霜降り明星・せいや

『※女性は見ないでください』(テレビ東京)という何とも挑戦的なタイトルの番組が、6月8日、15日の2週にわたって放送されました。

上沼恵美子が定年後の男性に訴えたいこと

 番組MCを務める霜降り明星・せいやさんは番組内で「最近、女子がやたら集まって“オトコのあるある"とか“オトコのダメ出し"をする番組がようあるじゃないですか。そういうのに反旗を翻そうと」と趣旨を説明していました。

 確かに、男性に対する不満を女性芸能人がはっきり口にするというのは、最近のトレンドと言えるでしょう。

 タレント・上沼恵美子さんはご主人とは別居中ですが、YouTubeチャンネル「上沼恵美子ちゃんねる」において、「長生きするおっさん、夫はもうちょっと手伝えよ。当たり前のことをやってください。大きな荷物を持てとか、階段ふけとか言わんけど、オトコならではのやらなければいけないこととか。ほんまですよ。一緒にやってください。オンナは定年ないねんから、その辺は考えてもらいたい」と定年後の男性に訴えています

『夫が寝たあとに』(テレビ朝日系)は子育て中のママさんによるバラエティ番組ですが、使った皿を元の場所に戻せない(もともと皿のあった場所を忘れてしまう)など、夫のポンコツエピソードが語られています。

 視聴者の男性の中には、最近何かとオンナがうるさいとか、オトコばかりが責められていると不満に思う人もいることでしょう。そういう人のためのバラエティがあってもいいと思います。

斬新な内容なのかと期待したが既視感がある番組

『※女性は見ないでください』ではせいやさんと男性ゲスト、女性ゲストが飲み会のように向かい合って3対3でお酒を飲みます。女性との会話で違和感を持ったときにボタンを押し、女性陣には会話が聞こえないようにヘッドホンをしてもらって、言いたいことを言うというスタイルです。

 挑発的なタイトルだけに、どんな斬新な内容なのかと期待は高まりますが、2回見た感想としては、どこかで見たことがあるという既視感がすごい、もしくは古い、これに尽きます。どんなところが古いのか、書いていきたいと思います。

(1)若い女性とオジサンという組み合わせが古い
 せいやさん以外のこれまでの男性出演者は、ぱーてぃーちゃん・すがちゃん最高No.1さん、見取り図・盛山晋太郎さん、ニューヨーク・嶋佐和也さんです。せいやさんとすがちゃん最高No.1さんは30代、盛山さんと嶋差さんは40代ですが、女性ゲストは20代前半と大分年齢差があります。10も20も年下の女性に対して、「MBTI、何がおもろいねん」と言っても、それは女性のややこしさというより、単なるジェネレーションギャップというやつではないでしょうか。

 もしかすると、平成中期に人気だった、明石家さんまさんと若い女性によるトーク番組『恋のからさわぎ』(日本テレビ系)を模したのかもしれませんが、残念ながら、女性陣と男性陣の話がかみあっていないように感じました。

矢口真里

 

(2)本音トークのエピソードに既視感がある
 女性ゲストが『鬼滅の刃』(集英社刊)が好きと自ら言ったにもかかわらず、主人公の名前を答えられなかったことで、男性陣から「女子の少年漫画好きは信用できない」「女子の8割は漫画が読めない」「男のほうが賢い」という発言が飛び出します。若い視聴者はびっくりするかもしれませんが、男性によるこういう「オンナの好きは信用できない。オンナの理解は浅い」説は今に始まったことではないのです。

 たとえば、タレントの矢口真里さんは、人気漫画『ONE PIECE』(集英社刊)の大ファンであることを公言していましたが、2012年3月19日放送『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)内の企画、「第5回ワンピース王決定戦」に参加したものの、回答ボタンすら押さなかったことから、本当にファンなのか、にわかなのではないかという声が視聴者から上がったのでした。その他の事柄でも、詳しいといいながら実際はそうでもないことが露見しため、矢口さんは知りもしないのに何にでも首をつっこんでくるという意味の“いっちょかみ"とみなされたり、「オンナの好きなんて、その程度だよな」と冷笑されたりもしたのでした。

