、離婚後もつきまとわれた末に、みすゞさんは26歳で自殺してしまう。若くして亡くなり、しかも自害となると、やはり朝ドラのヒロインにするには厳しいかも……」

 2位は津田梅子(日本の女子教育の先駆者、津田塾大学創設者)。

「女性が自立する姿が素敵」(大阪府・61歳・女性)、「女性でも大学へ行けるよう尽くしてくれて感謝している」(北海道・58歳・女性)と、女性からの支持が多く集まった。

「幕末から明治にかけて、日本が国際化していく時代の中で、女子教育がどう描かれるかすごく興味深いところ」とカトリーヌさん。

 6歳のとき岩倉使節団と共にアメリカへ留学し、津田塾大学を創設した日本の女子教育の先駆者。2024年発行の五千円札の肖像画としてもおなじみに。

「梅子さんの人生と切り離せないのが、大山捨松さん(12位)。アメリカへ共に留学し、大学を設立するときも捨松さんが奔走しました。梅子さんは独身を貫き一生を学校教育に捧げ、一方、捨松さんは敵だった男性と運命の恋に落ちる。2人の対比も面白く、Wヒロインにしてもよさそう」

1位は日本を代表する昭和の歌姫

 1位は美空ひばり(歌手)。

「歌声が好きなのでその一生を知りたい」(千葉県・56歳・女性)、「昭和の歌姫が歩んできた人生を見てみたい」(広島県・49歳・男性)、「波乱に満ちていたので興味がある」(東京都・59歳・女性)、「いまだに歌がうまい歌手として上位に挙がるほど知名度が高いから」(神奈川県・57歳・女性)と、118票を集めダントツのトップに。

9歳でデビュー後、晩年まで活躍し続けた歌謡界の女王・美空ひばり(写真は共同通信)

「焼け跡の中で、少女が『悲しき口笛』を歌う。ひばりさんのデビュー当時の戦後の時代背景が朝ドラにぴったりで、印象的なシーンになると思う。ステージママで厳しかったお母さんの存在も物語を彩りそう。ひばりさん役を誰がやるのか、そして結婚相手の小林旭さん役は誰になるのか、いろいろ話題になるはず」とカトリーヌさん。

 9歳でデビューし、昭和の歌姫として絶大な人気を博した。1989年に52歳で激動の生涯を閉じてなお、慕い続けるファンは多い。

「懸念されるのは、反社との関わり。身内の人間が反社関係の不祥事を起こし、ひばりさんが紅白辞退に追い込まれたことがあって、そこをどうクリアするか。それらも含めて、隅から隅までエピソード満載な人生。

 朝ドラってヒロインが夢を成し遂げるまでがピークだけれど、ひばりさんの場合は晩年まですべてが劇的。病気を経て不死鳥のごとく蘇り、東京ドームで復帰公演を開き、光の中を1歩1歩ステージに向かう後ろ姿で最終回を迎える─と、結末まで目に浮かぶよう」

 これまでも数々の女性たちが朝ドラのヒロインに描かれてきたが、実際のところ、モデルはどうやって選んでいるのだろう。ヒロインに取り上げられがちなモデルの傾向はというと? 

「『ばけばけ』の脚本家が、3人くらいモデル候補を挙げられて、その中から小泉セツさんを選んだと言っていました。なので常に候補を用意しているのだと思う。モデルで多いのはまず著名人の妻で、『ばけばけ』『ゲゲゲの女房』『あんぱん』などがそう。著名人の母親も多く、黒柳徹子さんの母がモデルの『チョッちゃん』、吉行淳之介さんの母を描いた『あぐり』がありました。

 次に多いのは作家や詩人で、林芙美子さん(『うず潮』)、田辺聖子さん(『芋たこなんきん』)もモデルに。あと、日本初のナースや法律家など、日本で初めて何かを成し遂げた女性も取り上げられやすい。いろいろな職業の女性がモデルになっているので、またこの先どんな人が出てくるか楽しみです」

 さて、次なる朝ドラヒロインのモデルは誰に?

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など