フジテレビの人気アナウンサーを経て、フリーアナウンサーに。フランス人実業家の夫と知り合い結婚。生活の拠点をパリに移したことで知られる中村さん。さぞ幸せで優雅な日々を送っているのだろう―と思いきや、日本以上の苦労もあったと語る。慌ただしい帰国中に、四半世紀を超える海外生活と、ご夫婦の日々について聞いた。
仲良しの秘訣は彼の忘れっぽさ?
元フジテレビアナウンサーで、現在はフランスで暮らすフリーアナウンサー・タレントの中村江里子さん。57歳になった現在もファンが多く、インスタグラムのフォロワー数は約28万人。
YouTubeの配信も人気だ。4月に新刊『366日 日々を楽しむフランスの暮らし─“いつも”のなかに見つけた幸せの記録』(すばる舎)が発売となったが、こちらには華やかなだけではない、フランス暮らしの日常が綴られている。
フランス人の夫、シャルル・エドワード・バルト氏と結婚して25年。仲むつまじい姿がメディアで時折、紹介されているが、難しいといわれる国際結婚で円満の秘訣はどこにあるのだろうか。
「お互い言いたいことを言うのでケンカもすごくします。でもフランス語だと私の語彙力が限られていて、相手にパンチを与える言葉をなかなか使えないんです(笑)。それに彼は忘れっぽくて、激しく言い合っても、次の瞬間には何もなかったかのように普通に接してきます。
そうなると私だけがいつまでもプンプン怒っているのがバカらしくなってしまって。とにかくどんなことでもよく話し合って、お互いを理解してきた25年ですね」(中村さん、以下同)
フランスでは夫婦間で収入の割合に応じて生活費を負担するのが一般的で、中村も“割り勘”からスタートしたという。
「妻がお金を管理して、夫に小遣いを渡すというスタイルが日本で多いことに夫は驚いていました。フランスでは家賃と光熱費は夫、食費と被服費は妻というように、費目ごとに支払いを分けているカップルも多いです」
夫が料理を作ってくれることも多いが、国際結婚に限らない不満も……。
「私が料理をするときはなるべく後片づけがラクなよう、調理器具は最小限にしますが、夫はやたらといろんな道具を使うんです。凝った料理を作ってくれるのはうれしいのですが、後片づけはしないので、結局、私が大量の洗い物をすることに……。
これには日仏共に共感してくれる友人が多くいて、男性全般に当てはまることなのでしょうか」
3人の子どもたちも成長し、長女は大学を卒業し日本へ、長男はアメリカで大学生、次女は高校生になった。最近は夫婦2人だけの時間も増えてきたところだ。
「結婚前のように2人で同じ本を読んで、その感想を話し合う時間をまた持とうと夫と話しています。すでに2人で読むためのミステリー小説を20冊購入。お酒を飲みながらああだこうだ言いながら楽しむ時間になりそうです」
以前、テレビ番組『オーラの泉』(テレビ朝日系)でスピリチュアルカウンセラーの江原啓之氏から「前世は夫婦ではなく姉弟だった」と言われたこともある。夫婦の絆の強さがうかがえるエピソードだが、夫は姉弟説に激怒したとか。
人前で財布を見せるのもダメ
「私のほうが2歳上で、家の中で私の姿がちょっとでも見えないと『エリコ~』と捜し始めるので、姉弟説に『なるほど』と思いました。でも夫は『姉弟なんてロマンチックじゃない!』と怒っていましたね(笑)」
9月には結婚25周年を記念し、「再々結婚式」も予定しているという。
「2011年の結婚10周年のときには“再結婚式”をしました。同じ教会、同じパーティー会場、同じタキシード、同じドレスで、子どもたちにも立ち会ってもらったんです。
最初の結婚式は余裕がなかったですが、再結婚式はリラックスして、ゲストのみなさんとも楽しめました。3回目はさらに楽しめるのではないかと今からワクワクしています」
現在は夫の仕事の関係から1年限定でイタリア・ミラノに滞在しているが、隣国でありながらイタリアとフランスの違いを実感している。
