はだ・みちこ/俳優。1968年、茨城県生まれ。1994年公開の映画『RAMPO』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以降、多数のヒット映画、ドラマに出演。2019年、実家の屋号を継承したオンラインストア「羽田甚商店」をオープンするなど、多方面で活躍している。

 自身の更年期の経験をYouTubeで配信している、女優の羽田美智子さん。更年期に悩む中、父親の死と母親の介護にも直面。人生の折り返しをどのように迎え、これからの希望ある未来を生きていくか─羽田さんの“今”を語ってもらった。

「更年期」をテーマに自らの体験を情報発信

 映像作品や舞台、バラエティー番組など、幅広いシーンで活躍する羽田美智子さん。ポッドキャスト番組「羽田美智子のChange of Life」(YouTubeなどで配信)をスタートし、注目を集めている。「更年期」が同番組のメインテーマだ。

「Change of Lifeは、英語で更年期を意味します。私の身には更年期は起こらないと、ひそかに思っていました。50代に入っても何ら変わらない日々を過ごしていたからですが、そんななか、ある舞台初日の本番前に、急に肩が上がらなくなってしまったんです。

 病院での診断はいわゆる五十肩。ついでに骨密度を調べたら、2年前に同世代と比べて140%あった骨量が、70%くらいまで激減した状態で骨粗しょう症も発覚して。そのほか、脱毛が気になったり、冷えを強く感じるなど、更年期が訪れたことを思い知らされたわけです

 そうした体験を雑誌のインタビューで赤裸々に告白。すると思わぬ反響があり、講演やイベントに呼ばれるようになったという。

「更年期の悩みを抱える人は非常に多く、自分の経験を話すだけなのに、すごく感謝されるんです。本来、女性は口にするのを嫌がるものですからと。でも、私は全然嫌じゃないんですよね(笑)。

 むしろ、自分の体験が誰かの救いになったり、役に立ったりするのはうれしいこと。コロナ禍以降、人と会わなくていいような風潮が広がり、井戸端会議みたいな場は少なくなった気がします。

 気楽な一方で、人を介した価値ある情報を得られなくなる弊害をずっと感じていて。ネットを通じて私が更年期の情報を発信したら、今の時代に合ったカタチで人助けができるかもしれない。そう思って挑戦することにしたんです」

 番組は人気を博し、多くのリスナーに支持されている。更年期を経験した諸先輩からのアドバイスも寄せられ、有意義な場に発展しているそう。

更年期をマイナスに捉える人も多いと思います。でも英語でいう更年期、Change of Lifeは“人生の転換期”という前向きな意味合いを含みます。心身の変化とともに人生を見つめ直し、自分らしく生きる新たなステージへの再出発。

 そのように更年期を捉えたら、私自身、気持ちが楽になったんですよ。人生のペースを『急行』から『普通』列車へと切り替え、ゆっくり景色を眺めながら歩んでいけばいい。悲喜こもごもの経験を経てきたからこそ、内面が磨かれて美しく、希望のある年代を迎えるんだと思っています」

 親が高齢になり、介護や死に直面するのを余儀なくされる更年期世代。羽田さんもしかりだった。

肺がんの父親を看取り母親を介護する日々

更年期にさしかかるちょっと前に父が他界し、生活パターンを変えざるを得なくなってから身体の不調が始まりました。母を一人にしておけず、東京と実家の茨城を行き来する二拠点生活を選択したんです。急に仕事以外のタスクが増え、疲弊してしまったのも影響したのでしょう」

 肺がんだった父親は、入院から約1か月で世を去った。看取りに始まり、葬儀や四十九日、一周忌と慌ただしく経験。

父母とのスリーショット。自分を育ててくれた感謝を胸に、母親の介護に取り組む

 そんな中で今度は母親が体調を崩し、自身も更年期の症状を抱えつつ介護の日々を送るようになる。

「でも、ありがたかった面も。忙しさのあまり、自分の身体のことをちょっと忘れられたので。亡くなる前の父に、家のこと、母のことは私に任せて、と伝えていたため、頑張らなきゃいけないという思いがあったんですよ」

