やはりというべきか、今シーズンもポスティング移籍をめぐる論争が起きそうだ。2025年からメジャーリーグ、マイナーリーグでプレーしていた小笠原慎之介投手(28)が日本球界復帰を決断。その移籍先はまたもや古巣ではなくーー。
中日ドラゴンズで9年間プレーして通算45勝、2022年には唯一となる二桁勝利を挙げた小笠原。国内では投手タイトルとは無縁の左腕だったが、
【僕の夢でもあるメジャーリーグでプレーするという目標を選ばさせていただいた。9年間、本当にわがままばっかり言っていたと思いますが、本当に助けてもらって感謝しています。本当にありがとうございました。】
2025年1月、自身の「夢」を叶えるため、球団から容認してもらったポスティングシステムにてワシントン・ナショナルズへの移籍が決定。その際にドラゴンズ、そして育ててもらった「名古屋」への感謝を述べていた。
しかしながらMLBの壁はやはり高く、1年目のシーズンを先発2試合、リリーフで21試合に出場して1勝、防御率6.98と思い描いたような活躍はできず。2年目のシーズンもマイナーリーグ3Aからスタートすると、ここでも結果を出せずに2A行き。
「夢のまだ途中」と語ったばかり
2026年1月23日配信の『J SPORTS』インタビュー記事では「夢のまだ途中なんで…」と、2年目の雪辱に燃えていた左腕だったが、メジャー再昇格への道は遠く、またマイナーリーガーとしての過酷な環境に耐えられなかったのか、“途中”で日本球界への復帰を決断したわけだ。
ならば当然、「愛」を語っていた古巣・中日に復帰して球団、ファンに恩返しするかと思いきや、各スポーツ紙によって報じられたのは読売ジャイアンツとの電撃契約。名古屋ではなく、東京でのリスタートを選択したのだった。
セ・リーグ首位(6月11日時点)に立った巨人にとっては2年ぶり優勝に向けて願ってもない補強だが、わずか1年半で夢の途中で帰国、しかも同じリーグのライバル球団に移籍する小笠原に中日球団、そしてファンは何を思うのか。
《小笠原式FA爆誕》
ネット上ではやはりと言うべきか、移籍報道がなされると早速「小笠原式FA」などとヤジる声もある。
2023年から3年15億円の大型契約で、福岡ソフトバンクホークスでプレーした有原航平投手(33)。そして同じくホークスと4年10億円で契約、2025年からプレーしている上沢直之投手(32)。いずれも北海道日本ハムファイターズからポスティングでメジャー移籍した選手たちだ。
ところが有原は2年、上沢に至ってはわずか半年で日本球界に“出戻り”復帰。しかも2人とも古巣ではなく、高額契約を提示したソフトバンクに入団したことで「有原式FA」「上沢式FA」ともネットで称され、ポスティング制度の“抜け穴”を露呈することに。
1年ダメでソフトバンクに行く流れ
さらに論戦に拍車をかけたのが、上沢への批判や誹謗中傷が巻き起こっていた中で、日ハムが育て上げた主力選手を“奪われた”新庄剛志監督による、
「ポスティングで行って1年ダメでソフトバンクに行くっていう流れはやめてほしい」
と制度の“穴”をついたような移籍劇に対する現役監督からの苦言。するとプロ野球選手会の森忠仁事務局長(64)も反応しては、選手会の会沢翼会長(38、広島東洋カープ)による発言を代弁。
「あの(新庄監督の)発言が出た時に、なんでNPBは問題ない行動だとか、選手をかばう行動をしてくれなかったのか」
制度上、何ら違反がないにも関わらず選手が批判される状況に「選手をかばうべき」との主張を、選手側の意見としてNPBに突きつけたのだ。選手の権利を守り、地位向上などを目指す選手会だけに、会沢会長としても当然の物言いである。
しかしながら有原や上沢同様の“出戻り”移籍が肯定されてしまえば、国内・海外FA(フリーエージェント)権の取得を待たずとも、他球団への移籍ができる“グレー”ルートもできてしまう。故に新庄監督の苦言も間違ったものではない。
「“夢”というだけで安易にメジャーを口にしないほうがいい」と、厳しい目を向けるのはMLB移籍事情に詳しいスポーツライター。
ポスティングはあくまでも球団の権利
「彼ら同様にポスティング移籍で海を渡った選手の中には、マイナー落ちしても腐らずにアメリカの地にとどまり、何度チームからリリースされようともメジャー再昇格を目指して泥にまみれた選手もいます。ポスティングはあくまでも球団の権利であって、特例として容認されるのですから、プロ野球で誰もが認める結果を残していない、相応の覚悟がない選手が“メジャー”と騒ぐのはどうかとは思います」
とはいえ現役生活も限られている野球選手だ。メジャー球団との契約によって日本では考えられない大金を手にすることができ、仮に通用しなければ早々に断念して再度日本で稼ぎたいのも本音だろう。
それに実際、メジャーからの“オファー”があってこそ成立するポスティング。有原に上沢、そして小笠原も請われて移籍が実現したのであって、また古巣球団も見返りとなる譲渡金も手にしている。ビジネスとして成立しているようにも思える。
「ですが、本当に制度として何ら問題がないのであれば、毎回のように選手が批判される状況にはならないわけで。それに批判されるべきは選手でも監督でもなく、同様の騒動が起きながらも、選手が批判に晒されながらも一向に改善に動かないNPBでしょう。FA移籍による人的補償制度の変更にならって、ポスティング制度の改善と整備も必要な時期にきていると思います」(前出・スポーツライター)
選手や球団、ファンも納得する道をNPBは示すことができるだろうか。
