飯島直子

 6月23日放送で最終回を迎える飯島直子(58)主演『こないだおばさんって言われたよ』。

 毎話、50代なら誰もが思い当たることばかりで、笑いながら共感してしまうこと必至だ。もしまだ見たことがない方は、ぜひ一度ごらんいただきたい。

飯島直子が魅せる50代あるある行動

飯島直子

 飯島が演じているのは脱サラして小さなドーナツ店を営む54歳の女性。

 毎回、加齢を感じさせる様々な出来事に見舞われるが、その本筋とは関係ない、50代あるある行動も見どころの一つ。

 例えば友人とお茶をした時に、お互いにお金を払うと主張して、「いいって、いいって」「ダメダメ、こないだもそうだったじゃない」「じゃあ次、次に払ってよ」「次っていつよ?」と延々と不毛なやり取りを繰り返すなど、身に覚えがあって笑ってしまうシーンが随所にちりばめられている。

 秀逸だったのは昔の同級生が集まった場面。一人がおすすめのバスソルトをバッグから取り出してみんなにプレゼントすると、参加者が次々にシルクの靴下やハンドクリームなどを取り出して、流れるようにプレゼント合戦が始まるのだ。

 先ほど身に覚えがあると書いたが、筆者(50代半ば・男性)は男なので、ちょっと様子が違う。男は筆者を含めシブチンが多いので、対等な相手におごろうとはあまりしないが、女性相手だとこの「いいって、いいって」「ダメダメ」のループに巻き込まれることが多い。

 プレゼントを持ち寄ることもまずなく、要はこうした小さな散財(投資?)で相手との付き合いを円滑にするのは、女性特有の知恵なのだろう。

「あるある」の中に深刻な問題も織り込まれている

 こんなシーンもあった。一人がスマホで夫の写真を披露して、取り立ててイケメンでもなかった時、他のメンバーは「あ~」「あ~」とうなずき合った後、「でもめっちゃイイ人そう」「健康そうだし、優しい人が一番!」と無理やりほめ立てるのだ(「でも」と言っている時点ですでに否定してるんだけど)。これは男が妻の写真を見せられた場合でも、同じ反応をするかもしれない。

 本作ではそんな「あるある」の中に、深刻な問題も織り込まれている。

 例えば「親の介護のために仕事を辞める」「将来の生活資金が不安になる」「同級生が保険の勧誘に来る」「友達が病気で倒れる」などなど、いずれも50代なら身につまされる話ばかりだ。

 特にスーパーで働く友人役の堀内敬子が、品の良さそうな老女が万引きをする場面に遭遇し、「私たちもいつああなるかわからない」と話すエピソードは印象的だ。

 さすがに罪は犯さないまでも、我々の年代は何歳から年金がもらえるか分からないし、終わりの見えない物価上昇を見ていると、自分が汗水たらして稼いだ1万円は、10年後には価値が何割くらいに目減りしてしまうのだろうと不安にもなる。

 その後、飯島と堀内は、元同級生に勧誘された養老保険に入ってしまい「まあ、損するわけじゃないからいいか」と、些細な安心を手に入れて納得し合うのだ。

 一度、飯島の死んだ祖父(高田純次)の幻が現れたことがある。「一人でやるの疲れちゃったよ。仕事のこととかお金のこととか健康のこととか。私には旦那も子供もいないし、お金もないし、この先どうしたらいいのか、何を信じたらいいのかわかんない」と弱音を吐く飯島に高田は「芽衣子(飯島)は頑張ってるよ。頑張らなくてもいいことを見つけなさい」というセリフがあった。これはじっくり噛みしめたい言葉だ。

 最終回前の第7話は、堀内がトイレで頭を押さえて倒れそうになる不穏な場面で終わっている。自分や友人たちの健康不安も50代にはつきもので、最終回はその成り行きも気になるところだ。

 結局、現実と同様に、ドラマの中で明確な解決策は出ないことも多い。

 でもこのドラマを見て、「みんな同じなんだなあ」と笑えて、とホッとできればそれでいいのかもしれない。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。