「ジャン・コクトーの“イタリア人は、ご機嫌なときのフランス人だ”という言葉そのものです。イタリアの方はみなさん明るいし、本当に優しい。言葉が通じなくても、一生懸命話していると最後まで根気強く付き合ってくれるんです。フランスだと相手がうまく話せないと不満そうなしぐさをされるので、昔は落ち込むこともありました」
一方、イタリアもフランスもスリや置き引きが多いのは変わらない。
「例えば電車の中でスマホを見ているとスッと上から取られたりするので、スマホは出しません。スリが目を光らせているので、人前で財布を見せるのもダメ。以前は長財布を使っていましたが、今はカードとお札だけをまとめるコンパクトな財布を愛用し、防犯対策にもなっています。
高い腕時計をしていると、暴行されて盗まれることもあるので、知り合いが観光に来るという際にはそういった危険性を事前に伝えたりしていますね」
また巧妙な詐欺が多いのは日本もフランスも同じだ。中村さんも、すでに2回も詐欺に遭ってしまったという。
食品用ラップでも国民性の違いを感じる
「アメリカの入国許可(ESTA)を申請しようとした際、検索結果のトップに表示された偽サイトに、疑いもなくカード情報を入力してしまって……。
このときは幸い銀行側がカードをブロックしてくれましたが、荷物を受け取る関税のサイトでは、偽サイトに支払いをしてしまったんです。サイトで支払いをするときは大丈夫かどうか、ネットに強い子どもたちの世代に聞かなければと痛感しました」
フランスでは荷物が行方知れずになって届かないことも多く、日本のようなクール便、宅配ボックスといったきめ細かなサービスもない。
5月にネットで頼んだ商品が9月に届いたこともあったという。そのため日本に戻った際は、必要なものはできるだけスーツケースに入れてフランスに持ち帰るが、食品用ラップもそのひとつだ。
「日本のラップなら1枚でピタッと留まるけれど、フランス製は何重にもぐるぐる巻きにしないとしっかり密着しないんです。それでも改良されないのは、フランス人はそれを不便だとは思っていないからなのでしょう。こんなところにも国民性の違いを感じます」
歯磨き粉も、日本製が愛用品だ。
「フランスの歯磨き粉はミントの刺激が強く、使用した後にコーヒーを飲むと味が変わるほど。私のお気に入りは『クリーンデンタル』で、今では家族全員が気に入って使っています。ドラッグストアでは綿棒や使い捨てカイロも忘れずに買って帰ります」
食品では、「一保堂茶舗」のほうじ茶、味付け海苔、「ヨックモック」の「シガール」、「銀座 松崎煎餅」の「江戸草加 海苔巻」、「虎屋」の羊羹、歌舞伎揚げ、キットカット、甘めの梅干し、乾麺の細うどんなども必需品だ。フランスはブイヨンの国だが、料理に欠かせないのは「茅乃舎」の「野菜だし」だという。
「パックになっていて便利ですし、茅乃舎だしはラタトゥイユやグラタン、ポタージュを作るときに味の決め手になるんです」
最新刊には、こういった27年にわたるフランス生活の飾り気のない日常が、綴られている。
「パリのキラキラした部分だけでなく、ゴミ出しの苦労や学校の煩雑な手続きといった、日々の暮らしが詰まった本です。これまでエアコンいらずだったパリの夏が、地球温暖化の影響でエアコン必須になるなど、変わっていくパリもご紹介しています。
みなさんが日常生活を楽しむヒントになったり、パリを旅する際にこの本がお役に立てるとうれしいです」
取材・文/紀和 静
なかむら・えりこ 1969年3月11日生まれ。立教大学経済学部卒業後、1991年にフジテレビに入社しアナウンサーに。1999年に退社し、フリーとなる。2001年にフランス人実業家のシャルル・エドワード・バルト氏と結婚。生活の拠点をパリに移す。3児の母。現在はパリと東京を行き来しながら、テレビや雑誌、講演会、イベント、執筆などの仕事を続ける。ライフスタイルを発信するインスタグラムやYouTube「中村江里子のフランス暮らし」も人気。
