現在放送中のフジテレビ系ドラマ『銀河の一票』。政界を追い出された星野茉莉(演:黒木華)が、政治素人の元スナックママ月岡あかり(演:野呂佳代)をスカウトし、都知事選に挑むというストーリー。
にわかに脚光を浴びた「素人が選挙に立候補」という大胆行動だが、実は夢物語というわけではないのだ。
100回以上の選挙に携わった星陵選挙研究所主宰・選挙コンサルタントの大槻研氏が言う。
地方議員になるためには学歴は重要ではない
「このドラマの都知事選に挑戦というのは荒唐無稽ですが、これを市区町村議会議員にターゲットを変えると、あなたにとっても現実味のある話になってきます」
折しも、2027年の春には統一地方選挙が予定されている。全国で自治体首長や道府県議会議員、市町村議会議員、東京都特別区区議会議員などの選挙が2回に分けて一斉に行われる政治のビッグイベントだ。
「自治体の首長や県議会議員などは大政党に所属か推薦を受けなければポッと出の素人が当選するのは不可能に近いです。しかし、市区町村議会議員なら今政治素人のあなたにもチャンスがあります。例えば、2023年の統一地方選なら、(政令指定都市でない)一般市の市議会議員の当選率(改選数/立候補者数)は80.3%、町村議会議員の当選率は90.4%。つまり10人中8人や9人は当選する確率なのです」(大槻さん)
こちらはあくまで過去の数字で、また、法定得票率をクリアしなければ当選できないことも注意が必要だ。しかし印象としては意外にハードルが低いことがわかった。
とはいえ、「政治家なんて、学歴や立派な経歴がなければなれないのではないか」と考える人も多い。しかし、大槻さんはこちらについても実情をこう解説する。
「一般に優秀な大学に入って、一流企業に入って、良き家庭を作るのが人生のロールモデルとされています。確かに国会議員になるにはそのような人が有利という一面はあります。しかし、市区町村議会議員はそういった話ではないんですね。なぜかと言いますと、地方議員選挙というのは、見かけのキャリアではなくて、地域での人間関係がベースになります。例えば、ずっと地元の小学校、中学校、で地元の県立高校行って、親の家業を継いだ、という方の方が票を獲得しやすいのです。ネットの時代といえど、この原則は変わりません」(大槻さん)
選挙に重要な「地縁」は今からでも築いていける
地元が選挙区の選挙だからこそ、地元に根付いた人、地縁のある人が強い。これは昔から変わらぬセオリーなのだ。
「そして、そのような地縁は今からでも築いていくことができます。地元に貢献したいという方がどうやって地方議員になっていくかの書籍を書いたところなのですが、例えばPTAであったり、消防団で汗を流すとか、青年会議所に入るとか、町内会で頑張るなど様々方法はあります。ただし、そういう地元での活動は、己の立身出世のために利用しようという考えだともうすぐ見破られてしまいます。ですから、そのような活動を真に地元に貢献する意識でできる方こそ地方議員になっていただきたいと考えています」(大槻さん)
また政治素人の立候補には、その他にも追い風はあるという。
「立候補した場合ライバルになる現職議員はもう4年間やってきて2期目や3期目を迎えますから、まだまだ選挙モードになっておりません。あと1年ですが十分勝負になります。そして選挙は年々、下剋上の世界になってきております。プロ野球と一緒でネームバリューのある選手が必ずしも毎年で通用するわけじゃなく、ルーキーでも実力があれば有権者に見出され即活躍(=当選)できるのです」(大槻さん)
また、昨今の政治情勢も新人に味方する。
「東京の清瀬市長選や練馬区長選など、全国の首長選で与党系議員の敗北が相次いでいます。また中東情勢がいつ沈静化するかわからず、ホルムズ海峡も依然として実質封鎖の状況のままです。そして、ナフサの不足で建築資材の流通に“目詰まり”が生じている。中小企業の方も物価高騰による倒産が増え始めてきています。統一地方選のある来年の春頃にはもっと政局がカオスになり、大政党の候補有利という図式は崩れているのではないでしょうか」(大槻さん)
政治素人が地方議員を目指す事について、その難易度や向いている人物像について説明してきたが、【後編】では、市区町村を中心とした地方議員のそもそもの収入や、やりがいについて解説する。
お話を聞いたのは
大槻研さん
星陵選挙研究所主宰。早稲田大学法学部、同大学院アジア太平洋研究科卒業(国際関係学修士)。国会議員秘書、都議秘書、政令市市議会議員などを経て、100以上の選挙に携わり、勝率は94%以上。5月22日『勝率94%!「当選請負人」が教える 地方議員になって人生を変える本』(主婦と生活社)を出版。
