事件があった茨城県水戸市の父子宅。庭は手入れされた様子はなく、雑草が伸びきって生い茂っている

茨城県水戸市で、同居する父親の首を絞めて殺害したとして息子が逮捕された。犯行後は、自ら警察に通報。デイサービスに通う父親と無職の息子、男2人の生活ぶりを追うと─。

容疑者自ら“父親の首を絞めた”と110番通報

 事件当日の6月12日午後8時過ぎ。茨城県水戸市のJR常磐線・内原駅から南に約1キロ、田畑の緑が広がるのどかな住宅地のすぐそばにパトカーが5、6台集まってきた。

 パトカーが来る直前、その男が歩く姿を目撃した自営業の男性は言う。

いつものキャップをかぶって道路脇の電話ボックスに入っていったんです。スマホを持っていないのか、いま思えば警察に電話したんでしょう。駆けつけたパトカーの後部座席に乗せられたようでした

 その男とは、同市内原町の自宅で同居する父・寅夫さん(88)の首を腕で絞めて殺害したとして県警水戸署が逮捕した無職・坂田武男容疑者(54)のこと。寅夫さんがデイサービスから帰宅した午後4時半ごろから、通報する午後8時ごろの間の犯行とみられている。

容疑者自ら“父親の首を絞めた。呼吸がない”と110番通報してきました。父親は搬送先の病院で死亡が確認され、殺人の容疑を認めています。司法解剖で死因は頸部圧迫による窒息と判明しました。絞めるというより圧迫に近いかもしれません。詳しい犯行態様や経緯と動機、生活状況などを捜査中です」(捜査関係者)

 父子は前述の電話ボックスから徒歩数分にある敷地の広い平屋建て住宅で2人暮らし。近隣住民などによると、家族で市内の別の場所から転居してきたのは約45年前。

 寅夫さんの両親や武男容疑者の弟、妹など3世代にわたる大家族だった。しかし、寅夫さんの妻(武男容疑者の母親)の姿はなく、寅夫さんは一部の住民に対し、「妻は出ていっちゃった」などと話していたという。

私はおばあちゃんから“孫たちの母親はお産で亡くなった”と聞いていたんですよ。世間体を気にしたのでしょうか。子育てしたのは、おばあちゃんとおじいちゃんでした。そのおばあちゃんも20年以上前に亡くなり、ほかの孫たちは独立して実家を離れ、父子2人の生活が続いていたようです」(近所の70代女性)

 自宅の庭園にソテツを植え、温室ハウスや大きな飼育かごを設けるなどトロピカルムード満点の家だった。「あれは寅ちゃんの趣味」と70代の知人男性は言う。

容疑者は「常識がある人」

寅年の寅夫さんだから愛称は“寅ちゃん”。ちょっと小太りでね。農業関係の仕事に長く従事し、年1度の地域のゴミ拾いイベント『クリーン大作戦』にもきちんと出ていました。常識がある人だよ」(知人男性)

坂田武男容疑者が電話ボックスから110番通報後、身柄を拘束されたとみられる瞬間。パトカーが5、6台出動し、画像奥のパトカーの後部座席に乗せられたようだという。(読者提供)

 父子宅そばの田んぼの脇には用水路があり、ザリガニが捕れるという。

私が小学生だった5、6年前、あの家のそばでザリガニを捕まえていたら、おじいちゃんが窓から顔を出して“うちに金魚がいるからあげようか”と言ってくれたんです。庭に井戸があって赤い金魚がたくさん泳いでました。その中から2、3匹もらって帰ったんです」(地元の10代女性)

 寅夫さんも年を重ね、4、5年前にはシニア向けの電動カートに乗って外出する姿が目撃されるようになった。デイサービスの車が頻繁に止まるようになり、最近はすっかり姿を見かけなくなっていたという。

 一方の武男容疑者は、長らく仕事をしていない様子だった。

でも挨拶をしたら会釈は返してくれる。十数年前まではトラック運転手をしていたんじゃないかな。父子宅から朝4〜5時くらいにトラックのエンジン音が聞こえてきて、朝早くから出勤する様子がうかがえました。しばらくエンジン音も聞かないし、働いていないんだろうとは思っていました」(前出の知人男性)

 武男容疑者は小柄で白髪交じりの短髪。Tシャツにジーンズなどラフな格好で、トレードマークは黒っぽい色のキャップだった。ここ1、2年の行動は少し奇妙だった。

タイヤの太い自転車で昼も夜も走っていたんだよ。真夜中の2~3時でも自転車で徘徊するから、近所では気味悪がる人もいた。それと、近くの運動施設の裏にある水道から、ポリタンクに水を入れて持ち帰るのを見たことがある。なんでだろうと思ったね。飲み水や生活用水を調達していたんだろうか……」(近所の50代男性)

 犯行現場となった父子宅には警察の規制テープが張られていた。庭は雑草などが生い茂って荒れ果てている。植木の隙間からのぞく物置にはチューハイの空き缶が山積みにされ、一部は崩れ落ちていた。

昔は寅夫さんがしっかり整備していたから、きれいだったよ。あんなふうに草ボーボーになり始めたのは2、3年前かな」(別の70代男性)

 犯行の背景に何があったのかなど、動機の解明は捜査の進展を待つほかない。ただ、武男容疑者は自宅では寅夫さんの生活を介助していたとみられ、庭まで手が回らなかったようだ。

 スマホもなく、水道も止められ、缶チューハイを飲むのが日々の楽しみだったのか。寅夫さんが寝入ったあとの深夜、現実を忘れて自転車に乗る時間が唯一の“息抜き”だったのかもしれない。