5月22日に『日本経済新聞』が報じた『ふるさと納税受け入れ額の増加率2026年度ランキング』で、長年“返礼品バトルの王者”として知られた大阪府泉佐野市が首位から陥落。一方で、前年比5.3倍という驚異的な伸びを見せた広島県広島市が大きな注目を集めている。
推し活型返礼品
「原動力となったのが、J1・サンフレッチェ広島の新本拠地『エディオンピースウイング広島』で利用できるグルメチケットなどを組み込んだ“推し活型返礼品”です。これまでふるさと納税といえば、高級肉やカニなどの海産物、ブランド米など、“どれだけお得に食品を手にするか”が重視されてきました。
しかし近年、その価値観が大きく変わりはじめています。“お得だから寄付する”時代ではなく、“推しを応援したいから寄付する”時代に入ってきました。特に若年層は、“モノ消費”より“体験消費”への傾向が強く、自治体側もそこに気づきはじめた感じがあります」(全国紙記者)
これまで都市部の自治体は、地域を代表する特産品が少ないため不利と言われ続けてきた。しかし近年は、ドラマや映画、舞台のロケ地などを武器に“聖地化”へと舵を切っていると指摘するのは地方創生コンサルタントだ。
「実際、東京都新宿区では『ルミネtheよしもと』の劇場ライブチケット、兵庫県神戸市では人気漫画『孤独のグルメ』で紹介された飲食店関連の返礼品、石川県川北町では声優イベントへの参加権など、“推しに近づける体験”を武器にした自治体が急増しています。
そのほかにも、アニメの聖地巡礼ツアーやスポーツクラブとの限定交流イベントなど、“モノ”ではなく、“推しを感じる時間”そのものが返礼品になる時代へ突入。近年では、アニメの聖地巡礼による地域活性化も加速しており、作品の舞台になった自治体では、ファンが現地を訪れ、飲食店や宿泊施設にお金を落とす“推し経済圏”まで形成されつつあります」
推し活×節税という新たな価値観
SNSでも、“推し活×節税”という新たな価値観への共感が広がっている。
《推し活で、サンフレッチェの例が挙げられてるけど、48・坂道とかがやったら破壊力半端なさそう》
《推しが生まれ育った出身地に寄付して、少しでも地域貢献するのもいいかも》
《推し活しながらふるさと納税できるのいいよね》
一方で、“推し活型返礼品”の過熱に対しては、制度本来の趣旨とのズレを指摘する声も出ている。もともと、ふるさと納税は地域格差の是正や地方財源の確保を目的にはじまった制度のため、違和感を感じる人も少なくないのだろう。
「一部では、地域振興というより“推しビジネス化”しているとの指摘もあります。ただ、自治体側からすれば、従来の“高級肉・海鮮競争”から脱却できるチャンスでもあるし、“推し活”はふるさと納税とも非常に相性がいい。ファンは“現地に行きたい”“限定感がほしい”“応援したい”という感情で動くので、単なる返礼品競争よりリピーター化しやすいのです。しかもSNSで自発的に拡散してくれるため、これまでの“肉の量”や“還元率”だけでは生まれなかった熱量があります」(前出・地方創生コンサルタント)
かつては“高還元率競争”が問題視され、国から規制まで入ったふるさと納税。しかし今後は、“どれだけ得か”ではなく、“どれだけ推しへの熱量を刺激できるか”が、自治体の明暗をわける時代になりそうだ。