 とはいえ、母親の介護にイライラやもやもやを感じるときも少なくない。

「老いた親は子どもに返るんですよね。私が家に戻ると、その日の出来事を全部聞いてあげないと次に進ませてもらえなかったり、良かれと思って作ったごはんも口に合わないと食べてもらえなかったり。具合が悪いときは下の世話も必要に。

 本人も『ごめんね』と謝るから、傷つけないように『全然大丈夫だよ』なんて言って、顔で笑って心で泣いていたりして……」

 親の介護で心身が疲弊したときは、セルフメンテナンスが大切という。

「今はお灸で身体の疲れをとって、リフレッシュしています。結局、自分の行いが、鏡のように相手の態度に反映されるわけです。私が優しく接したら、母も同様に優しく返してくれる。いちばん心を許せる相手だからこそ、いちばん心を配るべきなんです

 加えて、心の持ちようも重要に。自分の子ども時代を思い返しながら、親の介護にあたっているという。

「子どものころって行動が遅く、何をするにしても親を待たせていましたよね。だから今度は、私が待ってあげる番だと思っています。子どもが大きく育つまでには、親のいろんな犠牲なくしては成り立ちませんよね。そう考えることで感謝の念が強くなり、いつも以上に優しく接することができるんです

 さらに、老いていく親の姿に、将来の自分の姿を重ね合わせることも。

「ちょっと前のアルバムを見返すと、母は元気なんです。それが、この2、3年の間に足が不自由になったり、食べ物をこぼしたりするなど、老いが顕著に現れるようになって。私もいずれ同じ道をたどるのだと思います。母は身をもって、そのことを教えてくれているのかもしれません」

マイブームは「家庭菜園」

 誰もが年を重ねて老いる。現在独身の羽田さんも、将来のことなど不安は尽きないとか。

「“おひとりさま”の老後とかいわれますが、結局、最期はみんな一人ですよね。長年連れ添った夫婦も、どちらか一方が先に亡くなる。子どもがいても、今は別々に暮らすのが当たり前です。だから一人で生きるなんて覚悟を決める必要はないと思い、先のことは棚上げしています(笑)」

 ただ、いざというときに備え、身の回りのものを最小限にするよう「断捨離」には取り組んでいるそう。

「山のような持ち物を、あとで誰かに処分してもらうのは申し訳なくて。亡き父は極端に持ち物が少ない人でした。眼鏡に時計、カバン2つという程度だったため、片づけは1時間ほどで終了。父に倣い、定期的に持ち物を整理して、すっきりした生活を心がけています」

 昔は臆病で、何事にも慎重だったという羽田さん。今はその殻が破れ、積極的に生きる自分がいる。年を重ねて経験したことを糧に、人生を楽しみ、穏やかに生きていきたいと話す。

「最近ハマっているのが実家近くでの家庭菜園。農家の人に教えてもらいながら、野菜を育てています。昔から憧れていた暮らしができているのかなあって」

小田原のブランド野菜「下中玉ねぎ」の苗植えのお手伝い。「羽田甚商店」で取り扱う商品のひとつ(写真提供:羽田甚商店)

 最後に、羽田さんから週女読者にメッセージ。

「私たちも気づけば、だいぶいい年になりました。同じ世代を生きてきた仲間が一人でも多いのは、すごく心強いこと。やはり助けになるのは同世代の存在ですし、言葉なんですよね。だから私たちはもっと輝けるし、この先もいろんな経験をして新たな果実を実らせることができる。これからの人生も謳歌していきましょう」

はだ・みちこ 俳優。1968年、茨城県生まれ。1994年公開の映画『RAMPO』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以降、多数のヒット映画、ドラマに出演。2019年、実家の屋号を継承したオンラインストア「羽田甚商店」をオープンするなど、多方面で活躍している。

取材・文/百瀬康司