“ステロイド五輪”の異名を持つ新スポーツ大会『Enhanced Games(エンハンスト・ゲームズ)』が、5月23日(日本時間24日)にアメリカのラスベガスで開幕。その“常識破壊”すぎる競技内容と結果に、世界中で賛否が巻き起こっている。
2億円にも及ぶ賞金
「大会の特徴は、通常の国際大会では禁止されているドーピング行為を全面的に容認している点です。選手たちはテストステロンや成長ホルモンなどの使用を“医師管理下”で認められた状態で競技に参加。“人類の限界突破”を掲げ、競泳、陸上、重量挙げなどが行われました。競泳男子50メートル自由形ではギリシャのクリスチャン・ゴロメエフ選手がさっそく世界新記録を樹立。公式に認められていない全身を覆う“高速水着”を着用し、従来の世界記録である20秒88を0.07秒上回る20秒81のタイムを打ち出しました」(スポーツ紙記者)
ゴロメエフ選手は、過去に2024年のパリ五輪で5位、2019年の世界選手権では銀メダルを獲得するなど、もともと世界トップクラスの実力者。それだけに自己ベストを大幅に更新した今回の記録は、ドーピング効果が数値として表れた“象徴的なケース”となった。
さらに世間を驚かせたのが、その破格すぎる賞金制度だった。各種目の優勝者には25万ドル(約4000万円)の賞金が支給され、世界記録を更新した選手にはなんと100万ドル(約1億6000万円)のボーナスが用意されたという。
だが、SNSではこの大会に対して「命と引き換えの記録。ナチュラルの方が身のためです」「スポーツマンシップからは大きく外れた大会ということですね」「五輪王者は好きになれないだろうな」「こち亀連載してたら絶対ネタにしてたやろなぁ」など、懐疑的な声が多く寄せられている。
“命を削って記録を競う”構図
こうした声が寄せられる背景を、ドーピング問題に詳しいスポーツジャーナリストが指摘する。
「トップアスリートにとって“世界記録”は人生を変える価値があります。そこへ数千万円、さらに1億円超の報酬が加われば、身体へのリスクを承知で挑戦する選手が出てくるのは当然でしょう。特にステロイドや成長ホルモンは、短期間で筋力や回復力を向上させる一方、心臓や肝機能への負担、ホルモンバランスの崩壊など深刻な副作用も指摘されています。今回の大会は“スポーツの進化”として注目を集める一方で、“命を削って記録を競う構図”に見えてしまう危うさもあると思います」
実際、この大会は世界アンチ・ドーピング機構(WADA)から強く批判されてきた。
「“医療管理下なら安全”という主張に対しても、長期的な健康被害や依存リスクは未知数だと指摘されています。経済的に厳しい選手ほど危険な挑戦を選びやすくなるため、“新しいスポーツ格差”だという声もあります。さらに今回、ある意味で皮肉だったのは、競技によっては薬物を使っていない選手が上位に食い込んだことです。ネット上では“ドーピングや違反水着を使っても僅かな記録短縮にしかならない”“ドーピング関係ないってなりそう”という声も広がりました」(同・スポーツジャーナリスト)
“人類の限界突破”という名のもとに、スポーツがどこまで倫理を超えていくのか──。今回の“ステロイド五輪”は、単なる話題性だけでは済まされない重い問いを、世間に突きつけているのかもしれない。
