夏になると、くしゃみや咳、発熱、息苦しさなどが長引く……。花粉症や夏風邪とも違う、その不調の原因がエアコンや古い家屋のカビであることに気づいていない人も多いのでは。肺炎に詳しい専門医が、改善策についてアドバイス。
感染症ではなくカビによるアレルギー
「室内で発生したカビを繰り返し吸い込むことでアレルギー反応が起こり、肺炎になってしまうことがあります。特に梅雨から夏にかけて、高温多湿な環境で発生するトリコスポロンというカビが主な原因菌となる肺炎を“夏型過敏性肺炎”といいます」
肺炎と聞くと、細菌感染に伴う感染症というイメージがあるが、夏型過敏性肺炎は感染症ではなくアレルギー症状、と話すのは総合内科医の田中雅之先生。実は、この夏型過敏性肺炎、近年、注目されている疾患のひとつらしい。
「年々、気温や湿度が高くなり始める時季が早くなり、エアコンの使用時間が長くなっています。それによって、エアコン内にカビが発生しやすくなり、それを吸い込む機会が増えたことなどが原因となって診断されるケースが増えています」(田中先生、以下同)
症状は、くしゃみや鼻水、咳などで、悪化すると呼吸が苦しくなる。風邪と似ているため、診断は風邪との違いを見ることになる。
「風邪との大きな違いは、やたら長引くこと。また、場所によって症状が違うのも特徴です。カビ菌によるアレルギーなので、菌がいる限り症状は続き、菌がいない環境なら起きません。
カビの菌を吸い込んで、すぐに症状が出るわけではなく、吸い込んで4~8時間たってから出るため、家にいてしばらくたつとアレルギー反応が出始める、でも外に出ればアレルギー反応が治まる、というわけです。
さらに、毎年夏ごろに同じ症状が現れるようでしたら、夏型過敏性肺炎と考えてもいいでしょう」
やはりいちばんの原因は、エアコン?
「掃除の行き届いていないエアコンの内部は、カビが非常に増殖しやすく、いちばんの危険スポットです。また築年数のたった家の畳裏や押し入れも、非常にカビが多い場所。衣替えをしたりすると、アレルギー反応が起こることもあります。
カビが存在する生活環境全体が関与します。これらは外部要因ですが、内部要因として、もともとアレルギー体質であったり、ぜんそくがあったりする人は、夏型過敏性肺炎になりやすいといえます。悪化すると、治療が難しくなるので、注意が必要ですね」
原因を取り除くことが治療・予防の第一歩
では、夏型過敏性肺炎が疑われたら、どうすればよいのだろうか。
「まず、かかりつけ医に相談して、治療を進めていきましょう。基本的にはアレルギーなので、症状に応じてアレルギー用の薬を服用することもありますが、治療の大原則は、アレルギーの原因を除去することです。カビ菌がなければ発症しませんから、カビが発生する環境を改善することが最優先になります」
ただし熱が持続する、あるいは息苦しさが増すなどしたときは要注意。重症化して体内の酸素濃度が下がると、それを補うために入院による治療が必要になるという。
通常の肺炎と同じように、過剰な炎症を抑えるステロイドの使用が検討されることもある。そんなことにならないように、早めに環境を整備することが何よりも大切だ。
原因が除去できれば、再発することもなく、根本的な解決が可能。カビを増やさない環境整備が、治療と同時に予防になるわけだ。これから本格的な夏を迎えるにあたって、できる対策はどんなことだろうか。
「夏場にかけて、エアコンの稼働頻度がより高くなり、カビが室内に舞いやすい環境になります。梅雨時季に発生したカビを取り除くためにも、エアコンの掃除はやっておきたいところ。パッと見て外側がきれいでも、エアコン内部が汚れていることは多いので、専門業者に頼める人は任せたほうがいいですね。
そして室内の換気も重要です。風通しが悪くなると、カビが増殖する可能性があるので、窓を開けて風を通したり、エアコンの除湿機能や除湿器を使って、室内環境を改善します。
押し入れやクローゼットを定期的に開ける、衣替えの際は換気しながら作業するなどもやってほしい対策です。そのほか、布団を天日干ししたり、布団乾燥機を使ったりして、乾かしましょう。そうすると、室内に菌が滞留する可能性を減らせます」
“夏型”という症状名だが、一体、いつまで注意すればいいのだろうか。
「地域にもよりますが、だいたい6月から10月ぐらいまで。エアコンを使う時季を目安に、対策すればいいと思います」
カビを発生させないよう、室内を清潔に保つことは、ほかの感染症の予防にもつながる。家の環境整備をして、夏を健やかに乗り切ろう!
症状はくしゃみや鼻水、咳などで悪化すると呼吸が苦しくなることで風邪と似ているが……。
夏型過敏性肺炎と風邪を間違えない「見極め方」
●症状が長引いてる
原因菌によるアレルギー反応なので、風邪のように自然治癒するものではない。原因を除去して、環境改善しない限り、症状はずっと続く。
●外に出るとよくなる
衣替えや押し入れの整理後にカビを吸い込むと、その日の夜などに症状が現れる。また、家から離れて、カビの菌を吸い込まなければ症状は出ない。生活環境によって症状が変わる。
●毎年、同じ症状が出る
カビの発生する環境を変えない限り、毎年、同じ時季に同じ症状が発生する。「梅雨になると、くしゃみが出る」という人は、夏型過敏性肺炎の可能性あり。
エアコン清掃で原因を除去
エアコンにカビが発生する原因は、冷房や除湿で生じる水分、空気と一緒に吸い込まれるホコリなど。カビの繁殖を防ぐには、内部の水分を飛ばしてホコリの蓄積を防ぐため、エアコンを使用する前に一度フィルターを掃除することが大切。
内部乾燥機能がついているエアコンもあるので、使用後は必ず「内部クリーン」機能などを使用してほしい。エアコン内部にカビが発生していることも多いが、自分で掃除をすると故障するおそれもあるので、できれば専門業者に頼むのがおすすめ。
取材・文/池田純子
