セ・パ交流戦の真っ只中とあって、プロ野球の注目度が高まっている。そんななか、ネット上を賑わしているのが「パ・リーグTV」はあるのに「セ・リーグTV」はなぜないのか――という疑問だ。独自のデジタル戦略を展開し、メディア戦略を背景に多くのファンを獲得するパ・リーグと、いまだ「一括管理」が進まないセ・リーグの配信環境の格差、その意外な真相とは?
ネット配信が“ライバル”に
ここで両リーグの2022年と2025年の1試合平均入場者数を比較してみる。セ・リーグの+5852人に対し、パ・リーグは+7226人と猛烈な勢いで差を詰めているのがわかる。かつては「人気のセ、実力のパ」と呼ばれたものだが、数年後には「人気のパ」となっていてもおかしくない勢いだ。
地上波からプロ野球の中継が消えつつあるなか、入場者数の底上げに貢献しているのが、「パ・リーグTV」をはじめとするネット配信だろう。しかし、セ・リーグの試合をネットで観戦しようとすると、球団ごとに契約するサブスクリプションサービスが異なり、ファンは複雑な状況を強いられている。
「パ・リーグの場合は、2007年に6球団が共同出資してパシフィックリーグマーケティングという会社を設立し、映像権利を統括して運用しています。これによりコスト削減やスポンサー獲得で大きな成果を上げてきました。
一方でセ・リーグにはそうした統括組織がなく、各球団が個別に権利を持っています。福岡ソフトバンクの取締役等を歴任し、パ・リーグのメディア革命に携わった元プロ野球選手の小林至氏によれば、セ・リーグの場合、親会社がメディアグループである球団が多く、ネット配信は“ライバル”になってしまうことが、12球団としての足並みをそろえられなかった理由だったといいます」(スポーツ紙記者)
「本当に不便」広島が“最大の障壁”に
「巨人、阪神という2大人気球団があることにあぐらをかいた」という見方をするファンも少なくないが、セ・リーグがコンテンツを一括管理できない最大の障壁となっているのは、実は広島なのだという。
「広島は地方の放送局や新聞社との結びつきを極めて重視しており、球団独自のアプリも地元メディアと共同で運営しています。ネットでのライブ配信を広く許可すると、地元の地上波放送の視聴率に影響が出るため、慎重な構えを崩していません。
実際、スポーツ配信大手の『DAZN』でも広島だけがNGで『11球団』という中途端な状態が続いています。それでいて、なぜかスポーツ専門チャンネル『J SPORTS』にだけはライブ配信を許可しており、その個別の対応がファンにとってはさらに分かりにくさを生む原因となっています」(テレビ関係者)
ネット上でも、セ・リーグの配信環境の悪さや広島の姿勢に対して、「パ・リーグファンからすると、交流戦で広島主催の試合になった途端にネットで観戦できなくなるのが本当に不便」「地元を離れて遠方に住んでいる広島ファンもたくさんいるのに」「セ・リーグも広島を除いた5球団だけで先に統一プラットフォームを作ってしまえばいいのではないか」といった声が聞かれる。
「球団が厳しい時代に地元メディアに支えられたという恩義があるのは理解できますが、権利が一本化されないデメリットは小さくありません。海外展開やリーグ全体のスポンサー契約が難しくなり、デジタル化による顧客データの蓄積や分析といった将来的な成長の種を逃している側面は否めないでしょう」(広告代理店関係者)
パ・リーグが、デジタルネイティブ世代を取り込んで将来的なファン層の拡大に向けた基盤を完全に整えたのに対し、セ・リーグはいまだ足並みが揃わぬまま。交流戦でパ・リーグに“フルボッコ”にされるようなことがあれば、セ・リーグ人気はさらに危うくなりそうだが……。