変わっていく妻と、変われない夫という関係性

 このように、新しそうな番組でありながら、構造もエピソードも平成中期っぽいなぁというのが、個人的な感想です。しかし、今のテレビで女性を揶揄する番組はないので、目新しさはありますし、オトコvsオンナというような対立構造がはっきりしたわかりやすい番組は、気楽に見られるという利点があります。男女問わず、こういう番組を好む人はいるのではないでしょうか。

 さて、それでは、どうして最近のバラエティでは、オトコへのダメ出しが多いのでしょうか。私が思うに、女性たちはオトコの悪口を言っているのではなく、関係性の話をしているのだと思うのです。

上沼恵美子

 たとえば、上沼さんはテレビ局勤務のご主人との結婚を機に、引退しています。ところが、すぐに芸能界に復帰。復帰にあたって、ご主人からは「東は姫路、西は京都まで」「泊まりの仕事はしない」という条件が出されたといいます。家庭を優先するのなら、復帰してもよいというのがご主人の考えだったのではないでしょうか。

 上沼さんは忠実にこれを守り、2019年に『NHK紅白歌合戦』で司会を務めた後、生放送終了後にハイヤーで40万かけて大阪の自宅まで戻ったそうです。紅白歌合戦の司会をうけるまでの話もなかなか秀逸です。紅白歌合戦と言えば、国民的歌番組。その司会をするということは、上沼さんは名実ともに日本一の司会者というお墨付きをえたようなもの。テレビマンのご主人はそのすごさを誰よりも知っているはずなのに、オファーの話を打ち明けた際、「黒豆どうするの?」と返してきたそうです。ご主人は上沼さんの煮た黒豆が大好きで、上沼さんが紅白で年末に上京してしまうと食べられなくなってしまうからだそう。話術に長けた上沼さんですのでうまくまとめた可能性もいなめませんが、ここに夫と妻のすれちがいが集約している気がします

 上沼さんは最高のオファーを一緒に喜び、主婦のいない家庭がどう年越しをするのか話し合いたかったのだと思います。しかし、夫は黒豆が食べられなくなったらどうしようという自分の話をしている。上沼さんは結婚してお姑さんと同居して苦労し、母となり、仕事に復帰してタレントとしても大成していきます。妻はどんどん変わっていくのに、夫は全く変わろうとしない。変わっていく妻と、変われない夫という関係性の話をしているのであって、夫(男性)をたたいているわけではないと思うのです。

『夫が寝た後に』にホッとしているママさん視聴者

『夫が寝た後に』(テレビ朝日系)も同じことだと思います。共働きの夫婦が子育てをする場合、夫婦が協力しないととてもじゃないけれどやっていけません。

『夫が寝た後に』に出演している藤本美貴

 それなのに、夫が使った皿を元に戻せない(皿がおいてあった位置を忘れてしまう)では、妻の負担ばかり増えてしまいますし、記憶力や想像力の欠如した夫にお子さんをまかせると、危険にさらしてしまう可能性もあります。

 根底にあるのは「夫、父親という関係性なのだから、しっかりしてほしい」という気持ちだと思います。ただ、夫婦間の愚痴というのは「そういう夫を選んだのは、おまえだ」と逆説教してくる人もいるので、取り扱いが難しい部分があります。そこで重くならないように、ポンコツという言葉に言い換えて、明るく番組で扱うことで、「うちだけじゃないんだ」とホッとしているママさん視聴者は多いと思われます。

 それに対し、『※女性は見ないでください』では、「オトコのほうが賢い」発言でもわかるとおり、優位性について論じています。「オトコのほうが優れている」と思っている男性と「どっちが上とかどうでもいいから、ちゃんとやってよ、協力しようよ」と関係性をよくしたいと願う女性。どちらがいいとか悪いという話ではなく、かみ合わなさを改めて見せつけられた気がしたのでした。