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ツメは血流具合で色や形が変わるため、ツメを見ると、その時々の全身の健康状態がわかります。根元の“爪母”と呼ばれる組織で新しい細胞がつくられて、前のツメを押し出して、どんどん伸びていきますから、経時的にひと目でチェックできる身体組織のひとつです。

 ツメの根元にある半月部分が見えないと、ツメの成長が遅くなっている可能性もあります。身体全体の代謝が落ちているかもしれません」

 そう話すのは、形成外科医の北條元治先生。健康なツメは薄いピンク色で、表面にツヤと弾力がある。さらにゆるやかにカーブし、ペラペラと薄くなく、適度な厚みがある状態。

 手のツメは1日約0.1mm、1か月で約3mm伸びるため、根元から先端まで完全に生え替わるのに約半年かかる。一方、足のツメは手のツメの半分ほどの速度で、1日約0.05mm、1か月で約1.5mmしか伸びないため、完全に生え替わるのに1年から1年半かかるといわれる。

経時的変化で健康状態がわかる

 ツメの色や形など、その状態が悪くなる原因は、乾燥や栄養不足から内臓疾患のサインまで多岐にわたるとのこと。

「まずツメが割れたり欠けたり、二枚ヅメになったりしたときは、ツメの原料である“ケラチン”と呼ばれるタンパク質が不足している可能性があります。また、肝臓が疲れているとツメがもろくなることもあります。

 ただし、栄養が足りていても、加齢や血行不良、乾燥、外傷や圧迫などで伸びる速度は変わってきます。若い人よりお年寄りのほうが、ツメの伸びは遅くなります」(北條先生、以下同)

 注意すべきなのは、色が濁っている、変形がひどい、強い痛みがあるといったときだ。

「ツメが白く濁り、分厚くなっている場合、たいていの医師は水虫(爪白癬)を疑います。放置すると変形し、痛みを伴うことがあります。市販薬では治りにくいので、皮膚科での処方薬が必要です。ツメが完全に生え替わるまで治療を続けることになります。

 また、ツメが内側に湾曲して皮膚にくい込む“巻きヅメ”で、痛みや腫れが強くて歩きにくい、靴が履けないなど、日常生活に支障が出ているときも、受診したほうがよいでしょう。放置すると重症化し、ひざや腰に負担がかかります。重度の場合は、外科的治療が必要になるでしょう」

 ツメを見ることで健康状態をチェックすることはできるが、それはあくまで可能性のひとつ。血液検査ほどの精度は期待できない。とはいえ油断できないのが、“反りヅメ”や“バチヅメ”、“黒い線”が出現したときだ。重度の病気が隠れている場合もある。

「ツメ先が上向きに反り返っている“反りヅメ”は、過度な貧血状態にある傾向を示しています。もしくは肝臓に負担がかかっている可能性も。

 また、肺や心臓にトラブルを抱えている人は、ツメが根元から先端にかけて盛り上がり、太鼓のバチのように見える“バチヅメ”になります。さらに、ツメの真ん中に“黒い線”が出現したら、メラノーマ(悪性黒色腫)という悪性度の高い皮膚がんである可能性が疑われます」

タンパク質を中心にバランスのとれた食事を

 ツメの異変が、病的か病的でないか、それを判断するのは非常にシンプルだ。

3か月前にはなかったものがツメに現れたときは、病的である可能性を否定できません。すみやかに皮膚科を受診しましょう。ツメに異変が出るまで病気が放っておかれることはまれですが、深刻な病気になると、その影響はツメにまで現れるということは、知っておいてほしいですね」

 健康なツメをキープするには、どんな生活を心がければよいか。

「ツメだけが組織として独立しているわけではなく、人は身体があって、皮膚があって、一つの生命体を構成しています。ですから身体全体が健康になれば当然、皮膚も健康になるし、ツメも健康になる。

 ツメだけを気にするのではなく全身を意識して、タンパク質を中心にしたバランスのとれた食生活を心がけ、健康的でストレスのない生活を送るのがいちばんです

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 タンパク質のとり方は、厚生労働省が公開している「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が参考になる。

「タンパク質の1日の推奨量は、成人女性で1日50g、成人男性で1日65gが目安です。1食あたり、体重1kgにつき0.4g以上の摂取が推奨されていますから、体重50kgの人なら、1食あたり約20g、1日3食合計で約60gのタンパク質をとる必要があります。納豆1パックのタンパク質量が約7gですから、1日に8パックも食べないといけないことに。

 ですから、卵(約6g)、サラダチキン(約20g)、ヨーグルト(約10g)と、食品をうまく組み合わせて食べるといいですね」

 もちろん、ツメのケアも怠らないようにしたい。指先がきれいだと、人の印象も変わってくる。

「乾燥すると、ツメが割れたり、二枚ヅメになったりするので、こまめにネイルオイルやハンドクリームで保湿するとよいでしょう。指先をマッサージすると血行が促進されます。またネイルでツメの表面を削りすぎない、ツメ切りを使わず、ツメやすりで一定方向に削って整える、といったツメへのダメージを軽減することも大事になります

 ツメを軽んじることなく、細部から身体全体を整えていこう。

「ツメ」なんでも基礎知識

●ツメはどれぐらいの速さで伸びる?

 手のツメは1日約0.1mm、1か月で約3mm。足のツメは1日0.05mm、1か月で約1.5mm。

●伸びる速さが人によって違うのはなぜ?

 栄養状態や加齢のため。年齢を重ねると、一般的にツメの伸びる速度は緩やかになる。

●何でできている?

 主成分はケラチンと呼ばれるタンパク質。18種類のアミノ酸が結合している。

●切っても痛くないのはなぜ?

 皮膚の付属器官であり、生命反応がないため。カニの甲羅などと同じで、外界から身を守る役割がある。

こんなツメの人は、身体の不調があるかも!?

「縦スジ」は加齢による老化現象、乾燥やストレス、「横スジ」は体調不良、発熱性疾患、栄養不足などが原因。「反りヅメ」は貧血状態。内臓にトラブルを抱えているときは「バチヅメ」に変形する。「黒い線」はメラノーマのおそれがある。「欠けている」「割れている」「二枚ヅメ」は、ケラチンというタンパク質不足。「ツメが白く濁り、分厚い」と水虫(爪白癬)が疑われる。

巻きヅメがひどいときは病院へ

 足のサイズに合っていない靴の着用や間違ったツメの切り方で、ツメが内側に巻いて変形した状態。ツメが足指にくい込み、痛みや腫れが生じて日常生活に支障を来すようなら、皮膚科の受診を。特殊なワイヤーやプレートを装着してツメの形を整える「矯正」や、くい込んでいるツメの一部を切除する「手術」を行うなどして、治療することになる。

北條元治先生 医学博士。東海大学医学部客員教授。ペンシルベニア大学で培養皮膚を研究後、東海大学にて同研究と熱傷治療に従事。2004年、細胞の製造・保管や再生医療の技術・導入支援を行う株式会社セルバンクを設立し、「肌の再生医療」専門クリニックを創業。社長業とともに再生医療の普及に取り組む。ユーチューバー。
教えてくれたのは…北條元治先生 医学博士。東海大学医学部客員教授。ペンシルベニア大学で培養皮膚を研究後、東海大学にて同研究と熱傷治療に従事。2004年、細胞の製造・保管や再生医療の技術・導入支援を行う株式会社セルバンクを設立し、「肌の再生医療」専門クリニックを創業。社長業とともに再生医療の普及に取り組む。ユーチューバー。

取材・文/池田純子