※写真はイメージです

「拭く」は「福」。そんな語呂合わせから生まれた“拭く活”を提唱し、SNSで共感を呼んでいるのが整理収納アドバイザーのヤスキチさんだ。日々の掃除をもっと気軽に、もっと前向きなものへ─その発想が、多くの人の心をつかんでいる。

拭くだけで整う“拭く活”の力

「ふきんを手に取り、ただ拭く。それだけで暮らし方が変わりました」

 そう語るヤスキチさんのメソッドはシンプルだ。特別な洗剤も道具もいらない。必要なのは水とふきんだけ。「毎日5分でいいんです。短い時間でも、空間はきちんとリセットできます」という言葉どおり、ポイントは「汚れをためないこと」にある。

 例えば今日はテーブル、明日は洗面台、と場所を区切り、汚れが目立たないうちに整えていく。その積み重ねが、結果として大がかりな掃除の負担をぐっと減らしてくれる。

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 この習慣を無理なく続けるコツは、「ついで」に取り入れることだ。朝、顔を洗った流れで洗面台をひと拭きし、キッチンに立てばカウンターをさっとなぞる。移動の途中で目に入った場所に手を伸ばす─そんな小さな「ついで」の動作を重ねるうちに、拭くことは特別な家事ではなく、日常の延長にある動きへと変わっていく。

「全部を一度にやろうとすると続きません。目についたところを、その都度整える。継続こそが大切なんです」(ヤスキチさん、以下同)

 仕上がりを左右する、水拭きの基本も押さえておきたい。ふきんは固く絞りすぎず、手のひらで押したときに軽く湿り気を感じるくらいが理想だ。水分が多すぎれば汚れは広がり、少なすぎればうまく拭き取れない。

 拭き方もゴシゴシこするのではなく、ふきんの面を使ってやさしくなでるように動かすのがコツ。一方向に滑らせながら汚れを集め、「上から下へ」「奥から手前へ」と流れを意識すれば、短時間でも無駄なく掃除できる。

拭きやすい環境をつくることが大切

 こうして整えた空間は、見た目以上の変化をもたらす。ホコリや皮脂汚れが取り除かれることで空間が軽やかに感じられ、特に湿気の多い時季には床や家具のベタつきも和らぐ。視界のすっきり感だけでなく、体感としての心地よさまで変わってくるんです、とヤスキチさん。

 手を動かし続けるうちに思考のざわめきが静まり、頭の中のノイズが薄れていく。考えすぎていたことから離れられて、「まあいいか」と思える瞬間が増えたという。掃除でありながら、気持ちを切り替える時間にもなっているという。

「『今日も拭けた』という小さな達成感が積み重なっていくのも気分よくて。短時間でも“できた”という実感が得られ、それが自己肯定感を支え、日常の行動も前向きになる気がするんです。めんどくさいな、と思っていた家事が、やると気分が整う習慣に変わっていく。それが“拭く活”の大きなメリットですね」

床や裏側まで拭きやすいかを考え、家具は移動しやすいものを選んでいる

 こうした流れを後押しするのが、「すぐできる状態」をつくる工夫だ。ふきんは手に取りやすい場所に置き、しまい込まない。動線もシンプルに整え、洗面所からキッチン、リビングへと、ひと筆書きのように移動しながら拭いていく。この「考えなくても身体が動く流れ」ができると、習慣は、より自然に定着していく。

 そして何より大きいのが、「拭きやすさ」を意識することで暮らしそのものが変わっていく点だ。

「拭きやすくしたいと思うようになってから、自然と物を置かなくなりました」

 床やテーブルに余計なものがなければ、さっと拭ける。その快適さが、出しっぱなしを減らし、不要なストックを見直すきっかけになる。拭くたびに「これは必要か」と考えることで、持ち物の選び方まで少しずつ変わっていく。結果として物は減り、空間に余裕が生まれ、視界だけでなく思考もすっきりと整っていくという。

「たかが水拭き、されど水拭き。小さな習慣ではありますが暮らしの質を底上げしていく力があります。さっそく今日から、そして目の前の1か所からスタートしてみませんか」

洗面所の場合

 不要品は手放し、使うものとストック品を別々に

「サニタリーは小物が多く、よく使うものとストック品が混在しやすい場所です。いつか使うかもととってある、使いかけの化粧水やヘアケア用品などは、結局古くなり処分することがほとんど。拭きやすい場所にするためには、まずは不要品を処分することが大切です。その後で、物を用途で分類し、置き場所を決めます。また、わが家の場合、浴室で身体を拭いているので、足拭きマットを敷くことをやめたんです。なので床も拭きやすくなりました。こうして必要なものは何かを選別するようになりましたね」

(1)使い捨てシートで洗面ボウルを洗った後、いつもの「びわこふきん」で洗面台を拭くことから始める

(1)使い捨てシートで洗面ボウルを洗った後、いつもの「びわこふきん」で洗面台を拭くことから始める

(2)洗面台を拭きやすいように、歯ブラシは吸盤でくっつくタイプのホルダーに入れて、浮かせる収納に

(2)洗面台を拭きやすいように、歯ブラシは吸盤でくっつくタイプのホルダーに入れて、浮かせる収納に

(3)オープン棚の中は、着替えや洗い物などが入っているバスケットを引き出して拭く

(3)オープン棚の中は、着替えや洗い物などが入っているバスケットを引き出して拭く

台所の場合

 小物はトレイでひとまとめにして動かせるように

「冷蔵庫の上は、つい物を置きたくなりますが、拭きやすさのために、そこはグッと我慢してスペースを空けるのが清潔さをキープするポイント。キッチンカウンターなどには、毎日使うものだけを厳選して置いています。棚には食品などをバスケットやトレイでひとまとめに。引き出すだけで、簡単に拭くことができる。さらに、拭いている途中、引き戸の上枠など、ホコリがたまりそうな箇所が目に留まればサッと拭きます」

(1)キッチンにある冷蔵庫の上を拭く。手あかがつく手前の扉部分もさっとひと拭き

(1)キッチンにある冷蔵庫の上を拭く。手あかがつく手前の扉部分もさっとひと拭き

(2)サニタリーとキッチンの境にある引き戸の上やサイドもついでに拭く。考えずに目に留まったところを

(2)サニタリーとキッチンの境にある引き戸の上やサイドもついでに拭く。考えずに目に留まったところを

(3)冷蔵庫の横にはよく使う小物やカレンダーを引っかけて収納

(3)冷蔵庫の横にはよく使う小物やカレンダーを引っかけて収納

(4)隙間に押し込むような収納をするのではなく、物の周りに余裕をもって入れる

(4)隙間に押し込むような収納をするのではなく、物の周りに余裕をもって入れる

(5)朝食用のグラノーラやコーヒーの道具などはトレイにまとめて動かしやすく

(5)朝食用のグラノーラやコーヒーの道具などはトレイにまとめて動かしやすく
教えてくれたのは…ヤスキチさん 整理収納アドバイザー。暮らしを整えて穏やかに“拭く=福”と捉える拭く活(福活)を提案。モノが多い暮らしから自分にとってちょうどよく心地いい暮らしを目指す。
福を呼ぶ拭き掃除 拭く活』(主婦と生活社) ※画像をクリックすると、Amazonの購入ページにジャンプします。

撮影/亀山ののこ