野呂佳代

「出演するドラマに外れなし」と言われる野呂佳代。現在出演中の『銀河の一票』(フジテレビ系)では黒木華に次ぐ準主役のポジションで物語を牽引し、好評を博している。なぜ女優・野呂佳代(42)は評価が高いのか?

バラエティで活躍を見せる野呂佳代

木村拓哉のYouTubeに出演した野呂佳代

 野呂といえば2006年に大島優子らと同期の2期生としてAKB48入り。その時点で22歳だったので、周りのメンバーと比べると遅いデビューだった(オーディションでは2つ歳をサバ読んでいたとか)。その後は年齢高めのチームSDN48の中心メンバーとして活躍し、2012年に卒業後は、主にバラエティタレントとして活動していた。

 その頃の野呂は、どちらかといえば不器用で、場にふさわしいことが言えず、それを周囲に茶化されるようなポジションだった。特に深夜番組の『ゴッドタン』などでは、見ていて気の毒になるような扱いも受けていたように記憶している。

 ドラマにはグループ卒業後に時々出演していたが、筆者が記憶に残っているのは、2021年の『ナイト・ドクター』(フジテレビ)だ。波瑠ら若き救急医の成長を描くこのドラマで、野呂が演じていたのは救命救急センターの看護師。若手医師たちが難局を乗り越えた様子を離れた場所で見ていた野呂が「良かったね」といった表情で一人微笑む無言のシーンがあったのだが、これがその場にはまっていて非常に良かったのだ。あれ、この人、芝居がうまいのかも…と思わされた最初の瞬間だった。

 あるインタビューで同作が転機だったと語っているのを読んだこともあるし、前年の2020年には私生活で結婚もしており、自身の中で何か期するものがあったのかもしれない。

 2023年の『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)では主演の安藤サクラたちの同級生で、ヘアメイクとして働く“ミサゴン”役だった。こうした職場のベテランで、訳知りの女性を演じると、自然体で特にうまいと思う。

 バカリズムの作品とは相性が良く、2025年の『ホットスポット』(日本テレビ系)で演じたのは、ビジネスホテルの清掃スタッフ役。客室のテレビを盗もうとしたことが主人公の市川実日子にばれ、最初はシラを切ろうとするが、ごまかしきれないと悟るや、あっさり「すみません」と謝罪するシーンが笑いを誘った。たった2話の出演だったが、こんな風にインパクトを残せるのも実力だろう。

 とはいえ当初はまだ、表現は悪いが視聴者も「あのバラエティでヘタレな野呂ちゃんに、女優ができるの?」という興味だったと思う。役柄も本人にリンクするような役が多かった。2024年の『光る君へ』(NHK)に、本多力と逢引きする町の女役で出演した時は「大河女優の野呂さんですか?」とバラエティでいじられる場面も見かけた。まだたった2年前のことだ。

 しかし、その間にも『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)、『アンメット ある脳外科医の日記』(関西テレビ)、『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)、『なんで私が神説教』(日本テレビ系)、『初恋DOGs』(TBS系)など、立て続けに連ドラに出演。その実力は女優に転身組の先輩である小池栄子もメディアで認めるほどで、わずか数年で評価は爆上がりした。

野呂佳代の芝居勘

 近年は本人のイメージからは離れた役柄も演じるようになってきた。以前の野呂だったら、ボスに迎合する子分ママのイメージだったのが、『フェイクマミー』(TBS系)では進学校のボスママ役を演じて覆して見せた。

『リブート』(TBS系)では患者の顔を変えてリブートさせる形成外科医役で、ミステリアスな一面も披露して見せた。

 こうして各作品のムードに合わせて、その場で求められる芝居ができるのは、芝居勘がいいからではないか。「初めから女優になりたくてAKB48に入った」と話しているのもうなずけるのだ。

 そして満を持してメイン級の役を任せられた『銀河の一票』では、主人公の黒木華に、都知事選候補に仕立て上げられるスナックのママ役。政治などには疎いが、人間的な温かみがあるこの役は、まさに野呂のはまり役だろう。

 窮地に陥った黒木の心情を理解して「すごいねえ、茉莉ちゃんは」と言って励ます声には包容力が感じられるし、そんなしっかり者の野呂が、認知症で記憶を失っていく木野花に「私、誰? わかるでしょ?」と泣きながら問いかけるシーンは、視聴者の涙も誘う名場面だった。

 あのずんぐりとしたシルエットと人間性は安心感を与える。アイドルとしてデビューしたものの売れず、ヘタレ扱いをされて悔しい時期も長かったに違いないが、そうした経験が、セリフの説得力につながっている。それに加えた芝居勘の良さ。だから女優・野呂佳代は支持されるのだろう。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。