「長嶋茂雄賞」の最右翼?佐藤輝明と坂本勇人

 日本野球機構(NPB)、読売新聞社、日本テレビ放送網により昨年11月に創設が発表された「長嶋茂雄賞」。今季から導入される同賞の初代受賞レースを巡り、グラウンド外での“前哨戦”がすでに白熱している。異なる輝きを放つ「2人のスター」のどちらを評価すべきか、ファンの間でも様々な議論が巻き起こっているようで……。

 ソフトバンクが5月23日に「FUKUOKA OH SADAHARU LEGACY PROJECT」の一環として「福岡王貞治レガシー賞」の創設を発表した。この新賞は、王貞治球団会長がダイエーの監督に就任して以降、ホークスや福岡に多大な功績を残した選手、指導者、スタッフらを顕彰し、次世代へ継承していく目的で設立され、第1回受賞者は2027年に発表される予定だ。会見で王会長が「残りの少ない人生を、大いに胸を膨らませまして、野球とともに歩んでいきたいと思います」と語った姿は、球界のレジェンドの功績を称える賞への関心を一層高めることとなった。

 そんななか、このニュースに対し、ネット上では《タイミング的に長嶋茂雄賞が今年から新設されたから、それに対抗してなのかな?》との声も聞かれる。

「シーズンはまだ序盤が終わったところですが、図らずも、レガシー賞の誕生によって新賞へのスポットライトが強まる格好となりました。『公式戦やポストシーズンにおいて文化的公共財としての価値向上に貢献した野手を選出する』という長嶋茂雄賞の選考基準については、選考委員である王氏や岡田彰布氏らがどのような判断を下すのか、その具体像はまだ見えてきません」(スポーツ紙デスク)

成績では“三冠王”佐藤は文句なし

 現在セ・リーグの打撃部門を独占しているのは阪神の佐藤輝明だ。打率.381、12本塁打、37打点の「三冠」ほか、安打数や出塁率、得点圏打率でもリーグトップを走っており、交流戦を前にパ・リーグのファンからは《足もある三冠王とかおかしすぎる》《対戦怖すぎる》と恐怖を抱かれるほどぶっちぎりの成績を残している。

「成績を見れば、佐藤しか見当たらない。ライバルの阪神の『四番サード』が初代受賞者になるというストーリーも熱いですね」(同前)

 しかし、同賞の選考基準が最優秀選手(MVP)とは異なり「ファンを魅了した」という抽象的な要素を含んでいることが、議論を複雑にしている。

大谷翔平が長嶋茂雄さんとのツーショットを投稿。2025年6月3日、長嶋さん死去の知らせを受けて(公式インスタグラムより)

「新設された長嶋茂雄賞は、単に成績の数字だけで決まるMVPやベストナインとは異なり、観客をどれだけ沸かせたかというスター性や記憶に残るプレーが重視される仕組みになっています。選考の基準に『ファンを魅了した』という項目がある以上、数字の上で佐藤が圧倒的であっても、他の選手が選ばれる余地が残されているというわけです」(スポーツ紙記者)

 この選考基準の隙間に浮上しているのが巨人の坂本勇人だ。5月13日に福井で行われた広島戦の延長12回、1点を追う場面で左越えに逆転サヨナラ3ランを放ち、史上48人目の通算300本塁打を達成した。巨人の生え抜きの右打者としては長嶋茂雄、原辰徳に次ぐ3人目の快挙であり、この劇的な一発に対して《坂本は長嶋茂雄賞初代受賞者最有力候補だろうな》《長嶋茂雄賞に相応しい》といった声がネット上で沸き上がった。

 しかし、佐藤の圧倒的な成績と比較して坂本を推す動きには、《もし坂本が長嶋茂雄賞取るようなことあったら、どうでもいいクソ賞になり下がる》《長嶋茂雄賞なんてマジでどうでもいい。なんの権威もない賞やし、坂本でいいよ。どうぞどうぞ》と不快感を示すファンも少なくない。

巨人の“生え抜き”スターこそ

「不振に苦しむ坂本が放った延長12回の逆転サヨナラ弾は、今シーズンのプロ野球における前半戦最大のハイライトだったのは間違いありません。巨人の功労者であり、長嶋さんの記録を追いかける生え抜きのスターが記念の300号をあの場面で打ったというドラマ性は、まさに賞の趣旨に合致しています。安打数でも長嶋さんの記録に残り16本と迫っており、こちらも抜き去れば大きな話題を呼びそう。しかし、三冠王にひた走るサトテルを差し置いて、打撃成績で圧倒的に劣る坂本が選出された場合、賞そのものの公平性や権威が疑われる事態にもなりかねません」(同前)

 他にも、5月20日の中日戦で0対7からの猛追激でサヨナラ弾を放った阪神・森下翔太も候補の一人。

「野球で最も面白いとされる8対7のスコアに代表されるような、劇的なシーソーゲームを指すルーズベルトゲーム。その展開のなかで大逆転の一発を放った森下も十分にファンを魅了したと言えます」(前出・スポーツ紙デスク)

 日本シリーズ終了後に開催される選考委員会で、記念すべき第1回の受賞者に誰が選ばれるのか、その結果が賞の格付けを左右することになりそうだ。