5月23日、「ラオスフェスティバル2026」に出席された愛子さま

「愛子さまが天皇になったら、結婚する人もいない」自民党の中曽根弘文氏の口から信じられない発言が飛び出したのは6月28日のこと。

「翌日には“言葉が適切でなかった”と謝罪をしたものの、波紋は広がり続けています」(皇室担当記者、以下同)

皇室典範改正について海外訪問中の陛下にも報告していた

 そんな中「皇族数確保」を巡る議論は進み、6月30日に(1)女性皇族が婚姻後も皇籍に残る案と(2)旧宮家の男系男子を養子に迎える案の2案を盛り込んだ皇室典範改正案が閣議決定された。

全体会議で先送りとしていた皇位継承について、改正案では“養子の子が男性だった場合に継承権を与える”としました。こうした強引な姿勢に野党からは批判が相次いでいます

 立憲民主党の水岡俊一代表は、閣議決定前の29日の会見で怒りを露わにした。

「水岡代表は“これまで何ら議論していないことをだまし討ちのように提示をする政府・与党に怒りを禁じえない”と批判しましたが、与党は姿勢を変える気配はありません」

 天皇陛下は、6月11日の会見で《国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります》と述べられていたが、与党は強硬な姿勢を崩さない。

保守派を集めた前回の有識者会議の結論でも“皇位継承に絡むことを今、考えるのは時期尚早”との結論だったはず。今まで積み上げてきた議論は一体何だったのかと思ってしまいます」(宮内庁関係者)

 疑問が噴出する中、7月2日の定例会見で宮内庁の黒田武一郎長官は「結論は国会の判断」とした上で「何らかの形になると大変ありがたい」「閣議決定に至ったことは非常に重いことだ」との見解を示した。

「議論の漂流だけは避けたかった宮内庁の安堵が見えます。海外訪問中の陛下にも随時報告していた点からも、緊迫感が伝わります」(前出皇室担当記者)

 強行突破のようにも見えるプロセスで進む皇室典範の改正。法案が抱える問題点について、近代皇室の社会史に詳しい成城大学の森暢平教授に聞いた――。

愛子さまや佳子さまは、時代を変えていく存在であってほしい

 今回の皇室典範改正法案は、愛子天皇、それに続く女系天皇を徹底的に排除する改正案にしか見えません。「愛子天皇排除法案」と言ってもいいのではないでしょうか。

 改正案では、愛子さまには、住民基本台帳法が適用されることになっています。結婚した愛子さまは民間人と同じように住民登録をするということです。市区役所などで婚姻を届け出て、住民票が公布される対象となります。国民年金に加入しなければなりませんし、健康保険を利用するにはマイナンバーカードを持つことも想定されます。基本的には、皇居から出てもらい、民間の土地で暮らすことが想定されています。

 愛子さまには、年間3050万円の皇族費が支給されますが、夫や子には何の手当もありません。愛子さまの夫、生まれてきた子を皇族とせず、女系天皇の芽を摘むための施策です。国民と近い場所にいるのはいいかもしれませんが、愛子さまは、皇族としての仕事もしなければなりません。「二流」皇族扱いされるように思えます。女性皇族がいいように使われるような気がしませんか。

 これに対し、旧宮家から養子となった皇族については、妻や子供も皇族扱いです。養子皇族には3050万円、妻には1525万円、子供には305万円の皇族費(年間)が支給されます。愛子さまの家族とは格差がある扱いになります。最大のポイントは、養子皇族には皇位継承権はないものの、子が男子なら継承権が与えられることです。つまり、改正案は、基本的には、男系男子継承維持のために行われると言っていいでしょう。

愛子さまと佳子さまが公務に励まれる様子。一緒の公務の際には楽しそうに会話されることも多い

 問題なのは、女性皇族の住民基本台帳の問題にせよ、養子の子に継承権を与えることにせよ、これまで議論がほとんどなかったこと。過去2年間、衆参両院の全会派による全体会議で議論を続けてきましたが、こうした問題は議題にあがっていません。決定の土壇場になり、政府自民党が改正案に忍び込ませた形です。野党には「だまし討ち」と主張するところもあります。

 男系維持派の人たちは、歴史や伝統は、変えるべきではないと主張しています。しかし、皇室は、時代に合わせて変わってきました。女性の社会進出、多様性容認の時代、社会の先頭に立って皇室が変わることには大きな意味を持ちます。民間の女性が皇室に入り、結婚したら男児誕生の大きなプレッシャーを受けるという旧時代のあり方は、今こそ変える必要があるのではないでしょうか。私たちが愛子さまや佳子さまに期待するのは、時代を変えていく存在であってほしいと考えているためだと思います。

森暢平 成城大学文芸学部教授。元・毎日新聞皇室担当。CNN日本語サイト編集長を経て、現在はジャーナリズム論を専門とし、近代皇室の社会史などを研究。著作には『天皇家の財布』『天皇家の恋愛』など