2026年10月から、JR千葉駅東口エリアの路上喫煙禁止区域が拡大される。このエリア内では巡視員が巡回し、違反の場合は2000円の過料が徴収されている。昨今、全国的に強化の流れにある屋内外での喫煙規制。これは非喫煙者にとっても決して“他人事”ではなく、喫煙者が「吸う場所」をどう確保するかは、さまざまな面において新たな課題として浮上している――。
「喫煙者の行き場がない」千葉市の現状
健康増進法の改正以降、飲食店や公共施設での“禁煙化”が加速する一方、屋外では路上喫煙の禁止や過料導入が相次ぎ、喫煙行動は年々可視化されにくい場所へと追いやられてきた。
「4月22日、政策研究シンクタンクとして行政課題や社会課題に関する独自調査・分析を行う『プランワークス政策研究所』は、千葉市、さいたま市、福岡市内における喫煙所整備関連のレポートを発表しました。これは、それぞれの喫煙環境を踏まえ、人流データを基に必要数を試算したもの。その結果、千葉市には143か所、さいたま市には211か所、福岡市には282か所の喫煙所が必要とされています。また、路上喫煙禁止指定区域に設定されているエリア内については、千葉市の場合は38か所、さいたま市では81か所、福岡市では54か所が必要とのデータが上がっています」(全国紙社会部記者)
いずれの市も、現状で整備されている喫煙所数は、当該レポートで示された必要数を大幅に下回っている。既に導入されている規制状況を鑑みても、喫煙環境が十分に整っているとは言い難い結果となった。
「福岡市では、環境整備の一環として、博多駅周辺や天神・大名といった都心部の路上喫煙地区に公園を追加するなど、一帯の規制を強化する条例改正案の原案が、主要会派にてまとめられたことが分かっています。議会として、喫煙所の整備に必要な措置を講じるよう求めていく考えもあることから、民間のレポートで示された喫煙所の必要数は、一定の指標となることでしょう」(同・社会部記者)
一方、特に規制と環境整備のバランスが問われているのが、千葉市だ。条例による厳格な受動喫煙対策や路上喫煙規制を先行して進めてきた同市では、ルールの浸透と引き換えに、駅前や繁華街で「喫煙者の行き場がない」という声が目立つようになっている。
発生する“路上喫煙”問題
「『プランワークス政策研究所』のレポートにおいて、中央区に49か所、美浜区に38か所、稲毛区に24か所など、市内合計で143カ所の喫煙所が必要と推計されている千葉市。『路上喫煙等・ポイ捨て取締り地区』に限っても、38か所の喫煙所が必要とされていますが、実際に市が管理する公衆喫煙所は、海浜幕張駅前の1か所のみにとどまっています。
10月からはJR千葉駅東口の取締り区域が富士見地区などへ拡大する方針となっていますが、繁華街として知られる同地区では、夜間を中心に飲食店利用者や店舗スタッフの喫煙需要が高く、飲食店関係者などから懸念の声が上がっています」(前出・社会部記者)
喫煙所の不足により発生するのが、“路上喫煙”問題だ。もちろん、マナーを守った喫煙が求められるのは前提のことだが……。
「規制だけ強化して吸える場所が増えないままじゃ、人目に隠れて吸う人が出てきても強く文句を言えない」(千葉市に住む40代男性)
「喫煙所がずっとないままで路上喫煙が横行すると、ポイ捨てにも繋がるから非喫煙者も困っている」(千葉駅周辺の会社に勤務する30代女性)
『プランワークス』による調査では、路上喫煙や吸い殻のポイ捨てが美観を損ねるだけでなく、火災リスクを高める要因にもなっている点が指摘されている。実際、全国ではたばこのポイ捨てを原因とした火災も発生しており、「わずかな不始末が大きな事故につながりかねない」と警鐘を鳴らす。
もちろん、規制を評価する声もある。千葉市で子ども2人と暮らす30代の主婦は、「街中で歩きたばこをしている人は以前より減ったと思う。紙たばこを持ったまま歩く人は、子どもと歩いていると本当に怖いから、規制の流れは嬉しい」と話す。しかし、一方で「吸う人の居場所も確保してしっかり“分煙”してくれないと、結局吸ってしまう人はいるし、完全な解決にはならないと思う」とも漏らす。
喫煙所の設置は「検討していない」
「レポートでは、路上喫煙防止と分煙対策を“二本柱”で進めるべきだと指摘されています。禁止や罰則だけを強化したところで、人目につきづらい路地裏やコインパーキングなどでの喫煙やポイ捨てが増え、かえって景観の悪化や火災リスクを高める恐れがある。東京都内や他の政令指定都市では、民間も含めた喫煙所整備に対し、設置費用や維持費を補助する制度を設ける例もあります。例えば東京都千代田区は、区内全域が路上喫煙禁止ですが、設置経費と維持管理経費を助成しており、公衆喫煙所を77か所用意しています」
千葉市においても、鉄道事業者や商業施設、飲食店組合などとの官民連携による整備が求められているのではないだろうか。
しかし、千葉駅周辺の元の禁止エリアにおいても、拡大するエリアにおいても市が新たに喫煙所を設置するという報道はない。2ページ目でも述べたがそもそも千葉市が設置する喫煙所は、海浜幕張駅前の1か所のみ。この海浜幕張駅前の喫煙所は路上喫煙・ポイ捨て防止効果の実証事業が行われており、「設置前後を比較すると、設置後は平均過料件数、平均散乱ごみ数及び路上喫煙率の減少が見られ、喫煙所の設置が違反行為の防止に一定の効果をもたらしたと考えられる」という結果が出ているのだが…。
およそ4か月後に迫った、千葉市の路上喫煙禁止区域拡大。自治体は、喫煙所不足問題をどう捉えているのか。規制に関する施策の担当部署である環境局資源循環部廃棄物対策課に問い合わせたところ、以下の回答があった。
――路上喫煙禁止区域の拡大にあたって、喫煙所整備は検討している?
「現状、新たな喫煙所の設置は検討しておりません」
――喫煙所の不足問題において、喫煙者が人目につきづらい路地裏などで喫煙、ポイ捨てをすることが増え、景観悪化や火災リスクを高める恐れも指摘されているが?
「禁止区域の設定や巡視活動など市が実施する路上喫煙の防止対策に加え、民間商業施設などが設置している喫煙所の利用や携帯灰皿の持参など、喫煙者のマナー向上が重要だと考えております」
喫煙所の数を増やすことは現状、想定されておらず、さまざまなリスクに関しては“喫煙者のマナー向上”を呼びかける姿勢だ。
市民の生活に直結する、喫煙所問題。千葉市に関わらず、たばこ規制ではルールとともに「守れる環境」を整えることも自治体に求められている。果たして、今後の千葉の街づくりは――。
