サッカー日本代表の伊東純也(JMPA代表撮影より)

 FIFAワールドカップ2026グループリーグ第2戦のチュニジア代表戦。日本代表は前半で2ゴールと幸先の良いスタート。しかし、まったく攻めてこないチュニジア代表に対し少々攻めあぐねていた後半、相手を切り裂いたのは“イナズマ”だった。

地元のサッカー少年にとって大スター

田中碧選手からの縦パスを受けた上田綺世選手が、ダイレクトで相手ディフェンスの裏へ。そのパスに反応した伊東純也選手がディフェンダーと競り合いながらもキーパーとの1対1を制しゴール。後半は日本代表もなかなかゴールに迫れていなかったので、貴重な追加点でしたね」(サッカーライター)

 結果、日本代表は4-0でチュニジア代表に完勝。グループリーグ突破に向け大きく前進した。

 Jクラブの下部組織やサッカー強豪校、久保建英に至ってはスペインのバルセロナなど、育成年代を“エリート”といえる歩みをしてきた選手も多いなか、伊東の歩みは月並みな表現だがまさに雑草といえるもの。

「地元の神奈川県横須賀市のサッカークラブ・鴨居SCでサッカーを始め、その後横浜F・マリノスの下部組織の入団テストを受けるも不合格。そのため中学時代は同じく地元のクラブチームでプレーしました。高校もサッカーが強いとはいえない県内の公立校に進み、神奈川大学サッカー部でようやくその名が知られ、プロとなりました。

 高校時代は無名だったという選手も少なくないですが、それぞれの年代で第一線とは言い難い場所でプレーし、努力を続けてJリーグ、ヨーロッパで活躍。そして日本代表の中心選手としてプレー。伊東選手の存在は、今現在“特別な存在”ではないサッカー少年たちに大きな勇気を与えていると思います

 影響はプレーだけではない。

伊東選手が小学生時代にプレーしていた鴨居SCは選手の保護者がコーチを務める環境で、伊東選手のお父さんが息子の小学生時代から今でもコーチとして手伝っています。複数チームを集めた地元で開かれる大会などでは、伊東選手がサイン入りの賞品を提供することも。地元のサッカー少年にとって大スターですから、その貢献は計り知れない

 同じくチュニジア戦で得点した上田綺世の父親、初戦でディフェンスリーダーとして身体を張った谷口彰悟の妻・泉里香など、“家族”の現地観戦も多い今大会。伊東の成長と地元への貢献を支える父もメキシコはモンテレイに……と、思いきやその姿は“地元”に。

「チュニジア戦当日は伊東選手が育った鴨居SCも参加する地元のクラブ中心の大会が開催されていたんです。伊東選手のお父さんも鴨居SCのコーチとして参加してくれていて。“伊東選手のお父さん”として、手伝いや観戦に来ていた他のクラブの保護者も知っていますので、伊東さんを見て、“いや、今日はワールドカップが……”って勝手ながら心配していたりしたのですが(苦笑)。

 チュニジア戦の前に会場を後にされたので、まったく関係性はないですが良かったです。でも息子さんの大一番の前直前に、もう自身の息子が所属しているわけではないサッカークラブの手伝いをしてくれるなんてなかなかできることではないと思います。息子さんのプレーともどもすごいなと感じました。第1戦はアメリカに向かい現地で観られていたそうですよ」(サッカー大会参加者の保護者)

 伊東の父親は横須賀で行われたパブリックビューイングで、息子に声援を送っていたという。

 ワールドカップの日本代表戦の時間に練習や試合を設けることに、一部では批判の声が上がっている。

“日本代表選手がワールドカップで戦う姿を見せることが本当の強化”だという意見です。論理は理解できますが、神奈川はサッカーのクラブチーム数に対してグラウンドが少なすぎて、試合会場を確保しづらい、なかなか試合を組みづらいという事情があります。そういった状況もあるので、代表戦のタイミングで練習や試合を開催することにいたずらに批判することはやめてほしいですね」(前出・サッカーライター)

 伊東の姿を追った少年が、いつか伊東のように日本を代表する選手になる日がきっと──。