嵐の大野智

 宝泉薫さんによる『週刊女性』の名物連載「人生アゲサゲ分かれ道」。今、ニュースな大野智さんを取り上げます!

大野智の芸能活動の継続を思わせる記述が

 嵐の活動終了から2週間が過ぎた6月14日、大野智のなりすましアカウントがSNSに現れた。すぐに削除されたものの、3万人を超えるファンがだまされ、フォローする事態に。ほかの4人以上に、その動向が注目されている彼ならではの騒動だ。

 大野は今年2月、5月末日での事務所からの退所を発表して、

《活動終了後は、自分らしくマイペースに出来る事をやっていけたらと思っています》

 と、コメント。これが事実上の引退宣言と見なされ、今後は知人が手がける沖縄・宮古島でのリゾート開発事業などに関わっていくと思われていた。

 しかし、ここへきて、状況が変化。そのリゾート開発会社の登記簿に、芸能活動の継続を思わせる記述が追加されたのだ。

 とはいえ、この変化、個人的には「またか」という印象もなくはない。大野は18歳のとき、事務所を辞めて絵の仕事に就こうとしていたが、嵐のメンバーに選ばれたことで翻意。国民的グループのリーダーとして活躍してきたものの、2017年、「一度何事にも縛られず、自由な生活がしてみたい」と言い出して、これが嵐の活動休止につながった。

 そして今回、ついに悲願の「引退」が実現かと思われたが─。どうやら、彼にとって芸能活動は「嫌よ嫌よも好きのうち」みたいなもののようだ。そうでなければ、14歳からの約30年、あれほど精力的に取り組むことはできないし、結果も出せない。

 しかも、その歳月で得たスキルや名声が彼の立場や気持ちをややこしくしている。
それこそ、昭和の国民的アイドル・山口百恵は21歳で引退。10年にも満たない活動期間にもかかわらず、その後も世間の高い関心を集め続けた。息子2人が芸能人になったこともあって、今もなお、完全な一般人に戻れたとはいいがたい。

デビュー時に「ボクのファンはいない」と思っていた大野

 また「縛られない自由」への渇望を歌ってカリスマになった尾崎豊は、カリスマとしての立場やイメージに縛られ、自由を失った。芸能界で大成功するというのは、そういうことでもあるのだ。

 大野がたとえ引退したとしても、世間やメディアは放っておかないだろう。つまり「自由な生活」はできないし、自らがつくった嵐での人気やイメージに「縛られ」続けることになる。

 さらにいえば、芸能界には独特の快感がある。特に彼は、5人の中で最も知名度がないところから出発して、肩を並べるまでになった。

結成から26年半、誰も脱退することなく活動を終了した嵐

 デビュー時に「ボクのファンはいない、って思ってた」と言うほどの劣等感を天性の才能とストイックな努力によって克服し、歓声を浴びるに至った快感は想像を絶するものだ。これから別の道に転じても、それを超える快感はなかなかもたらされないだろう。

 世間やメディアが放っておかないだけでなく、彼にとっても、自ら進んで芸能との縁を切ることは難しいのではないか。

 なお、嵐の活動終了について、その原因をつくった大野の責任を問う声は少ない。ザ・ビートルズの解散でジョン・レノンが叩かれたようなことにはなっていないわけだ。

 これは大野の立場や気持ちに共感する人が多いからだろう。誰もが自由に、縛られずに生きたいが、それは不可能なこと。やりたいことと向いていることのズレも、誰にだってある。いや、自分がどう生きたいかすらよくわからず生きているのが人間だ。
国民的グループとしての活動が終わっても、大野智の人間的葛藤は終わらない。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。