日本中を震撼させた、理不尽で残虐な事件の審判が、いよいよ下されようとしている。
旭川女子高生殺害事件 弁護士の見解は
2024年4月、北海道旭川市で当時17歳の女子高校生が、神居古潭(かむいこたん)の橋から冷たい石狩川へ転落して死亡した事件。殺人や監禁などの罪に問われている内田梨瑚被告(23)の裁判員裁判が、2026年6月8日に結審した。検察側の求刑は「懲役 27年」。判決は、6月22日に言い渡される予定だ。
「この裁判では、内田被告が被害者を押して川に突き落としたのか、それとも被害者が追い詰められて自ら落ちてしまったのかが争点となりました」(全国紙社会部記者)
すでに懲役23年の判決が確定している共犯の女は、法廷で「内田被告が被害者の肩甲骨あたりを両手で押した」と証言。しかし、内田被告は「事実と違う」と真っ向から否定。被告人質問では「殺意があったと言われても当然だと思う」と神妙に語る一方で、それでも「殺意はなかった」「橋から落としていない」との主張は崩さなかった。
法廷では、被害女性の遺族による意見陳述も行われた。母親は「極刑を求めます」と訴え、父親は「どうか娘が望む判決を下してください」と涙ながらに語ったという。傍聴席だけでなく、裁判員の中にも涙を流す人がいたと報じられた。凄惨な犯行内容と遺族の涙が報じられると、ネット上では内田被告への怒りの声が一気に爆発した。
《これは死刑でもおかしくない》
《23年や27年では短すぎる》
《遺族感情を考えれば極刑しかない》
SNSやニュースサイトのコメント欄は、厳罰を望む声で埋め尽くされた。しかし、司法の判断は、こうした世間の怒りや感情論とは、まったく別の基準で下されるのが現実。はたして、多くの人が望む「死刑」や「無期懲役」の可能性はあるのだろうか。アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士に話を聞くと、
「結論から言うと、本件で死刑が選択される可能性は極めて低いと思われます」
とのこと。正木弁護士によると、日本の司法において死刑の判断を下す際は、1983 年の最高裁判決で示された通称「永山基準」が重視されているという。そこでは犯行の動機や残虐性だけでなく、被害者の数、遺族の感情、社会的影響などが総合的に考慮される。
「現在の裁判実務では、死刑のハードルが非常に高く、特に被害者が1人のケースでは、死刑が回避される傾向が相対的に強いです。もちろん例外もありますが、それは身代金目的や保険金目的、凄惨な性犯罪を伴う事件、あるいは綿密に練られた高度な計画性が認められた場合などの傾向があります。
今回は、確かに残虐な事件ではありますが、これまでの前例に照らし合わせると、死刑が選択される可能性は低いと言わざるを得ません」(正木弁護士、以下同)
極刑の可能性は…
今回は市民が参加する「裁判員裁判」だが、ここにも世論の感情が、そのまま突っ走らないような“ブレーキ”がかけられているという。
「世間がどんなに“極刑にしろ”といっても、それがそのまま判決に直結することはありません。裁判官3人と裁判員6人が徹底的に議論を行いますが、仮に多数決になったとしても、必ず裁判官のうち1人以上を含む過半数の賛成が必要となります。過去の類似事件との“量刑のバランス”も重視されます」
では、現実的に内田被告には、どのような判決が下される可能性が高いのか。
「共犯の女に懲役23年の判決が確定しています。検察側の主張通り、内田被告がすべての主導権を握っていたと認定されれば、それより重い刑になるのは間違いありません。私の見解としては、懲役25年から、求刑通りである懲役27年前後の有期刑が最も有力なラインだと考えています」
裁判所が事件の悪質性を極限まで重く見た場合でも、求刑を超える判決の可能性は低いという。
「法律上、裁判所が求刑を上回る判決を出すことは可能です。しかし、今回の裁判では懲役の上限は27年になります。死刑や無期懲役は難しいので、求刑を超える判決の可能性は低いと考えられます」
6月22日、どのような審判が下されようとも、奪われた尊い命と遺族の失われた日常が戻ってくることはない――。
